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第24話「引き金」

 コード国1番の都ゴーマ。墳塔牢襲撃事件当日の夜。

 飯処“節介”は今日も、盛況している。


ガラガラガラガラ。


「いらっしゃ…また、お前か。帰ってくれ」

「こないだのことは水に流そうぜ、落ち武者さんよ」


 悪びれず、無愛想なヤジロウだったが、今日の目的は女を口説くことでは無い。


「この前の赤髪の奴いただろ。あいつのことを教えろ」


 唐突な質問だったが、到底恩人の利益になるとは思えず、スケは口を一文字に閉じた。

 すると、ヤジロウは「そう、警戒するな」と軽い微笑を浮かべた。


「俺の私闘を、我らが五天武が問題視してな。あいつに施しをしてやれって、うるさいのよ。だから、頼むわ」

「…彼らは、ノマード国から来たと言っていたよ」


 饒舌過ぎる嘘に、スケは何の疑いも無く、情報を漏らしてしまった。



 武人所に帰ったヤジロウは、即座に従者たちを呼び寄せ、馬と荷支度を用意させた。


「どこへお向かいに」

「コード国。コンって言ったか、あいつらがいるらしい」

「何故、このような火急の時に?」

「うーん。…あいつの顔がチラつくんだよな」

「奴が犯人と?」

「あいつの出現と今回の事件、タイミングが良すぎる。もし、あいつが犯人だとしたら、ノマードでお縄にしちまえばいい。それか、あの盲目の子どもを探し出して、囮にする」


 闇夜の中、彼らはゴーマを出発していった。


---


 ノマードへと向かう道中、ヤジロウは急な煙幕に襲われる。

 徐々に靄が晴れ、視界が戻っていくと、森の中に1人の少女が横たわっているのを見つけた。


「この赤髪、穴の空いた頭。この子が要人で間違いないんだろうね」

「これは大手柄ですね!すぐにコードへ戻りましょう」

「あぁ、お前はすぐ戻れ」

「え?」

「俺はこのままノマードへ向かう。手柄はもっとでかくなきゃなぁ」


 馬を走らせ、翌日ノマードへ到着した。

 国民たちは見慣れない俺の姿に困惑している様子だった。

 だが、それはこちらも同じこと。どこで、何を探せばいいのやらといった感じではある。


「あぁ、御国の武人様ですね。どうされましたか」


 知恵のある中年の男が話かけてきたので、事情を説明すると、国会棟と呼ばれる館へと案内された。


「トウリ=ヤジロウ殿ですね。私、ノマード国国長のロイ=ロワと申します」

「ご丁寧に、どうも」

「どういった、ご用件で?」

「いえ、単なる人探しですよ。コンという男をご存じで?」

「はて…どなたか存じ上げませんね」


 嘘を言っているような顔では無いな。


「では、盲目の少年はいますか」

「…はて、存じませんな」

「…そうですか、お時間取らせて申し訳ない」

「いえ、とんでもない。因みに、何用で?」

「我が国の要人が奪われそうになりまして。まぁ、私もよくわかりませんが」

「そうですか」


 帰りの食料まで頂いた俺は、ゆっくりと馬を走らせる。


 あれは、何かは隠しているな。

 だが、盲目の少年の方だ。本命は多分、空振り。あてが外れたか。

 だとしたら、コンは西国の兵士。

 確かに、コードの人間にわざわざ自分の出自をバラす真似は、しないよな。



 再び、国会棟。会議室にて、国長は白髭に指を絡ませている。

 その部屋に入ってきたのは、少し汗ばみ、息の荒いレーヌ婦人。


「シアンス職長の家は蛻の空でした」

「おい、ちょっと待て。彼もいないのか!?」

「ええ。まぁ、この前と同様、職長に同行したんではありませんか?」

「…そうであることを願おう。そうでなければ、話は随分と変わってくる」



 この数日後にフィリー、数日後にはコンが帰宅する。

 しかし、未だ衝撃が尾を引く墳塔牢襲撃事件。

 トウリ=ヤジロウの攫われた要人奪還の大手柄により、実害は最小限に留まったものの、それは各々の意志、思惑に導火する。

 コード国の(なにがし)、だけでなく、ノマード国、他国の重鎮に深く影響を与える。

 その引き金を引いた者たちは、緩りとした生活を送る。


ドンドンドン。


 コンが帰宅してから、それまた数日後のことだった。

 誰かが戸を叩く音に誘われ、フィリーは期待感を持ち、出迎えを行う。


 すると、1人の少女が立っていた。


 初めて知覚する体温で、フィリーは戸惑っていると、「お邪魔しまーす」と声高らかに、彼女は家に入っていった。

 呆気にとられていたフィリーに、後から来たもう1人が「ごめんな」と声をかける。


「…シアンスさん!」

「おう。ただいま。コンは、いるか?」


 家に戻ってきたシアンスは開口一番、コンの居所を尋ねてきた。

 謎の少女の説明も無しに、シアンスは客間へと一直線に向かっていく。


「…おお、シアンス」

「おお、じゃねぇよ、くそ馬鹿!!お前、斬りすぎなんだよ!!死ぬとこだっただろ!!」

「…良かった。やっぱり生きていたな、シアンス」

「うるせぇ。そんなことより、お前に聞きたいことがある」


 ポケッとしていたコンの頭に指を差し、シアンスは続ける。


「お前のO-gun、どこにやった」


 コンの頭には5つのO-gunが光り、未だ1つ空きっぱなしの穴が映る。

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