祓い屋としての宿命(橘夜月)
「はぁ〜〜〜」
「ため息なんかついてどうした夜月」
俺の親友である六花が
窓の外に向けていた視線を俺に向ける。
「今日も華恋が可愛すぎて辛い」
「聞いた僕が馬鹿だった」
呆れたように古びた焦茶色のソファに座り込む。
「ほんと夜月は昔から華恋ちゃんが大好きだよねぇ。
確か、中学生の頃から、だっけ?」
「不正解だ。
小学3年生の頃、いじめっ子に置いてけぼりにされ
泣いている華恋を見てから初めて人の涙を
綺麗だと感じた。可愛いとも。
そして、華恋は俺が守らねばと
庇護欲を掻き立てられ……」
「はいはい、そこまでにしてね、
そろそろお館様がいらっしゃるんだから」
ピシャリと言い渡され俺はムッとする。
華恋のことならば夜通し語り明かせるのだが……。
致し方ない。
お館様とは俺の父さんのことで、
祓い屋達を取り纏める橘家当主である。
最近、異常なほど怪異が湧いて出るその原因と
対策について優秀な祓い屋が集められ話し合う
機会が設けられたのだ。
父さんとはこの屋敷でも滅多に
顔を合わせる機会がない。
それほど多忙な方が、今宵お出ましになるのは
急を要する事態だということだ。
障子が開き、
黒の生地に金の刺繍が入った着物と
紫の袴を着た男がいかつい顔をさらに
険しくさせて入ってきた。
髪には黒と白が入り混じっていて皺も目立つ。
「お館様」
皆立ち上がり首を垂れる。
「楽にしろ」
父さんは一言言い放つと、焦茶色の
1人掛けのソファにどしりと座った。
大きめのソファがずらりと並び
古めかしいクラゲのような丸い笠を
被った明かりが俺たちを照らす。
それに倣い
俺が腰掛けると祓い屋達は全員着席した。
「察しのいい者は分かっていると思うが……今宵、
皆に召集をかけたのは他でもない怪異のことだ。
ここ1週間怪異が増加し続けている」




