カイシュウ
「あら、無事うまくいったようで何よりだわぁ.......。それにしても相変わらずうちの子は早とちりするんだから。前日から準備したお弁当忘れるってびっくらこくわほんと」
あきれた目を向ける母親を前に恥と共に睨み返す。それでも握った燎の手を離さない。それを見てより母親が頬をより緩ませる。静かに燎へと視線を向ける。
「こんなおバカな子だけどよろしくね~」
そう笑うとスリッパをパタパタさせながらキッチンへと戻っていく。
「ちょっ!ママ!変なこと言わないでよぉ!」
星の怒りは母親の背中にすら届かないのだった。
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意外とあっさりお風呂に入るからと星は燎から離れていった。静かに自分の部屋へと燎は入る。勉強机の上にて対して減っていない充電のためにスマホを充電器にさすと燎はベッドに倒れこむ。枕に顔をうずめると静かに目を瞑る。瞼の裏には星と初めて会ったときが映る。
(よく考えてみたら返り血とはいえ血だらけの状態で来た僕のことをよく恐れずに話しかけたな......人は殺してないとはいえ幼女なら確実に俺を見ただけで泣いているだろうに........)
思い出しながらも少し眠気が出てくる。うつらうつらと意識を手放さんとしている時だった。
「燎~、コンビニ行ってくるけどなんか欲しいいものある?ってごーめん。起こしちゃった?」
ドアがノックなしで大きく開かれると星が入ってくる。
「いや、もう寝ちゃいそうだっただけ。コンビニ行くの?一緒に行こうか?」
「わー、ごめごめ。ちょっと一人で行きたいの。ちょっと頭冷やしたくて」
不穏すぎる単語に燎は思わず反応する。
「えぇと、なんか怒らせちゃった?」
「うん?いや別に何も怒ってないよ?なんで?」
きょとんとした、まるで言ってることがわからないといった表情の星である。
「いやぁ、頭冷やしたいって言ったから」
「あっ、いやっ、そのぉ.................幸せすぎて心が浮ついた感じといいますか........現実感なくて心を落ち着かせたいんだよねぇ」
燎にとっても恥ずかしい理由だったため二人して赤面するという特殊な空間が形成された。
「じゃ、じゃあっ。行ってきますっ!」
手を振りながら振り返ることなくドアから走って出て行った。
「き、きをつけてな~」
燎の声は届いたのか否か。
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事件はその夜起こる。
星がコンビニに出かけて20分ほどだろうか。3か月ほど前に一人暮らしの自分の部屋へもどっていってから連絡を取り合っていなかった義兄から電話がかかってくる
『おいッ!星は居るか⁉』
「は?星ならコンビニに出かけて行ったけど......。何かあったのか?」
兄のあまりにも焦っている声色を聞き燎もただ事ではないと感じる。
『何かあったかじゃない‼‼星が誘拐された!さっきまで星と電話していたんだが悲鳴と共に電話が切れた!スマホの電波から位置情報を調べたが付近の防犯カメラに連れ去られるところが映ってたんだよ‼』
「........」
燎は何も返さなかった。それにまた義兄が声を荒げる。
『おい!何か言えよ‼‼』
怒りに任せて声を荒げる義兄。それに返す燎の声は恐怖と焦りに満ちていた。
「もう外に出てる。早く場所を教えろ」
『............既に場所は調べた。日本海側、今のお前の向いている方向において右手側の港にある倉庫群の中での4番倉庫だ』
義兄によってすさまじい量の情報を突然与えられたというのに燎は動じない。あるいはこれ以上動じる余地もないのか、もはやわからなかった。
「わかった、もう電話を切る。ごめん」
『あ、おいッ』
義兄の叫びも一切無視して一方的に電話を切り背中に翼をはやし羽ばたいてすさまじい速度で向かった。
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「........んぅ............えっナニコレ⁉」
星が目を開けると腕と足が縛られていた状態で椅子に座らされており身動きが取れなくなっていた。
「おや、おはようございます。ご機嫌いかがかな?」
そこには机と椅子を並べ机の上にある日本酒を飲みながら眺めている白衣を着た男がいた。
「だ、誰ですか!私をなんでこんな場所に⁉」
恐怖に満ちた表情で叫ぶ星を見る男は煩わしい表情をしていた
「これだからガキは..........。所詮は小娘か。では我々から隠匿したのは君ではなさそうだな。私は君達から取り返しに来ただけさ。私の、道具をね」
その言葉を聞いて星が恐怖を顔に浮かべる。そんな時天井が崩れ落ちた。
「やぁっと来たか」
笑顔を浮かべて崩れ落ちた天井とその粉塵が舞うところを見つめる。
「どういうつもりだ、クソ野郎」




