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 少年の赤い瞳に映るモノ。


 その異様に、恐れの感情が溢れ爆発しそうだった。


 チビリそうだ! というか、チビっているかも!


 脂汗が止まらない。

 冷や汗が止まらない。


 どちらも本当のことだ。


 真っ暗だ。

 そして、なんて巨大デカさだ。


 真っ暗な霧の中で、少年は『獣』と対峙する。

 何かの比喩表現ではない。


 そこは『黒い霧』で満たされた空間であった。

 これも何かの比喩表現ではない。


 どちらも本当のことだ。


 目の前には、人より巨大な『狼』が牙を向いて威嚇している。


 視界の悪い、黒い霧の中。


 相対するのは白い髪の少年と、白い髪の少女。


 どこか似た顔立ちの少年と少女。


 歳は幼子と言って良い少年。

 歳は十歳程度の少女。


 視界の効かない黒の中で、二人の赤い瞳は爛々と輝き、目の前の大狼を捉える。


 少年は二本の短剣を構え、少女は巨大な鎌を肩に担いでいる。

 だが大狼はそんな二人の武装にも、一顧だにしない強大さがあった。


「どうすんだよ!?」

 怒鳴る少年の声は、隣に立つ少女にも確かに聞こえていた。


「ワシに言ってどーすんじゃい!」

 返ってきたのは怒鳴り返す少女の声。


「策を考えるのは兄者の役目じゃろう!」

 明らかに年上のはずの少女は少年を兄と呼んだ。


 兄と呼ばれた少年は言い返せずに唸り声を上げる。その額には気温に寄らない汗が玉のように浮かんでいた。


 何の解決策も示せない兄に、少女は再び怒鳴る。


「何とかせい! 灰魔術師カオスマスターじゃろうが!!」


 灰魔術師カオスマスター

 正式名称を積道師シーツリヒターと呼ぶが、世間一般では黒魔術師達が名付けた灰魔術師カオスマスターという名称で知られている。


 操る魔術は灰魔術カオスマジック

 魔粒子と呼ばれる『呪われた魔力』『意味(忌み)付けされた魔力』を操る術者達。


 対峙する大狼はその名に反応したのだろうか。

 上げていた唸り声が一瞬止んだ。そしてその巨躯が一瞬沈み込む。


 アッと、少年少女の五感がその変化を感じ取った次の瞬間、大狼は少年に向かって飛びかかってきた。


 呆然と立ち尽くすしか術はなかったのか。


 しょせん少年は卑凡なる平凡。存在不敗の影に過ぎない推定無在。

 飛びかかる大狼の巨躯に対して、少年の小さな体は明らかに無力であった。


 少年の赤い瞳。

 少し垂れ目の人懐っこさを感じさせる瞳。本人はそれに反する気質なのだが、今は無関係で無力な要因。


 瞳はまるで紅玉ピジョンブラッドのように、美しい赤。


 その宝石のような赤い瞳一杯に、迫りくる大狼の牙と爪が映っていた。


 はっきりと、映っていた。






こちらトレーラー代わりになります。全体完成後差し替えるかも。

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