25 それぞれの『エンド──これから』
真犯人が分かってからというもの捜査は順調に進み解決に向かった。
それに伴いそれぞれの身の振り方も決まり、事件の為に学園に詰めていた騎士も引き上げ、無事明日の卒業式を迎えられそうである。
ブラウン男爵令嬢は何か罪を犯したわけではないが、前世の記憶のせいで政略結婚を受け入れられないらしく──あれだけ事件の渦中にいたことで、そもそもそう言う話が来ないのだが──卒業後はシャルロットを後ろ楯に前世の知識を利用して商会を立ち上げるという話になっているらしい。
王太子殿下との婚約の継続でシャルロットの「商会を立ち上げて異世界中を旅する夢」は叶わなかったが、同郷と言うことが分かってすっかりシャルロットに懐いたアイラがその夢を引き継ぐことになったのである。
特に貴族の令嬢の服飾事情について改善する気満々なのだとか。
暑さに耐えられなくて泉に足をつけていましたものね。
涼しいドレスが出来ることは大歓迎ですわとシャルロットも私も大喜びである。
とりあえずアイラはその時に向けて、真面目に勉学に励んでいるらしい。
因みに彼女からは正式に謝罪があり、私はそれを受け入れている。
シャルロットは何があったのかは分からないけれど「どうしても合わない」と言っていた王太子殿下との問題が無事解決されたらしく、幸せそうである。
いつの間にか呼び方も変わっているようだし、次期国王夫妻の仲が良さそうで安心した。
そして、王太子殿下がどこからか「シャルロットが(異)世界旅行の夢を諦めたらしい」と聞きつけたらしく、友好国を巡り視察旅行をしようと提案してくれたのだと嬉しそうに話してくれた。
そんな彼女を溺愛するその王太子殿下は来年、シャルロットの卒業後に執り行われる予定である成婚の儀と新婚旅──いえ視察旅行に向けて、目下仕事の調整中だとか。
まぁ諸々計画を立てて・・・色々、そう色々やっているのだそう。
オリビア様は本来なら貴族籍を抜かれて修道院行きになるところであったが、遠く離れたある国との友好条約締結のため、王家の血を引く令嬢として嫁ぐことが決まった。
前々からオリビア様を気に入っていたその国の王太子から第三側妃として迎えたいと打診があっていたそうで、あっという間に国を出発してしまった。
元々王族の婚約者になったからと言って『お姫様』になれるわけではない。それはただ、王族の婚約者なだけだもの。
しかもフリュイ殿下と結婚してもなれるのは公爵婦人であって、お姫様ではない。
籍には入っていないので厳密に言えば違うけど『王家の血を引く令嬢』として嫁ぐ以上、本人の望み通りお姫様になれたようなもの、と言うことで良かったのかな?と思う。
婚約者≒お姫様・・・そこを突き詰めると私──にはあまり被害はなかったけれど、ブラウン男爵令嬢は何故あのような目に合わなければならなかったのかという話になってしまうので、考えるのを止めた。
そうそう──なお、件の友好条約締結は王太子主体で行われたこと、その遠く離れたある国が観光地を多数有する国であること、その国が王太子夫妻の視察旅行の候補地となっていることをここに明記しておく。
そして一人娘であるオリビア様を失い、その娘が男爵令嬢の命を奪いかねない事件を起こし、第二王子殿下の婚約者に冤罪をかけようとしたことが貴族間に広まってしまったプチフール公爵家の存続については色々議論された。
結局王妃殿下の実家である為降爵するわけにも取り潰しにするわけにもいかず、甥であるフリュイ殿下がその名を変えて公爵家を継ぐことが決まったのである。
これで私の計画通り、次期侯爵である私と次期公爵であるフリュイ殿下との婚約は円満解消になる──