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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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教えるのって大変

前回のあらすじ

ウズメは露出狂。


「よし、そのキャラでいこう。」

「良くない!」

 ここはカブジナの近くにある森の中

 そこにはギルガ達ワイルドビーストのメンバーとヴァンガスがいた。彼らの前には獣人達がいっぱいいる。


「今日はお前達にモンスター討伐クエストについての基本を教える!」


 そう。ギルガ達は新米冒険者にモンスター討伐についての教室を開いていた。集まった獣人達はギルガを尊敬の眼差しで見ている。そんなギルガをヴァンガスはジーと見ている。


「なぁ、これ俺いる?」

「マスターが指名したのだから文句言わない。」


 イライラ気味のヴァンガスをヴィヴィアンが諭す。今回はアーマーエイプというモンスターを討伐する。人里に降りては果樹園を襲撃し多大な被害を及ぼしているとのこと。

 ギルガが先頭に立って森の中を進む。その間暇なヴァンガスは新米冒険者達に話しかけていた。


「お前らなんで冒険者になった?」

「守りたい人がいるからです。」

「稼いで家族のみんなの負担を減らしたいからです!」

「ギルガさんに憧れたからです!」

「ヴィザル先輩よりモテたい!」

「おい、その流れでよく言えたな。」


 メラメラ燃える狐の獣人。その隣でガルムがウンウンと頷いていた。


「何故ヴィザルがハーレム婚できたのか…あの時、留学に名乗り出ていれば俺も今頃…」

「多分無理だろ。」


 聖ヴァルキュリア百合女学園の生徒と会話したことあるヴァンガスが即否定した。それに項垂れる数人の新米冒険者達。


「モテたい奴結構いたぞ。」


 ヴァンガスが隣にいるワイルドビーストのメンバーに話しかける。そのメンバーは乾いた笑いをしながら目を反らす。すると、黒猫と白猫の獣人兄弟がヴァンガスに話しかけてきた。


「アイアンガイアのヴァンガス・リュカリオンさんですよね?」

「ああ、そうだ。」

「やっぱり!僕達、ヴァンガスさんに憧れて冒険者になったんです!」


 黒猫の獣人がキラキラさせて喋る。それを見たヴィヴィアンが2人の肩に手をかける。


「あなた達…このバカに憧れるのは止めなさい。」

「おい!それどういう意味だ!」


 ヴァンガスが詰め寄っているとギルガが制止した。ヴァンガスも何かの気配を感じ静かになる。何かが蠢く音がする。

 新米冒険者達を中央に寄せて守るように囲む。その時、アーマーエイプの集団が襲ってきた。気性が荒いアーマーエイプは雄叫びをあげ引っ掻いてくる。それをギルガが返り討ちにした。


「ヴァンガス!右やれ!」

「分かってらぁ!」


 ヴァンガスはギルガの命令通りに右から来るアーマーエイプの集団を爪から放つ風の刃で倒していった。新米冒険者達がその戦闘を見ている。そこにジャンプして2体のアーマーエイプが襲ってきた。新米冒険者達が頭を下げた時、ギルガとヴァンガスが息を合わせてジャンプして蹴散らした。

 あっという間に倒していく2人を見たアーマーエイプ達は一目散に逃げて行った。2人の活躍を見た新米冒険者達が拍手する。


「凄いです!」

「さすがにマスターの従兄弟なだけあるわね。」


 ヴァンガスの活躍にヴィヴィアン達も感嘆する。黒猫の獣人がヴァンガスに質問する。


「僕、ルーンっていいます!ヴァンガスさん!どうすればさっきのようなギルガさんと以心伝心の連携が出来るんですか!?」

「ああ…そんなのこう…ガーとやってババーンと切ってズドーンとやれば出来るだろ。」

「分かるかぁ!」


 ヴァンガスの説明にポカンとしているルーン達とツッコむヴィヴィアン。ヴァンガスは?を浮かべてヴィヴィアン達を見る。


「説明になってない!みんな!マスターがちゃんと教えてくれるので聞くように!」


 ヴィヴィアンがヴァンガスの代わりにギルガに教授してもらうように言う。


「分かった。いいか!よく聞けよ。…ドーンとやってシュバーンとしてチャチャッと切り込んでズーンと気配を感じたらバッサリやるんだよ。」

「待ってくださいマスター!?」


 ずっこける新米冒険者達とギルガを制止するヴィヴィアン。ギルガもヴァンガスと同じように?を浮かべてヴィヴィアン達を見る。


「マスター!ヴァンガスと同じ説明になってますよ!」

「そう言われてもヴァンガスの説明で充分だから俺が言えることなんてほとんどなかったぞ。」

「あれで伝わったんですか!?」


 ヴィヴィアンがギルガとヴァンガスを交互に見る。2人とも感覚派だ。


「なんでこの2人に教師を頼んだんだろう…」


 2人を見たワイルドビーストのメンバー達は頭を抱えたり膝をついて項垂れる。新米冒険者達も分からず?を浮かべる。すると、褐色肌の黒兎の獣人の少女が2人に提案した。


「言葉では伝わり難くいので動きで御教授していただけませんか?」

「おお、いいぞ。」


 少女の提案にヴィヴィアンはナイスと親指を立てる。お手本としてギルガがやる。


「冒険者にとって必要なのは危機管理能力だ。いついかなる場合でも素早く対処しなければならない。こういう風にな。」


 ギルガはそう言うと茂みに隠れていたアーマーエイプを竜巻で吹き飛ばした。一瞬で済ませるギルガに新米冒険者達はついていけない。ヴィヴィアン達はまた頭を抱える。


「どうした?」

「ギルガ、やっぱズガガガーとやってガスンとした方がよくねぇか?」

「そっちが良かったか。」

「ダメだ…この人達教えるのに向いてない。」


 2人の会話が意味不明過ぎてどうすればいいか分からない。


「シロン兄ちゃん、分からないのは僕の理解力がないからなのかな?」

「大丈夫だルーン。俺も分からない。」

「すみませんギルガさん。さっきの行動では分かりませんでしたのでもう少し言葉を変えて説明をお願いします。」


 少女に言われてギルガとヴァンガスは考える。しかし、全然言葉が出てこない。しばらく考えた結果…


「「サッとやってスッと済ませる。」」


 何一つ変わらなかった。


「全然ダメだー!」


 ヴィヴィアンが叫ぶ。すると、先程の少女が代わりに説明してくれた。


「え〜と…つまり、視界だけに頼らず音や空気の流れも敏感に察知し相手が動く前に対処する…ということでしょうか?」

「•••そんな感じか。」

「じゃねぇ?」

「ありがと〜!」


 少女の説明が分かり易いおかげで新米冒険者達はなるほどと理解した。ヴィヴィアンが泣いて少女に抱きつく。


「あなた、うちに来てくれない!?名前は!?」

「あ、アノマ•アシューです。」

「アノマちゃん!あなたを採用するわ!ワイルドビーストに来なさい!」


 ヴィヴィアンがアノマを勧誘する。ヴァンガスとギルガは自分の説明が上手く伝わってないのに気づかず互いの顔を見て首を傾げる。


「もしかしてよぉ…俺達、教えるの下手か?」

「かもしれんな。」

「かもしれんじゃなく間違いなく下手です!」


 ヴィヴィアンが断言した。2人がヴィヴィアンの剣幕に圧されていると突然アーマーエイプが襲ってきた。しかも、さっきよりも数が多い。


「本隊か!」

「来たぜ!さっさとやってみんなでパチンコ行くぞ!」

「それはお前だけだ!」


 真っ先に動いたギルガとヴァンガスが先頭にいるアーマーエイプ達を殴り飛ばした。


「いい機会だ!見て覚えろ!」

「結局これが一番楽で分かり易い!」


 2人がお手本としてアーマーエイプの群れを次々と倒していく。お互い目配せだけで意思疎通し連携をとる。それを見た新米冒険者達はさっきまでの教えるのが下手な2人とのギャップに驚いている。


「ヴィヴィアン!左右から来る奴はお前達に任せる!群れボスは俺とヴァンガスで倒す!」

「分かりました!」


 ヴィヴィアンが他のメンバーに指示して新米冒険者達を守る。ヴァンガスとギルガは群れの奥にいる傷だらけの他より一回り大きいアーマーエイプに突撃する。


「てめえがボスだろ!」


 ヴァンガスがアルカディア・バーンでボスアーマーエイプを攻撃する。ボスアーマーエイプはそれをジャンプして避けると棍棒で殴ってきた。ヴァンガスが棍棒を受け止める。


「やっちまえ!ギルガ!」

「言われずともやる。」


 ヴァンガスが止めたことで隙が出来た。そこにギルガがボスアーマーエイプの真上からフェンリルバイトで斬り裂いた。ボスアーマーエイプが雄叫びをあげて倒れる。それを見た他のアーマーエイプ達は慌ててボスアーマーエイプを担いで逃げて行った。


「これで当分の間人里に降りてくることはないだろ。」

「さすがマスター。」


 2人の活躍を見たヴィヴィアンや新米冒険者達は感嘆していた。


「今の凄かったです!」

「どうやったらお二人みたいに強くなれますか!?」


 新米冒険者達が次々と質問する。


「まぁ〜…とにかくモンスター殴れば強くなる。」

「言葉で言うより実戦経験つんだ方が手っ取り早いぞ。」

「ダメだ…やっぱりこと人達教えるのに向かない。」


 最後の最後まで頭を抱えるヴィヴィアンであった。

次回予告

競竜所で再びあの人達が…


「新製品のご紹介です!」

「却下!」

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