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愛を貫く



「逃げる? どこに?」


「妖界ならば怪異はやってこないだろう。

妖は怪異よりも力がある。

図らずともお前の身を守ってくれるはずだ。」


その時、おじさんが深くため息を

ついた音が聞こえた。


「夜月……やはりお前はその子を選ぶのか……」


刀を鞘に収めながら、やれやれというように

首を横に振る。


「すまない、父さん。

でも、俺は心から華恋を愛しているんだ。

だから、許してくれないか」


愛してる?

夜月が、わたしを?

ち、ちょっと待って!

理解が追いつかないよ!!


顔が熱くなっているのが自分でも分かる。


「妖界へ逃げおおせたとしても、

華恋が半妖であり、お前が人間であることが

バレたら今まで以上に身の危険が迫る。

それでもいいのか?」


「ああ」


おじさんは何かを確認するように

夜月を見つめる。

そんなおじさんを夜月も静かに見つめた。


それはまるで、親子の最後の会話のようだった。


「それならば、儂はもう何も言わん。

夜月、お前を橘の家から勘当する」


おじさん……。

きっとこれは夜月を橘の家のしがらみから

解き放ち自由にさせてくれる、そういった

意味も含まれた言葉だ。


父親としての最後の愛情。

それが感じ取れて涙が溢れそうになった。


最初はおじさんのことがすごく憎かった。

わたしの大切な家族を2人も奪った敵。

親切にしてくれたおじさんを何度もつっぱねて、

避けて、いつも恨んでた。


だけど、どうしてお父さんとお母さんを

殺したのかと、泣きながらおじさんを

睨みつけた時、彼は瞳を揺らがせて

苦悶に満ちた表情を浮かべた。


そんなおじさんを見たのははじめてで

どうしたらいいか分からなかった。

だけど、その日からわたしの心から段々と

憎しみが消えていった。


成長するにつれ、おじさんの苦悩を

夜月づてに耳にするようになってからは尚更。


許したい、って思うようになっていったんだ。


夜月の唇は嬉しそうに弧を描き

目を優しく細める。


「ありがとう、父さん」


「きゃっ……!!」


夜月に抱き上げられ、窓から飛び降りる。


「どうか、元気でな」


そんなおじさんの思いを耳にすることはなく

夜の街にわたしの叫び声が響いた。


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