兄弟がいっぱいいると一人は変な奴がいる
前回のあらすじ
良い子は真似しないでね。
「出来るかぁ!」
今、ヴィザル達は馬車に乗っていた。
「それでサリアと保護者のケンがいるのは分かるわ。でもなんであんたがいるのよ!?」
今、馬車に乗っているのはヴィザル、ジルフレイム、サリア、ケン、そしてフィルディオだった。
「面白そうに決まっているじゃないですか!」
「愉悦し過ぎでしょ。」
しばらく馬車が走っているとあるお屋敷に着いた。広い敷地内にコの字型の大きな建物があった。ヴィザル達が花壇や噴水のある庭を歩いていると屋敷の入り口に二人のメイドがいた。
「「お帰りなさいませ、ヴィザル様。」」
メイドをよく見ると髪色や隠れている目は違うが双子だということがわかった。
「初めまして。私はヴィーダ・オルディダンテ様のメイドを務めております。姉のフギナ・クロウレイヴと。」
「妹のムニア・クロウレイヴでございますわ。」
「よ、よろしく。アイアンガイアのマスター、サリア・へラクロス。」
「同じくアイアンガイアのケン・アレスザードだ。」
「初めまして!雑誌記者兼アイアンガイア専属カメラマンのフィルディオって言います。フィルとお呼びください!」
サリア達が自己紹介を終わらせるとフギナはヴィザル達をヴィーダのところに連れて行った。
「さすが、オリュンティア公国有数の貴族、オルディダンテ公爵の家。豪勢だねぇ。」
サリアが家の中をキョロキョロ見渡していると、後ろからヴィザルを呼ぶ声が聞こえた。ヴィザルが振り向くとそこにはムニアと一緒にいるバルドとインドライガがいた。
「バルド兄さん!」
「久しぶりだな、ヴィザル。相変わらず苦労しているみたいだが。」
「はい、ものすごく苦労しています。」
「ヴィザル!?」
ヴィザル達が話し合いながら進むと広い部屋に着いた。そこには大きいベッドに寝ている初老の男性とその横立っている背丈の高い男がいた。
「「ヴァリス兄さん!」」
ヴィザルとバルドが背丈の高い男の元にきた。彼はヴァリス・オルディダンテ。オルディダンテ家の長男でヴィーダの後を継ぐ予定である。ヴィザル達が近づくとベッドの向こうにアテリナがいた。彼女の隣には綺麗な女性とオリュンティア公国国王ケラウロスもいた。
「久しぶり!」
「ひ、久しぶりです。」
「初めましてヴィザルさん、バルドさん。私はケラウロス・オリュンティアの長女で王位継続順位第2位のテティア・オリュンティアです。よろしくお願いいたしますわ。」
テティアが丁寧にお辞儀をしながら自己紹介をした。ヴィザル達も彼女にお辞儀するとインドライガがヴィーダに何かをあげた。
「こちら、ヴィーダさんが好きだと聞いたのでお見舞いにどうぞ。」
美味しそうなメロンだった。
「俺は大丈夫だと言ったんですけどね。」
「さすがオリュンティア1のクランマスター。うちのマスターとは大違いだ。」
「・・・」
気まずそうに顔を背けるサリア。そんなサリアを見てヴィーダは笑って語りかけた。
「ハハハ。気にしないでくれ。ただの過労だ大したことはない。」
「そうなんですか?ジルフレイムさんが危篤って言ったんで心配しました。」
「ハハハ。」
ジルフレイムがニヤケ笑いして誤魔化していた。
「私はもう大丈夫だ。心配かけたね。」
ヴィーダが元気そうで安心しているとバルドが周りをキョロキョロ見渡した。
「そういえばあのバカはどこですか?」
「あぁ、フォルスならまだ自室にいるぞ。」
「あのバカ~!」
バルドの質問にヴァリスが答えるとバルドは怒って部屋を出て行った。ヴィザルもそれについて行くとサリア達も一緒について行った。
「確かフォルスってヴィザルの兄だよね?」
「はい。オルディダンテ家3男です。」
「仕事もしないで毎日親の脛を齧っているどうしようもないバカだ。」
「4人兄弟となると一人ぐらいそんな奴がいるのね。」
「まったくだ!弟のヴィザルでさえちゃんとクランで活動しているというのに。」
ヴィザル達がフォルスの部屋に行っていると前から一人の女性がやってきた。彼女は金と緑のサラサラヘアーでスタイル抜群のモデルみたいだった。彼女はヴィザルに気が付くとものすごい勢いでヴィザルに駆け寄ってきた。
「久しぶり、ヴィザル~!」
「ヨ、ヨルズ姉さん。久しぶりです。」
「姉さん?」
「あぁ、ヨルズ・オルディダンテ。オルディダンテ家の長女でヴァリス兄さんの次に産まれた俺達の姉だ。そして、重度のブラコンだ。」
バルドはサリア達に彼女のことを説明した。どうやら、ヨルズは幼い頃から剣の才能があったらしく若干14歳で冒険者となり世界各地で活動しているらしい。
ちなみに、長年会えなくなっているせいかかなりのブラコンとのこと。
バルドが説明している間もヨルズはヴィザルに頬をスリスリ擦り合わせていた。
「それで、後ろの人達はヴィザル達のクランのメンバー?」
「そうだよ、姉さん。こちらが俺が所属しているレジェンドドラゴンのマスター、インドライガ・ペンドラグーンさん。」
「知ってる。結構有名だからね。」
バルドがインドライガを紹介するとインドライガは会釈した。次にヴィザルがヨルズから離れるとサリアとケンの紹介をした。
「こちらが僕が所属しているアイアンガイアのマスターでギャンブル中毒のサリアさんとその躾役のケンさんです。」
「説明ひどくない!?」
「間違ってはない。」
「あぁ、あのギャンブルの破産 女王ね。」
「なんでその名で知ってるの!?」
サリアがツッコミするがヨルズは無視して袋から何か出した。
ゴスロリの服が2着だった。
「バルド、ヴィザル。これ着てくれない。」
黙って逃げる二人。
↓
一瞬で二人を捕まえたヨルズ
「お願い!私、妹が欲しかったの。だから一回でいいから着て愛でさせてー!」
「「いやだ~!」」
「それよりフォルスさんのところに行きませんか?」
必死に暴れる二人を見かねてインドライガがヨルズに提案した。ヨルズは冷静になると服を正してインドライガの提案に乗った。
「そうね。フォルスにも会いたいしね。」
「さすがマスター。ありがとうございます。」
ヴィザル達はある部屋の前に着いた。ヴィザルがドアを開けようとするが鍵がかかっていた。するとバルドがドアを蹴り破った。
「おい、フォルス!」
バルドが入ると中は真っ暗でカーテンも閉まっていた。その中央にはベッドがあり、そこが膨らんでいた。バルドがそこに行って布団をひっぺ返すともう1枚の布団を被っている男がいた。
「眩しい~!」
「起きろ、フォルス!何親父の見舞いにも来ねぇんだ!?」
「だってただの過労だよ!わざわざ行く必要ないじゃん!」
「あ、それとヴィザルにイカサマとか教えてたろ!」
「あ、もしかして役に立った?」
「一応、役に立ちましたよ。」
フォルスがヴィザルに気が付くと布団から顔と手を出した。フォルスが手を振るとヴィザルも手を振って返した。バルドがフォルスを布団から剥がそうとするとフォルスが指を鳴らした。その瞬間、周りに50cmぐらいの小さくてデフォルメされたフォルスがいっぱい現れた。
「え、何これ!?」
「何かいっぱいいる。」
「これがフォルス兄さんの特殊魔法”パペットパーティー“です。」
「フォルスがベッドから一歩も出ずにテレビ着けたり食べ物持ってきたりするために編み出したみたいよ。」
「完全に引きこもり魔法じゃねぇか。」
「あれってバカ◯スの召喚獣っぽくない?」
「どちらかというとこの◯ばのバ◯ルの技に似てるよね。」
「止めて下さい。」
パペットフォルス達は一斉にバルドに飛びかかってきた。バルドは振り払おうとしたが数が多過ぎて払いきれなかった。すると、見かねたインドライガが雷でパペットフォルス達を一瞬で吹っ飛ばした。
「さすがインドライガ。見事なもんだ。」
「ありがとうございます、マスター。おら、さっさと出ろ!」
「嫌だ~!」
布団を引き剥がされたフォルスはバルドに連れられヨルズと一緒にヴィーダの見舞いに行った。見舞いが終わるとヴィザル達は帰ろうとした。するとヨルズがヴィザル達に提案してきた。
「ねぇ、実はこの後ちょっとしたクエストに行くんだけど一緒にいかない?」
次回予告
新章《魔神の街編》開幕
「いよいよ話が大きく動き出します。」
「本当?」
「本当だよ!」




