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玉藻前の過去
初めて興味を持てるものに出会えた。
優に興味を持ってから、世界がガラリと変わった。
彼に文字を習って手紙を書いたり、めーるという
連絡手段を使うようになった。
興味が無かった服屋にも連れて行かれて、
綺麗な服を買ってもらった。
髪もボサボサだと苦笑いされてからは
毎日櫛で髪を梳かすようになっていた。
何故なのか、自分でもよく分からない。
ただ、彼が涙を流して玄関に崩れ落ちた時、
いつも笑っていたのに、と衝撃を受けた。
体が自然に優を抱きしめていた。
彼の親友が病で命を落とした、と優は言った。
「もう、大切なものを失いたくない」
そう呟く彼を見て頭に稲妻が
落ちたかのような閃きがあった。
そうか、彼は大切なものを守るために
笑顔を絶やさずにいるんだ。
そう知ると、胸が締め付けられるような
温かい感情が心を満たした。
愛しい。
芽生えた感情を抱きしめるように
彼を抱きしめる腕に力を込めた。
「大丈夫よ。あたしがずっとそばに居てあげる。」




