異形の少女
前回のあらすじ
おばあさんが優しかった。
「ありがとうございます!」
2人は走る。知らない土地をどこに行けばいいか分からないまま近くの街に入る。すると、ヴィザルは気付いた。この国にはテレビがない。街の人達は情報を新聞で得ていた。よく見ればスマホどころか携帯電話すら持っていない。
「あれ?僕達意外とバレてない?」
ヴィザルは一応見つからないように注意しながら街を歩く。今着ている服を見れば記憶に残ってしまう。どうやってバレずに服を着替えようか考える。
裏路地を通り服屋を探す。その時、気配がした。すぐに物陰に隠れて様子を見る。誰も居ない。気の所為か?そう思った瞬間、両肩を掴まれた。
「ヴィ〜ザル君。」
「さすがオリヴィエ。」
驚いて振り返るとオリヴィエとガルムがいた。ヴィザルはびっくりして下がる。
「何故ここが!?」
「ヴィザル君のにおいで。」
「オリヴィエすげー。」
鼻を指して自慢気に語るオリヴィエ。それに若干引くガルムと自分そんなに臭ってたかとニオイを嗅ぐヴィザル。そんなヴィザル達を見て唖然とするアウラ。そんなアウラをガルムが見て指差した。
「それで件の女の子って彼女?」
「そう。」
「めっちゃ可愛いじゃん!」
「そこじゃないでしょ。」
オリヴィエに軽くチョップされまう一度アウラを見る。ボロボロの服、手足や首の鎖に目を取られる。
「なぁ、それって密入国というより誘拐じゃね?」
「それか奴隷貿易。」
「やっぱりそう思うよね。」
ヴィザルと同じ見解のガルムとオリヴィエ。ヴィザルもうんうんと頷く。3人でアウラの鎖を外そうと試みる。それでも外れることはない。
「硬すぎないかこれ?」
「多分、魔法でコーティングされてる。」
オリヴィエが言うには付与魔法などで鎖を硬くしているらしい。そのせいで力強くで破壊は不可能。外すには魔法を解くしかない。しかし、オリヴィエには解くことが出来ない。もちろん、ヴィザルとガルムも無理だった。
どうするか悩む。ヴィザルがもう一度鎖を外してみようと近付く。その時、アウラが最初と違う視線を送っていることに気づいた。最初は怯えていたが今は興味本位で見ている。
「どうかしたの?」
「あ、あなた達は私を見て何も思わない?」
「え?すげー可愛いぜ。」
「ガルムは黙る。」
ガルムの回答にアウラは驚く。確かに見たことない種族だがそれでも美少女なのは事実だ。ヴィザルもそう思う。
「私、異形と呼ばれてる。みんな、私を怖い目で見る。」
「そんなに異形には見えないけど。」
「確かに普通とは違うみたいだが俺は可愛ければオールオッケーよ!」
ガルムがアウラの胸元を見る。そこそこ大きい胸に鼻の下を伸ばす。それを見たオリヴィエがガルムを杖で殴り飛ばした。
「ヴィザル君はどう思ってるの?」
「僕は…アウラが密入国者には見えない。なんか重大な事件に巻き込まれてるかもしれない。だから、助けたい。」
ヴィザルの真っ直ぐな目にオリヴィエは見惚れている。
「まぁ、彼女が本当に密入国者の可能性もあるけどヴィザル君がそう言うなら私も彼女を守ることにするわ。」
「俺もヴィザルに着いて行くぜ。」
オリヴィエに続いてガルムもヴィザルに賛同する。
「ありがとう。でも、一緒に逃げるよりサリアさん達の側で動向を見て教えてほしい。」
「分かった。」
「オッケー。…で、ヴィザル。」
「何?」
「あの可愛子ちゃんと結婚しようなどと考えてねぇだろうなぁ?」
「天地天命オリヴィエ様に誓ってしないと約束します。」
「「なら良し。」」
2人に土下座して誓うヴィザル。
「あ、気を付けろよヴィザル。この国ってなんでも処刑するヤバい国らしいぞ。」
「それ、世界最強の処刑人がいたりします?」
「いないよ。それに処刑は先代武帝で劉龍君は処刑制度を廃止してるみたいだから。」
オリヴィエの話を聞いて安心するヴィザル。2人は手を振ってヴィザルから離れて行った。待ち合わせ場所はここ。2人が何か情報を持ってくるまでヴィザルはアウラを連れてこの街で逃げ切ることを決めた。
次回予告
一方、サリア達は…
「一方って便利だよね。」
「いきなりなんだ?」




