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玉藻前の過去
あたしは昔から人間を誑かすのが得意だった。
平安時代の天皇さえ虜にして寵姫の座についた。
人間を騙して財物を手に入れる。
だけど、いつもどこか物足りなかった。
虚しかった。
最初の夫である天皇は毎日のように愛していると
言ってくれたけどあたしはふふふと笑って
受け流すだけ。
『人間は道具』それ以上の感情は何も
湧いてこなかった。
毎日がつまらなくて空虚なものだった。
そんな暮らしを繰り返して
日々は変わり、時代が平成へと移り変わったとき
あたしの正体が妖狐だと露見し、捕らえられた。
紐で縛られ、夫から罵倒を受けている中
呑気なことにあたしは空を見上げていた。
あの雲、狐みたいな形をしている、なんて
考えながら。
お宝にしか興味を持てない。
もう、全てがどうでも良かった。
処刑されようが、封印されようが、
このつまらない人生を終わらせてくれるのなら
それだけで良かった。
なのに。
「お館様、恐れながら申し上げます。
玉藻前は私に祓わせてください」
よく通る声でその人は言った。
視線を横に向けると、彼は微笑みを浮かべていた。
何故、妖を目の前にしてそんな風に笑えるのか、
あたしには分からなかった。




