怪盗は夜に映える
前回のあらすじ
ケンとサリアによるカ◯オストロの城
「言っちゃったよ…」
「こ、ここは…?」
ヴィザルが起きると何故か知らない建物の屋根の上にいた。ここはどこだと周りを見ると誰か立っていた。目を凝らしてよく見る。すると、覆っていた雲が流れ満月が照らす。そこにいたのは怪盗カシオペアだった。
「なんで?」
「おっ…起きたわね。」
こちらに気づいたカシオペアが振り向く。彼女はなんか作業しているようだ。ヴィザルは起き上がり近付くと足に風魔法を纏った。
「待って。まず私の話を聞いてくれない。」
「なんですか?」
「あなたにお願いがあるの。」
カシオペアは向こうに聳える塔をチラッと見てヴィザルに見るように誘導する。
「私と一緒に怪盗しましょう。」
「なんで?」
「実は先に潜入した私の相棒が行方不明になっちゃって。捜して欲しいの。報酬はお宝の半分ってことでどう?」
「なるほどなるほど…確かに悪くないですね。」
「でしょ?というわけで交渉せいり…」
「だが断る。」
「なんで!?」
ドヤ顔で断るヴィザル。
「今フェルさんを捜している途中だしそもそも犯罪の片棒を担ぐつもりなんて無いですよ。」
「そのフェルトリーネがいるかもしれないのよ。あの塔に。」
カシオペアが塔を指差す。ヴィザルは目を丸くして塔を見た。
「そもそもここはザース城のてっぺん。あの子はザースの手の者に捕まって監禁されている可能性があるわ。」
「なんでそんなことを知ってるんですか?」
「怪盗の情報収集能力嘗めないでね。」
カシオペアは屋根にロケットみたいなのを設置した。狙いを定め発射させようとするもライターがなかなか点かない。
「炎魔法は?」
「使えないのよ。」
ヴィザルがカシオペアに近付く。カシオペアがなかなか点かないライターにイライラしているとロケットがコロコロと屋根を落ちていった。カシオペアが慌てて糸を引っ張ってなんとか止める。ホッとして手繰り寄せながらロケットを回収しようとする。
「これ、下まで落としちゃうオチだ。」
「止めて。」
上からヴィザルが覗いていると足を滑らせてカシオペアに激突した。
「え…」
「あ…こういうオチか…」
2人は屋根を走りながら落ちて行く。1番下まで来た瞬間、ヴィザルがカシオペアをお姫様抱っこしてジャンプした。
「ねぇ、これ途中何もないわよ。」
「あ…」
ヴィザルはヤバいと思い足に風魔法を纏わせて空中を蹴るように飛んだ。その勢いのまま塔の屋根に着地した。
「あ、あぶね〜!」
「これが出来るなら最初の私のくだり要らなかったわよね?」
「出来れば協力したくないので。」
結局カシオペアの手伝いをしてしまったヴィザルは溜息をついた。その瞬間、何者かの気配を察知した2人はジャンプして避ける。そこにものすごいスピードで何かが飛んできた。それはキュイイーンと音を出しながらいつの間にかいた男の両手に戻っていく。
「あれって…ヨーヨー?」
男が持っている物をカシオペアが当てる。男は両手のヨーヨーをスリープされている。
「お前が例のこそ泥か。」
「怪盗カシオペアよ。ちゃんと予告状出したでしょ。」
「あ〜、花嫁とレオナルド最大の作品をいただくってあれか。あんな物、すぐに捨てた。なぜなら…絶対成功しないからだ!」
男はヨーヨーを飛ばして攻撃する。2人は左右に避けるもヨーヨーはそれぞれ2人に向かって飛んでいく。ヴィザルが風魔法でヨーヨーを吹き飛ばす。しかし、ヨーヨーは普通じゃありえない軌道を描いて襲ってくる。しかも、突然ヨーヨーが燃え出したのだ。
「炎魔法を付与したのか。」
ヴィザルはジャンプして避ける。ヨーヨーは屋根を貫通して消える。しかし、すぐヴィザルの下から出てきて攻撃した。
一方のカシオペアは風を巻き起こしシールドを張って防いでいる。しかし、こっちのヨーヨーは突然雷を発生させカシオペアを攻撃した。
(ヨーヨーに雷魔法を纏わせてる!)
2人はヨーヨーを避けながら並んで立つ。男はヨーヨーを手元に戻す。すると、足踏みした。その途端、男に足元から大量のレールが敷かれ塔の周りを囲った。
「なかなか耐えるようだ。なら次はこれだ。」
男が笑うと足元から四駆がレールに乗って走り出した。その四駆から鮫の背鰭みたいな刃が出てくる。それがレールを走りながら襲ってきた。
「何これ!?」
「ヨーヨーだけじゃないんかい!」
「一芸だけじゃやっていけんのでね。」
男の声がする。どこだと捜すと刃のない四駆に乗った男がヨーヨーを振り回しながら襲ってきた。縦横無尽に襲ってくるヨーヨーと四駆に苦戦する。
「スケ◯ン刑事みたいな攻撃しやがって!」
「全然違うだろうがぁ!」
男はヨーヨーから刃を出して激しく回転させた。その一撃は2人にダメージを与えた。斬られたところを抑える。逃げ場が無い。ジリジリと追い詰められていく。
「まずくないですか?」
「大丈夫。こういう時のための作戦はある。」
「さすが逃足は一流の怪盗。」
「あんたを盾にする策もあるのよ。」
「すみませんでした。」
コソコソ話す2人に向かって四駆を走らせる。2人は避けながらコソコソ話す。さらに、ヨーヨーから刃を飛ばして攻撃する。それも避けながらカシオペアの作戦を聞く。
「いい?私達には立派な足がある。と、なればやることは簡単…」
「まさか…」
「逃げるのよ!」
「やっぱりか!」
2人は塔の屋根からジャンプして湖へと逃げる。男がヨーヨーから氷の槍を飛ばす。槍は2人に刺さるも致命傷にはならず逃げられる。2人は手を繋いで湖に落ちる瞬間に風魔法を放ち落下速度を減らして安全に着水した。
「逃げる脳があったか。」
取り逃がした男はそのままどこかへと消えていった。
湖から上がった2人は息をきらしながら仰向けに倒れる。
「つ、疲れた。」
「しばらくはここで休みましょう。」
ヴィザルが体を起こしてカシオペアをチラッと見る。その時、仮面が落ちて顔が見えた。ヴィザルは驚く。その顔は聖ヴァルキュリア百合女学園に留学していた頃担任をしていたヒスイだったからだ。
次回予告
謎の男と交戦したヴィザル達。その裏でもまた別の戦いが始まっていた。
「その前に怪盗カシオペアって…」




