アインの剣に«吸い込まれた黒いもや»▪話す令嬢たち
ザンッ.....
何かが斬られる音がした。
見てみれば、血に濡れた剣を持ったアインと、
首を斬られた死体。
前と同じ光景。違うのは場所と、周りに騎士が
いないことだろうか。
騎士が踵を返す、と剣に黒いもやが纏った。
今度は、見間違いではなさそうだ。
剣に纏った黒いもやは、剣に«吸い込まれて»いった。
しかし、アインは気付かなかったようで
そのまま歩いて行った。
.....«黒いもや»は、何なんでしょうかねぇ....
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「ねぇ、聞きました?
[正義]の騎士様、また罪人を斬られたらしいのですが....」
ドレスを着た、ご令嬢たちが話している。
「ええ。聞きましたわ。
お兄様のお話では、剣の腕は騎士団でも1,2を争うほどだと」
「ええ、お父様と一緒に見た時も、息一つ乱すことなく
お相手の騎士様を切り伏せておりましたわ。」
ご令嬢たちは、とても楽しそうに話している。
「まあ、アイン様を間近で見られたの?
とても羨ましいわ。」
話していたのは、アインについてのようだ。
「あの....」
一人の大人しそうなご令嬢が話に入って来た。
「アイン様と言えば、一つ不思議なお話があるんです。」
「まあ、何かしら?」
「はい。その....
アイン様に黒いもやが纏っている時がある....と」
「黒いもや...ですの?」
話題になっている«黒いもや»とは、剣に吸い込まれた
あのもやのことだろうか。
「はい。そのようなお話を何度もお聞きしたのです。」
「...そういえば、私もお兄様からそのことをお聞きしましたわ。」
「まあ.....何なのでしょう。その«黒いもや»というのは...」
.....本当に、ね。