おまけ・1 登場人物について
まずは、本編を読んでいただいた皆様へ。
本っ当にありがとうございます。
心を縛るXXXの作者の一布です。
さて。ここから書くおまけには、思い切りネタバレが含まれます。
ですが、ここを読んで下さっている方は本編を読み切っていると信じています。それはもう、ダイヤモンドより硬く信じています。信じさせて下さい。
まあ、ダイアモンドの硬度ってのは「傷の付きにくさ」を示すもので、「壊れにくさ」を示すものじゃないんですけどね。
ここでは、本編で(一布の力不足で)書き切れなかった登場人物の様々な部分について語っていこうと思います。なお、本文中には、一布が書き殴った設定資料の文言をそのまま引用した部分が出てきます。
ちなみにこのおまけ、作中とは雰囲気を変えて軽い感じで語っています。力を抜いて、ホワイトデーに受け取り拒否された本命クッキーや、本命から貰えたホワイトデーのマシュマロを頬張りながら気軽に読んでいただけたらと思います。
ではどうぞ。
【主要人物】
■村田洋平
十六歳。三月六日生まれ。留年等なく高校に通っていれば、高校二年。魚座のO型。本作の主人公。
もともとは「弱い主人公」にしようと考えた人物。
作中では努力し、学習し、鍛え、その天性も手伝ってかなり強い部類の人物になっているが、実はこの「弱い主人公」という発想は最後まで守られていたりする。
では、何が弱いのかと言えば。
圧倒的な素質から考えると、開花した部分が少なすぎる。つまり、素質から考えると「弱い」となります。
幼い頃、クズまっしぐらの父親に力でまるで敵わず、暴行に耐え続けていたせいで、「耐える」「逃げる」の手法にて守りたいものを守ろうとする。
どうしても立ち向かう必要があるときも、決して真っ正直に正面から戦わない。
それは、未だに自分を「弱い」と認識しているから。幼い頃に明かに自分より強い者から暴力で虐げられていた洋平は、どうしても自分を「強い」とは思えない。
だから、クライマックスの場面でも、自分が「弱い」ということを前提に頭を使っている。
大切な弟が自分の腕の中で亡くなった経験から、命の重さや、失ったら二度と戻らないということを実感を伴って知っている。だから人を殺せない。
根は真面目で愛情深く、まともな環境で育ったなら、かなり高い確率で一角の人物になっていたと思われる。育成環境ってとっても大事。
ちなみに、幼い頃の洋平が、自分よりも遙かに大きく強い父親の暴力に怯え、恐怖や悲しさを覚えるシーンについては、実はモデルがあります。それについては、エッセイにしてみようかな、とか思ったり思わなかったり。
■笹森美咲
作中開始時点で十五歳。途中で誕生日(八月八日)がきて、十六歳になる。高校一年。学年では洋平の一つ下。
気の強そうな顔立ちの美人。
十三歳から体を売っている。
ちなみに、売春の客を探す方法として最初は某SNSを使ってみたが、アホほど多くの男から反応があって、誰を選べばいいか分からずアカウントを削除した。
余談だが、人間は、選択肢が多すぎると選択すること自体を放棄してしまうことがあると心理学的に言われている。そんな感じ。
愛情に飢えすぎたが故に、メンヘラっぽい(原文まま)
いい意味でも悪い意味でも一途。一旦惚れてしまうと、たとえその男がどんなクズ男でも尽くしてしまうタイプ(原文まま)
反面、口は若干悪い。
Eカップ(原文まま)
体の苦痛には割と強い(原文まま)
まったくの余談だが──SNSが少女売春交渉の温床みたいな声を聞くことがある。しかし、実は、少女売春の問題というのは、かなり昔から現実としてある。一布もまだ生まれていない時期からあったそうで。
ちなみに、売り手と買い手の交渉のステージは、新しい順に、SNS、出会い系サイト、テレクラ、直接交渉、となっているらしい。
美咲は、SNSで相手を選択するのがおっくうで、もっともアナログな直接交渉の手段を取っていた。
日本という国は性教育に関しては圧倒的後進国で、性のリスクに関してまったく無警戒な人が多い。経済的な意味での先進国の中で性病患者が増加傾向にある国はほとんどないそうだが、日本は、そんな「ほとんどない国」のひとつだそうで。
どうにかしようよ、(一布も含めた)日本の大人達。
ちなみに、実は、愛情に飢えたことにより売春に走るという少女は、実はそれほど多くない。
一布の知人友人の女性から見た傾向だが、愛情枯渇により自己肯定感の低い女性は、優しくしてくれる男と簡単にセックスしてしまうが、対価など求めない。優しい言葉自体が対価みたいだ。
ちょっとこの場を借りて訴えたいが。
上記のような口先で優しい言葉を吐く男って、陰では、自分と寝た女性を嘲笑の対象にしてますよ。笑い者にしてますよ。どうか、そんなクズ男からは離れて、真剣に相談できる友人を探して下さい。
さらにちなみに。逆に売春に走る少女というのは、見栄っ張りだったり、自分を大きく見せたかったり、物欲が強かったりする傾向があるように感じました。短時間で大金を手にすることによって、そういったことが満たされるんでしょう。
美咲には色んなものを背負わせてしまいましたが、心に傷を持つ女性や歪みを持つ女性に、その悲しさや虚しさを訴えられる人物であってくれれば、なんて思います。
■金井秀人
一布的には、本作の裏の主人公。クライマックスの時点で誕生日が訪れ、三十二歳から三十三歳になった。
少年時代は、優しく、動物好きで、しかも幼少期から端正な顔立ちをしていたため、近所でも評判の天使のような子だった。
しかし、作中のような悲劇に見舞われ、周囲に迫害を受けたことにより、少しずつ、でも確実に心が歪んでいった。
結果として、本来の優しさを心の奥に封印したまま笑いながら人を殺せる人物へと変貌した。しかし、心の奥にある優しさのせいで、「心」と「思考」に大きな不整合が発生し、本作後半で苦しんでいる。
イメージとしては、幼少期は虫なんて気持ち悪いとも何とも思わなかったのに、大人になるにつれて嫌いになっていく感じ。それは、歳を重ねるにつれて「気持ち悪い」「害虫」という認識が心を侵食していくからかな、と。
実際に一布自身も、虫の生態とかを見ると「面白いな」と興味が湧くが、実際に家の中で虫が出ると「うひぃあ!」と意味不明な奇声を上げることがある。やっぱ気持ち悪い。
精神年齢は、概ね十五~十八歳をイメージ。迫害され、まともに人と関わり合えず、超能力が使えるようになってからは力で屈服させてきたので、実は社会性が低い。人は、人の中で揉まれることにより精神的に成熟していくが、そういった経験を積めなかった。ただし、知能が圧倒的に高く、さらに様々なことを勉強しているため、人心掌握術は上手い。
──という人物像をイメージしていたが、読み手の方に感じ取っていただけただろうか。自信がない。うううううううう(ーー;)
【主要人物に影響を与える人達】
本作は、大きく分けて三つのパートに分かれている。三人が出会うまで、三人の共同生活から決別まで、そこからラストまで。それぞれのパートで主要人物に影響を与える人物を登場させて展開を作ったが、その人物達が彼等。
■岡田さんと愉快な仲間達(三人が出会うまで編)
多少私事となるが、昔、元ヤク〇の知人がいた。
その方は足を洗ったが、その方から聞いた組内での粛正は、はっきり言ってゾッとした。
小指を詰めるどころじゃなかった。腕を切り落とす、ということが当たり前にある。出血の様子やその後の対処を生々しく現実感をもって語られたので、本当に恐かった。
一布自身がごくごく平凡な人間なので、なおさら。
ちなみに、そういう関連の方は、実は人当たりが良く話が面白い人が多い。たぶん、そういった話術や、人を惹き付けるカリスマ性がある人がそのテの世界でのし上がっていくんだろうなぁ、なんて思う。うっかり信用して深みにハマったら、と思うとマジで恐い。
そういった「本当にあった恐い話」的な要素は除きました。
完全なステレオタイプのチンピラ君に仕上げました。
お陰で、思惑通り見事なやられ役となってくれました。
皆様、作中の洋平が求めたような、平凡で幸せな人生を生きましょう。いや、本当に。普通に生きられることが、実は何よりの幸せなんです。
■秋田一家(三人の共同生活から決別まで編)
真面目な父と貞淑な母親、勤勉な息子と娘。そんな理想の家族。洋平や秀人の父に対応した警察官の対比にしたかった。そのうえで「クソ警察官のせいで真面目な警察官が痛い思いをする」ということも表現したかった。
結果、可哀想な一家となった。
洋平達と秀人の決別の舞台となったという意味で、非常に重い人物だったりする。できればもう少し人物を掘り下げ、彼等が犠牲になることに重々しさを出したかった。
できなかった。
一布の力不足。あうううううう(T^T)
■お婆ちゃん(ラストまで編)
洋平や美咲に「普通の幸せ」を与えてくれた人。
現実には数少ない、「普通に生きているが尊敬できる老人」
これまた私事になりますが。
一布は片親(母親)の家庭で育ちまして。
幼少期に、町内のウンコジジィやウンコババァによく言われたものです。「片親で育った子はロクな大人にならない」と。その時代、まだ「シングルマザー」なんて言葉はなく、近所にも片親家庭が少なかったんです。
そんな言われのない偏見とともに身に覚えのないイタズラの犯人にされて、町内ではほとんど友達ができませんでした。「遊んじゃ駄目な家の子」みたいになってたんですね。
そんなわけで、作中のお婆ちゃんは、実は一布の憧れです。体力的にも頭の回転の速さの面でも、若い人には劣る。そんな年齢を重ねた人物にあって、かつ、若者の示しにできることは何か。
経験です。調べて「知識」として身に付けるだけでは足りない、実感を伴った経験。必要に応じて他者に頼り、力を借り、経験から実感を伴って語り、若い人の道しるべになれる。
そんな人物の具現化。愛情深く、優しく、でもときに厳しく。
そして、必要とあればゴミのような五味超隊員に喧嘩を売るような発言もできる。そんな勇気もある。
一布はまだ「老人」という歳ではないですが(「若者」と言える歳でもない)。
そんな年寄りに、一布はなりたい。
【超隊員】
洋平は警察に無下に扱われ、さらに虐待される自分や弟にも非があるような言われをされ、警察を恨んでいた。そんな洋平の心情に対応するように出した二人の超隊員がこちら。
■前原正義
真面目な熱血漢。しかし、そういった人物にしては珍しく、割と発想が柔軟。だからこそ、捜査に関して洋平が超能力者だという意見を出せた。自分と同じく「レーダー」と使えるから、警察の動きを察知し逃げ延びているのではないか、と。
二十八歳。独身。現在彼女なし。
ちなみに、過去の彼女には、ことごとく「仕事ばかりで構ってくれない」という理由でフラれている。休日は体を休めるでもなく、彼女とデートとかに行っていたんだけど。頼れる感じを人に抱かせるせいか、人に頼りたい願望が強い女性ばかり寄ってくる。
名前は、一布の前作長編「死を招く愛」の刑事、前原正義から。性格も割とそのまんま。違うのは、前作の正義君は熱血なだけで頭はそれほど良くなかったが、今回の正義君は割と発想が柔軟。
本当は、もっと洋平の境遇の辛さを表現する人物にしたかった。
真面目で、本心から洋平の更正と幸せを祈る正義。でも、洋平は、正義を信用できない。過去のクソ警察官のせいで。洋平は知能が高いのに、それでも正義を信用できない。それほど、クソ警察官が洋平の心に残した傷は大きい。
そんなふうに描きたかったけど・・・できなかった気がする。
またも力不足。しくしくしくしく(T^T)
■五味秀一
超能力という稀少な能力を持っているせいか、選民意識が強く傲慢。だから、すぐにキレる。頭の沸点が低いくせに自己評価は高いウンコ警察官。二十五歳。
名前や性格は、これまた一布の前作長編「死を招く愛」に出てくるラスボス的な悪役から。今度の五味君はボンボンチンピラではなくウンコ警察官になりました(前作未読の方、メタネタ連発で申し訳ありません)。
正義が洋平の悲痛さを表現するための人物なら(上手くできなかったけど)、五味君はそんな正義との対比。同時に「こんなクソ野郎に洋平が殺されてしまう」という無情さ、洋平の境遇に対する悲しみ、悔しさなんかを表現したかった。
これも、なかなか上手くできてない気がする。
力不足連発。ふがいなし(T^T)
【展開上必要だった人】
■三橋
小悪党のお手本。自分の欲求を満たすためなら法にも倫理にも平気で背く。
媚びウリ上手。ゴマすりの手で火が起こせるレベル。
第四十七話で秀人に殺されるのは、本当は三橋の予定だった。しかし、より秀人の心情に添って殺されるべき人物がいたために、死を間逃れた。運がいいこと山のごとし。
現実の世界でも、こういう奴ってしぶといよなぁ。
◇
そんなわけで、簡単ではありますが、裏話含む人物紹介でした。
でも、簡単とか言っても5000文字くらい。本当はもっと語りたいんですが。
本編218399文字の中に登場した人物達ですから、簡単に語ってもこれくらいになるのかな-、なんて。
次回のおまけ2では、作中の舞台や設定について書き殴りたいと思います。
読んでいただけたら嬉しいです。
ではでは。




