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希焔晩焼  作者: ぽよ丸
12/12

オヤコアイ

「あ、ああ、ああああああああああああっ!」

星の骸の元へ走った燎は星の首を抱き締めて叫ぶ。

もはやそれは理性ある人とは思えない。そんな咆哮。

「おやおや、やってしまったか…。まぁいい。所詮は邪魔な我々を知る者。手間が省けたとしておこう。おい、モク。メラを捕らえろ。帰るぞ。」

「………」

泣き叫ぶメラを無視して捕らえんとモクが木のツルを伸ばすその時だった。

「これ以上…」

メラの叫びが止み髪が真っ白に、輝く。

「星を愚弄するなぁっ!」

叫びとともに巻き付かんとしていたツルが燃え上がり力無く燃え尽きる。燎の足元のコンクリートは溶け出す。星の顔も体も燃え始めた。

「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

気付けば燃える星の体は全て燎の周りに集まっていた。

「まずいっ!モクッ!」

「……!」

父瀞の命令でモクが動くがその全てが燎の回りを巡る熱気に阻まれ消滅する。

「二度と俺の前に現れるなぁぁぁぁぁぁぁっ!」

燎の叫びとともに燎の体がぶくぶくと膨れ上がる。

もはや肉の塊となった身体から紅い煙が上がる。

それはどんどんと膨張しもはや生き物かすらわからない。

「こ、こんなチカラ…。つけた覚えはない…」

父瀞が戦慄することを気にもとめず燎の体だったものは膨らみ続ける。触手のようなものがでてきて攻撃を始めた。

「………ッ!?」

防ごうとも凄まじい熱量を帯びた燎のそれに叶うはずもなく、たった一本の触手の一撃でモクは弾け飛んだ。吹き飛ばされた先で壁に衝突。その末路はただの人間と同じだった。

「………役立たずが…っ!」

モクが死ぬのを尻目に父瀞はその場から逃げ出した。掴もうと迫るも燎の触手は自らの膨張する体によって壊れた天井の瓦礫に阻まれ届かなかった。

そうして悪運の強い男は生き残った。

>>>>>>>>><<<<<<<

『現在突如現れた巨大な肉の塊の現場に来ています。深夜0字過ぎに突如現れたこの肉塊は朝6時まで膨張を続け今では半径数百メートルにも及びます。自衛隊から討伐隊がでていましたが何人かは殉職。しかし、民間人は無傷で肉塊の中から排出されています。政府は謎のこの肉塊に関してこちらも分かっていることはないとしており、専門家の中では自然界の生物ではないとする声もあります。続きまして…』

ここでテレビの音が消える。いや、消えたと錯覚させるほどの圧が蒼太から発せられた。

「おい、これって。燎だろ」

昨日から娘と息子が帰ってこない事、長男からの焦りながらの大変なことになったとの連絡。ここに来て昨日から現れた正体不明の肉塊。

これらの情報が導きだす答えは、愛する子供達に何かあったということである。

「........行きましょうか。連れ戻しに。」

侑菜の一声と共に夫婦は動き出す。

>>>>>>>>><<<<<<<

「あのバカ、何してやがる。」

鋭斗は自分の部屋で一人言葉を落とす。スマホの画面には変わり果てた燎の姿。

「まあ、流石の燎も回りを全て対人造人間用の武器を持った敵に包囲されちゃ、人間一人担ぎながら逃げるなんて無理な話しか。」

勿論初め見た時は自分も援護に行こうかと鋭斗も思った。しかし、

「アイツが生きている以上星が死ぬわけないし。大丈夫だろ」

鋭斗は己の今だ消えぬ劣等感と、味わった力量差から生まれた計算ミスに気付かない。

燎のトラウマに弱い所という不穏分子を、見逃して。

>>>>>>>>><<<<<<<

深夜、監視の数人を残し自衛隊の者達は離れた場所で仮眠をとっている。

そして、夜の暗闇に潜む大人二人。

静かに肉塊へと近づくと肉塊の触手が道を空ける。肉が開き穴が空く。二人を受け入れるように。

ブニブニとした肉の床を進む。二人の前進と同時に開けていく肉の裂け目。

数秒の歩みの果てに小さな窪みにたどりついた。

そこには燎が座っていた。目は虚ろに赤く、髪は伸び胸には白い玉を両腕で抱き締めていた。

その姿を見て侑菜は崩れ落ち涙を流す。

蒼太の拳からはギチギチと音がなり赤い血が滴る。

ゆっくりと蒼太が燎に近づく。燎の、ぼやけた視界の中で蒼太の手が近づいてくる。

殴られることを覚悟していた燎は目を丸くする。

そのかくばった力強い手のひらは燎の頭に乗せられていた。

「お前が悪いんじゃない。よく頑張った。」

本人の手で顔は見えないがその声は震えている。崩れ落ちていた侑菜もいつの間にやら近づいてきていて燎を抱き締める。

その姿を見て燎は瞳孔を開き声を落とす。

「なんで?なんで責めないの......?」

その声を聞いて侑菜が

「あなたが殺した訳じゃないし、あの娘も、私達もーー」

言葉を間違える

「あなたが大好きだからよ」

更に瞳孔が開く。そして燎は二人を突き飛ばした。

「なんで.......なんでなんでなんでぇ!」

戸惑う二人が視界に居ても、もう溢れる叫びは止まらない。燎にとってはじめての感情の暴走。

「いつもいつも!みんなみんなみんなみんな!僕を肯定する!お前はわるくないって!君はわるくないって!」

生まれてこの方ずっと抑えてきた言葉は望んでもいないのにたくさんの人を傷つける。そしてその言葉は自分自身も傷つける。

「ごめんなさい....私が弱いばっかりに、あなたたちにこんな思いをさせて。」

涙ながらに落ちた言葉により燎の罪悪感が限界に達した。

「母さん、父さん。悪いけどもう出て行ってくれ!」

「まて!まだ話は!」

その言葉とともに燎の目の前が肉によって覆われ問答無用で夫婦を押し出す。

出てきた穴も完全にふさがってしまい、もはや中の燎とコンタクトを得る手段はこれにて完全に途絶えた。一手を除いて。

>>>>>>>>><<<<<<<<

「ごめんなさい、私があの子に寄り添ってあげられなかったから。母親として未熟すぎたから、あの子の神経を逆なでしてしまった。本当にごめんなさい」

涙は押し出されたときにあっけにとられて、あるいはおのが未熟さを痛感して、止まり涙の後だけが残っていた。

「俺のほうこそだ、あいつの生い立ちを知っていながらかける言葉を間違えた。もっと寄り添うべきだった。考えてやるべきだった。俺の責任だ」

二人して苦い思いをこらえ帰路に就いた。いつもなら人でごった返している商店街も燎の一件でみな避難していて人っ子一人いない異様な空気が漂っている。

「..........」

「.......?どうしたの?」

急に蒼太が立ち止まる。その目は商店街の通りの影を睨んでいた。

その刹那犬のような、人のような何かが飛び出してきた。爪を大きく広げ蒼太の喉目掛け一直線にツ目を走らせている。もちろんやられる蒼太ではない、顔は驚きと困惑に満ちていたものの爪を流し返しの右膝で一撃でノックアウトする。

「なんだ?コイツ」

彼は医者であると同時に武闘家でもある。生物の体の筋肉の動きを把握し体の流れを見ることができる。だがこの生き物の体の流れは見えなかった。故に興味を持ってしまった。燎と同じからっだを持つものに。その興味が命取りとなる。

「そ、蒼太ぁ…」

弱弱しくおびえた声が響く

「どうし....た..........」

目の前には数十人のこちらに銃を向けた男と白衣を着た男が音もなく立っていた。

「あなた方がメラの育ての親でしょうか?」

白衣の男は右手をあげたままこちらを見る。人が良さそうな笑顔をしているがその目は笑っていない。

「あんたか?俺の娘と息子に手を出したのは」

向けられた銃口にも臆さず強気に返す。

「この状況でその態度なのは恐れ入る。やはり君なようだね、僕の子供をいじくったのは。」

人の良さそうな笑みを手放しニヤついた顔を浮かべる。

「こっちは息子への無力感で向けがたい怒りがあるんだよ。たかだかチャカ数発じゃと収まらねぇんだわ」

話しながら蒼太は侑菜を背負う。抱っこ紐で固定し侑菜がしがみつく。

「なんの真似ですか?随分動きにくそうですね。それでどうやって逃げ回るおつもりで?」

バカにした笑顔とともに左右に目線を送る。

「かかってこいや。喧嘩上等」

家族を愚弄されたこと、娘を殺され息子を変えた男への怒りが体に力を込める。地面のコンクリートタイルが少し沈み始めていた。

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