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第11話「作戦会議」

 翌日の明朝、途中で作業を止めていた遺品整理を再開した。

 吟味する時間も渋り、かなりのハイペースで断捨離していったので、必要な物も捨ててしまった気がする。

 2時間ほどで片付けを終わらせ、昨日の万年巨木の件で採取しておいた木の枝を(はなむけ)に、このツリーハウスも供養した。


 行きで使用した飛行艇はダメにしてしまったから、徒歩2時間の道のりを歩くはめになった。

 持ち帰る荷物が多くあったが、予期せぬ3人目がいたので、1回で全て持ち出すことができた。


 にしても、コンの奴は、正体が掴めないヒトだ。

 昨夜の出身地問題は、それに拍車をかけた。何だ、アメリカ大陸って。

 しかも、自分自身も何だかわかっていないし、自分でも学は無いとふんぞり返る始末。こいつ本当に馬鹿なのかと、呆れた気持ちになる。



 13時頃、我が家に到着した。

 荷物の多さと溜まっていた疲労感で、本来よりも時間がかかってしまって、極限状態の空腹だった。

 フィリーに簡単な料理を作ってもらい、俺たちは腹を満たした。

 今すぐに奪還作戦について、話をしたいところだが、本職も疎かにすることはできない。1度ラボで研究を進め、今晩改めて会議をすることになった。



 ラボ大広間にズラリと並んだ飛行艇を見ると、昨日の失態で心が荒む。意味も無く、俺はシーツをかけ、視界に入れないようにした。

 先行投資研究である飛行艇は中断し、家屋の修繕と改築指導に赴くことにした。


 家屋関連も他のラボ員が行っていた研究の1つ。だが、俺たちが実際に家を建てるわけでは無い。現場監督として俺たちは指揮を執り、力仕事は集落の住民が行う。

 工事の場を周り、今後の予定について取り仕切る。それを何軒か繰り返し、残すは1軒。ラボの次に巨大な施設、国会棟。



 指示を飛ばす俺の前に、白髭を蓄えた筋肉質の男が寄ってくる。

 現場の者たちに愛想のある笑みを振りまき、俺にも激励の言葉をかけた。

「ちょっといいかな」と国会棟内に呼び出されると、先程の薄ら笑いのまま、話を持ちかけた。


「どうだね、シアンス職長。彼の方の進捗は?」

「えぇ、すこぶる好調ですよ」

「そうかそうか。先日、血相変えた彼が、私のもとを尋ねてきてね。心配していたんだよ。ほら、ここから離れさせるわけにはいかないだろう?」


 わかりやすい圧のかけ方だ。


「その節は申し訳ないです。ちゃんと、手元に置いておきますので…それで、少しご相談したいことがありまして…」



 仕事を終え、我が家目前で、疲労感が蓄積した体に、グツグツと煮られたトマトソースの香りが入り込んできた。

 その匂いに誘われ、リビングへ一目散に向かうと、夕飯の支度をしているフィリーとコンの姿があった。

 相変わらず、仲が良いな。


「あっ、おかえりなさい!」

「おかえり、シアンス。…あっ、そうだ、聞いてくれ。今日の飯は、じゃじゃん!俺が取ったお米だぜ~」

「…おい、フィリー。あんまりこいつを連れ出すなよ。あと、馴れ馴れしい」


 俺の苦言に全く耳を貸さないコンは、話を続ける。


「あんなでかい米畑があるとはなぁ。俺米畑初めて見たから、テンションあがったよ」

「あれは田んぼって言うんだよ、馬鹿。」


 ノマード集落から、目と鼻の先にある大田園地帯。

 ラボともう1つ、ノマードを国として発展させるきっかけになったもの。

 西国からの科学者、エラー博士によってもたらされた稲作。そこから得られる米の定食は、移動民族にとっては革命的一打だった。


「今日はそのお米とトマトソースを絡ませてみました。チーズが余っていたんで、それもふんだんに入れてみました」


 いつもはノマードの伝統料理を多く振る舞うフィリーも、何かに当てられたのか、創作料理を出してきた。ありえないくらい、美味しかった。


 食事を終え、一息ついたところで、コンが作戦会議について切り出した。


「どんなアイデアを考えたの?」

「…わかっていたけど、俺頼みか」

「もちろん、その契約だからね」


 まぁ、いい。端からそのつもりだ。


「まず、整理しよう。俺らの目的は、マシェリとコンを会わせる。及び、彼女の奪還。だが、そのための最初の難関は彼女の居場所を突き止めるという部分」

「コード国にいるんじゃないのか?」

「コード国はとても広いんです。ちゃんとした定義があるわけでは無いですが、マグヌス大陸の半分近くが領土だと思っていいです」


 幼いフィリーの説明に、ほぉほぉと納得する大人。本当に学が無い。


虱潰(しらみつぶ)しに探すのは、自殺行為だ。だから、情報を得る必要がある」

「どうするんだ?」

「俺が単身コード国に乗り込み、彼女についての情報を聞き出してくる。国長にも頼みを入れておいた。目論見が正しければ、必ず話は通る」


 ポカンとしているコンを他所に、フィリーは心配そうにしている。


「1人で行かれるんですか」

「あぁ、O-gunの研究を一任されたラボ員の俺が行くことに意味がある」

「どういうことだ?」

「俺は研究するためのパーツを受け取っているに過ぎない。これは本体…」


「いやいや、そうじゃなくて」と話を遮ったコンは、訳のわからない相槌(あいづち)を打つ。


「1人で行く理由になってないだろ、なぁ?」


 振られたフィリーは、思い切りよく首を縦に振る。


「俺とフィリーも連れて行け」

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