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父として(橘家当主夜明)
『どうか、この子だけは助けてください!!』
10年以上前、玉藻前とその娘を捕らえたことがある。
彼女は狐の妖で金に目がない。
むしろ財物にしか興味がないと伝え聞いていたのに
致命傷を与えてもなお己の身を顧みず
娘の命を案ずる姿に動揺した。
警戒していたが捕らえた際には何も言わず
されるがままの姿勢に違和感を覚えていたが
これほどまでに人間に絆されていたとは。
妖だというのに珍しい。
だが、犯した罪というものは
いつまでも付き纏うし
たとえ、罪を犯さず
幸せに暮らしていたとしても
妖というだけで殺されることもある。
儂にしては珍しく玉藻前を哀れに思った。
初めて人間としての感情を知り
幸せに暮らしていたというのに、
討伐しなければならない。
玉藻前の娘は涙を流しながらこちらを見ていた。
確か、華恋と言った。
娘を残して死ぬのはさぞ無念だろう。
華恋の父も先ほど自害したというのに。
だが、祓い屋として祓わなければならない。
橘家当主としても、皆の見本とならねば
示しがつかない。
儂は玉藻前の胸に刀を突き刺した。
母が死に、泣き喚くあの子だけは
守ってやりたい。
そう思っていたのに、
現実は非情なものだ。
華恋を始末しなければこの世界は救われないなどと。




