冒険者の実技試験は大抵モンスター討伐
前回のあらすじ
カンニングはダメ!絶対!
「肝に命じておきます。」
追試が終わったヴィザル達。なんとか30点以上取れたと倒れ込むガルム達。昨日は寝る間も惜しんで勉強したかいはあった。ちなみに、ヴィザルは81点だった。
「下がった…」
「それは俺達に対する当て付けか?」
「さぁ!次は実技だ!頑張ろう!」
ヴィザルははしゃぎながらガルム達から逃げる。校庭に集まると担当する教師達が前に立っていた。
「今から実技試験を始める!内容は後ろにあるライドウの森にいるモンスターの討伐だ。この時期になるとビノというモンスターが大量繁殖する。ビノは獰猛で家畜や人間を襲うこともある。が、1体1体は然程強くない。しっかりしてれば危険なことにはならない。」
「それに何かあれば私達先生がすぐに助けにいきますので安心してください。」
先生達が試験内容を説明する。説明が終わると班分けを発表する。基本実技試験は5人1チームで行うことになっている。チーム分けは主に筆記試験の良し悪しで決められている。チーム分けする理由はチームワークやサポート力を見る他に採点し易いというのもある。
発表が終わる。オリヴィエはAチーム、ヴィザルはDチームになった。オリヴィエはヴィザルと違うチームで不満そうだ。ヴィザルは余り関わらない女子3人とチャーリーだ。
「分かってるよねヴィザル。女子にカッコいいところ見せたいからやられ役になってくれ。」
「分かりません。」
チャーリーがヴィザルの両肩に手をかけてお願いする。もちろん断る。一方、オリヴィエと一緒のチームになったガルム達は肩を寄せ合い絶望していた。女子がオリヴィエしかいないのだ。
「折角カッコいいところ見せようと思ってたのに成績優秀かつヴィザルの嫁かよ!」
「あんた達、実技試験をナンパの場だと思ってる?」
オリヴィエが呆れている。担当の先生達が試験を始める合図をする。合格するには1人最低5体のビノを討伐しないといけない。
早速走り出す生徒達。ヴィザル達も負けじと森に入る。ここからは各チームが散り散りになってモンスターを探す。もちろん、この森にはビノ以外のモンスターもいるためそのモンスターを討伐すれば先生達が加点してくれる。
最初に得点したのはAチームのオリヴィエだ。こちらを覗いているビノを炎魔法で仕留めた。ガルム達も負けじとビノ討伐に出る。
一方、ヴィザル達はチャーリーと女子達がビノ相手に奮闘していた。
「やったよ!私、ビノ討伐出来たよ!」
「良かったじゃんリアンヌ!」
「このレベルなら大したことないね。」
みんな喜んでいる。しかし、ヴィザルは焦っていた。ビノが討伐出来ないじゃない。そもそもこっちに来てくれないのだ。ビノを見つけてもヴィザルを見るとすぐに逃げてしまう。
「何故来ない…」
「なんか哀れ。」
「嫌われているというより怖がられている?」
「それほどヴィザルが強いってことでしょう。」
「留学から帰ってきたヴィザル君ってなんか凄く強くなっている気がする。」
ヴィザルの後ろでヒソヒソ話すチャーリー達。ヴィザルがこちらをチラッと見る。チャーリー達はニコニコしながら手を振る。
「いらない!そんな慰めいらない!」
「何言っても効果ないだろうからなぁ。」
「もうビノ以上のモンスターを討伐した方がいい気がする。」
ヴィザルが嘆いていると蛇のモンスターを抱えたエルギス達が来た。エルギスはヴィザルを見るとチャーリーに何があったと質問する。チャーリーはそれに答えた。
「ああ…本脳であいつヤバいと思われたわけか。」
「強すぎるのも問題だね。」
「てかもうヴィザルは実技免除で良くねぇか。」
強くなりすぎた結果、ビノどころかモンスター1体も近付いてこない事態に嘆くヴィザルに同情する。すると、パキパキと踏む音がした。その音はだんだん近付いてくる。そして、ヴィザル達の目の前にティラノサウルスみたいなモンスターが現れた。
「マジか!ギガンドンじゃねぇか!」
「ヤバいよ!あれ相当強いモンスターだよ!早く先生達に知らせないと…」
「来たー!」
逃げようとするチャーリー達に対してやっと来たモンスターにヴィザルは興奮していた。ギガンドンの噛みつきを避け下から顎に蹴りをする。その一撃でギガンドンは倒れた。
「よっしゃあー!」
「やっぱりヴィザルだけ実技免除で良くないか?」
「てかもう剣いらなくない?」
やっとモンスター討伐出来たとヴィザルは喜ぶ。それを見て唖然とするチャーリー達。それを千里眼魔法で監視していた先生も驚く。
「彼らの言う通りヴィザル君は実技免除でいいかもしれませんね。」
「まぁ、ギガンドンを一発KOしたのなら冒険者としての強さは問題ないだろう。」
この結果、ヴィザル含め受験生全員合格となりなんとかみんなで3年生になることが出来そうだ。
ちなみに、ビノ討伐数はオリヴィエがダントツトップだった。
超久しぶりの用語集コーナー
ビノ
1m前後の雑食性モンスター。猪に似ている。鋭い歯で家畜や野菜を食い荒らすうえに繁殖力が強いため迷惑になっている。ちなみに、焼いたり煮たりすると意外と美味しい。
ギガンドン
10m以上はある肉食性モンスター。かなり凶暴かつ獰猛な性格。硬い皮膚に強靭な肉体、鋭い牙に加えて炎を吐く個体もいる。
次回予告
世代交代の時が来る。
「やりましょう!ヴィザル君!」
「めんどくさいので嫌です。」




