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16 兄弟はわかり合えない

グランが所用で王宮のフリュイ殿下の執務室にいるとき、シャルロットとの逢瀬を終えたらしい王太子殿下が憮然とした表情でやってきた。

グランの在室を確認すると、丁度良いと言って他の者を人払いした。


「フリュイ。君、サントノーレ侯爵令嬢に気持ちを伝えることはおろか学園で会ってもいないそうだね?どういうこと?」


「・・・」


フリュイ殿下にそう尋ねるが答えが返ってこないため、王太子殿下はチラリとグランを見やった。

グランがそれを受けて「そうなのです、王太子殿下」と言わんばかりに頷いているのを確認すると彼は盛大にため息をついた。


先日起こったドレス事件でのフリュイ殿下の様子と王太子殿下の発言、そして読書室での姉の様子から不思議に思ったダックワーズ公爵令嬢がおかしいと思い、王太子殿下に相談を持ちかけたらしい。

読書室で婚約破棄についてもよく話している様子だったから、その時になにか感じるところでもあったのかもしれない。


これでフリュイ殿下と姉に何か進展があれば良いのだがと、グランは期待した。






兄上は婚約者に相談してもらえるのだ──正直羨ましく感じた。


ショコラがまだ王子妃教育のために王宮に通っていた頃はよくお茶会で顔を合わせており、婚約者になれたことが嬉しくて積極的に言葉もかけていた。

しかし年を重ねるごとに気付いてしまったのだ。

出会った頃から大人びていたショコラに、はっきり言って俺は相手されてない。

ショコラは婚約者と会話をしているのではない。子供()の話を聞いて微笑ましげに相づちを打っているだけなのだ。

男としても全く認められていない。一応年上なのだけれど弟と思われている様な気さえする。

──グラン()と同列なのだ。


ショックだった。


そして悩み、考えた。


そんな時、グランから彼女の情報(計画)を聞かされた。その時のグランは幼く、深くは考えていなかっただろうが、俺の心には深く、深く突き刺さった。

俺がショコラ以外の──ピンク頭の子爵令嬢を愛し、ショコラとの婚約を破棄するだと?

俺をそんな不誠実な人間だと思っているのか?馬鹿にするな!そう思う反面、ショコラに全く信用されていないことにショックを受けた。


悩んだ俺はショコラの全てを知ることで、彼女より上手(うわて)であろうとした。彼女より先回りし、彼女を守り、信頼を勝ち取り、最終的に彼女の計画を潰そうとしたのだ。

彼女の周囲に配置した手駒もその一環。


全ては彼女を()()()()()()手に入れるために──。






「気持ちは伝えていないのか?愛される努力は?」


フォンダンが心底分からないという表情でフリュイに問う。


「は?」


「いや。お前が彼女を欲してはいるのは分かるが、交流して仲を深めたり気持ちを伝えたりを何故しないんだ」


「兄上、今はそう言う局面ではないのですよ」


「は?」


今度はフォンダンが何を言っているんだという目でフリュイを見た。


(あ~、この二人タイプが全然違うもんな。言動が理解できないんだな。しかもフリュイ殿下は思っている以上に拗らせているからなぁ~)


金髪碧眼で王子様──外見は似ている二人ではあるが、タイプが全く違った。

いや、二人とも独占欲は人一倍、似たもの兄弟か?血筋?


あの短い物語のことを姉上に聞いたとき、《《あり得ない》》と思ったけれど、案外二人ともヒロインに惹かれていたのであれば、あり得る話だったかもと思えてくる。


フォンダンは人目を気にせず愛を囁きターゲットをとことん甘やかし、彼女がよそ見をする余裕も無くなるように、自分を好きになってくれるように努力する。そして彼女が自分を見ている間に他の男にこれは自分の最愛(もの)だと言うことを分からせ、明るい笑顔で牽制するタイプ。


フリュイ殿下は一見ターゲットに自由を与えているようにみえるがそうではなく、何も言わずとも自分を見てほしいタイプだ。よそ見をされると策を練って自分を見るように仕向ける。相手の全てを知り尽くして手の内に閉じ込めておきたい人だもんな。

フリュイ殿下は万が一誰かが姉に近付こうものなら姉が気付く前に黒い笑みで裏から手を回し、金輪際手を出せないようにするのだろう。

姉上が思いの外大人で思うようにいかずに拗らせてしまっているけど、弱みを見せたら一気に行かれるぞ。


こうやって見ると、フォンダン殿下ってちょっと危ないヤツみたいだな。姉上、大丈夫かな。


グランは遠い目をした。

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