18 オリビア・プチフール公爵令嬢の計画
オリビア・プチフール公爵令嬢は小さい頃から王子様と結婚して絵本の中のお姫様になりたかった。
ある日王宮で二人の王子様の婚約者を探すお茶会が開かれると聞いた。
オリビアも参加は出来るが、公爵家の一人娘であり伯母が王妃である為血が濃すぎると婚約者候補からは外されていると父親から言われた。
それを聞いてお姫様になれないことに絶望したオリビアに、公爵は「王子様がオリビアを好きになれば認められることもあるかもしれないね」と言って慰めた。
それならば好きになってもらえばいい。オリビアはそう思ってお茶会に臨み、初めて会った従兄達に目を奪われた。
金髪碧眼──物語の王子様が本から飛び出てそこにいたのだ。
しかしフォンダンは初めからシャルロット公爵令嬢にベッタリだった。仕方がない。同じ公爵家の娘だ。
シャルロットがフォンダンなら、私はフリュイにするわと決め、彼の横の席に座った。アピールもバッチリだ。
お茶会の終盤、他の令嬢に挨拶だけでもと席を立ったフリュイについて行こうとしたところ『このテーブルは任せた』と言われた。フリュイと離れてしまったのは残念だけれど、自分を未来の妃として信頼して任せてくれたに違いない。ここは王子妃としてふさわしいところを見せなければと甘受した。
(どっちが王様になるかはわからないけれど、王子様の婚約者だもの。それはお姫様よね)
そう思い、自分がお姫様に選ばれることを夢見て過ごした数ヶ月後、次期侯爵のショコラがフリュイの婚約者に選ばれたと聞かされた。
なぜ?私は公爵の一人娘──次期公爵よ。
そこでオリビアはショコラを社交界から排除しようと考えた。
ショコラが社交界から消えてくれたらその後、私が従妹として王子様をお慰めするわ。王子様は優しい私に恋をするの。そして私は婚約者になるのよ。
しかし神童とまで呼ばれたショコラにはつけ入る隙がなく、計画は全く進展しなかった。
学園では交遊関係も広がり何かしらあるかもしれない。ショコラが入学してきてからもずっと、オリビアはショコラを追い落とす機会をうかがっていた。
三年生になるとフリュイ殿下の周囲をアイラ・ブラウン男爵令嬢という羽虫が飛び始めた。
そして唯でさえそれを不快に思っていたというのに、「サントノーレ侯爵令嬢がブラウン男爵令嬢をずぶ濡れにし、ブラウン男爵令嬢を心配した第二王子殿下が血相を変えて医務室に駆け込んだ」という許し難い噂を耳にしたのだ。
ショコラが男爵令嬢に危害を加えたというのはどうでも良いわ。でも、フリュイ殿下が私を差し置いて男爵令嬢とですって!?許せない。
しかもその男爵令嬢は殿下のことをフリュイ様と親しげに呼んでいるそうじゃないの!
オリビアは自身の計画のついでにアイラに制裁を加えることに決めた。
警告のつもりでドレスを引き裂いた時はシャルロットが居合わせたせいもあり大事になってしまい、何故かその後男爵令嬢はすっかり大人しくなってしまった。
今更しおらしくしても駄目よ。
まだ私の役に立って貰うわ。
そしてオリビアはショコラとアイラの二人にまとめて制裁を加えることが出来る、とっておきの計画を思いついた。
早速オリビアは手紙でショコラを呼び出し、計画通り人混みに紛れてアイラを階段から突き落としたのだ。
しかしアイラがショコラの名前を出さずに自分で足を滑らせたと証言してしまった上に、ショコラのやってくるタイミングが合わなかったため、期待していた様なことにはならなかったのだ。
卒業してしまったらショコラを追い落とす機会が無くなってしまう。
オリビアは学年末パーティーでショコラを糾弾すると決めた。