ダフォン王制主義国
前回のあらすじ
行くぞ野郎共!
「とりあえずいろんな人に怒られてください。」
聖ヴァルキュリア百合女学園から出発して数時間後
一行はダフォン王制主義国の近くの国に到着した。今、ダフォン王制主義国は祭りで入国に制限がかけられセスナ機では入れなかった。そのため近くの国から船で向かうことになった。
「ダフォン王制主義国の祭りってどんな祭りですか?」
「簡単に言えばグリムの結婚式だ。」
アイリスが答える。ヴィザルは?を浮かべアイリスが見せたスマホの内容を読む。
グリムとベレドーナという国の大富豪との結婚式が盛大に開かれることになっていた。
「ここまで派手にするんですか?」
「この結婚は言わば政略結婚だ。ダフォンとベレドーナは長年争っていたが停戦の条件としてこの結婚式が決まったそうだ。」
「グリムさんの意思ゼロですね。」
祭りのことを話していると船がダフォン王制主義国の首都キングスに到着した。船を降りてグリムの家を探す。キングスは祭りで賑わっている。でも、賑やかにしているのは男性ばっかりで女性はそうじゃない。
「やっぱり男尊女卑の国なんてこんなもんかね。」
アイリス達がキョロキョロ見回す。すると、突然ライラが知らない男性に尻を触られた。悲鳴をあげ男を蹴り飛ばす。
「なんだよ。ちょっとしたお巫山戯じゃないか。」
「何がお巫山戯だ!完全に痴漢じゃないか!」
「痴漢?ああ、この国痴漢とかに関する法律ないから。男が女に何しても許される国だぞ。知らんのか?」
男の言い分にライラが反論しようとするとメシエが男の前に出た。
「申し訳ありません。私達は祭りを楽しみに来た観光客でしてこのような場所には慣れておりません。」
「なんだよ。じゃあ教えてやるからこっち来い。」
「すみません。私達は彼の許可無く離れることはできません。」
メシエはそう言ってヴィザルを見る。ヴィザルは驚いた表情でメシエを見る。男はヴィザルを見ると諦めたのか帰って行った。
「なんなのこの国。」
「我慢しろ。」
「グリム先輩…こんな国じゃ嫌になるのもなんか分かる気がする。」
一行はメシエを先頭にし街中を歩いている。すると、メシエが足を止めた。ヴィザル達も足を止めメシエが見つめる先を見る。一目で分かるほどの豪勢な屋敷だ。
「凄い御屋敷…」
「メシエさん、まさかここが…」
「ええ。グリム•ロックスノーツの実家。そして、ダフォン王制主義国有数の貴族ロックスノーツ家の御屋敷よ。」
ヴィザル達が驚いた表情で見上げる。The貴族という感じの広い庭にコの形をしたでかい屋敷には様々な装飾が施されていた。
ヴィザル達が見ていると庭にいた見張りがこちらに近づいてきた。
「お前ら!ここはゴルドウィン•ロックスノーツ様の御屋敷であるぞ!女は帰った帰った!」
「ここにお友達がいるのですが…」
「そんなん知るか!」
「何事かね?」
見張りが声を荒げて追い払おうとした時、見張りの後ろから上品なタキシードを着た男が現れた。いかにも貴族という見た目の男はヴィザル達を見て一瞥した。それにカーリーンは一瞬イラッとするもすぐに落ち着いた。
「私はアイリス•ウルト•メルキュリアス。聖ヴァルキュリア百合女学園生徒会長です。この度、グリムが結婚すると聞き学園を代表して来ました。」
「ほぉ…」
「ゴルドウィン様…」
見張りが男の名前を呼ぶ。この男がグリムの父親であるゴルドウィン•ロックスノーツだ。ゴルドウィンはアイリス達を見回すとヴィザルを最後に見て睨んだ。
「おかしいな。確か聖ヴァルキュリア百合女学園は女性のみと聞いたが?」
「彼は留学生です。」
「留学生だとしても女子校に男がいるのはおかしいのでは?」
「そこはご心配なく。ちゃんと許可はとっております。」
アイリスが答える。
「まぁいい。グリムの結婚式を祝いに来たと言ってたな。それはありがたいが…」
「いえ。祝いに来たのではありません。」
「ん?」
「私は正式な書類も無しに勝手にグリムを退学にしたことについて聞きにきたのです。」
アイリスがはっきりと言い切った。
「正式も何も親の命令を聞くのが子供の義務だ。私はグリムに退学するように命令したはずだが?」
「それを受理出来ないので来ました。」
「それはそっちの問題だ。やはり女はこういう時融通がきかん。」
「おい、それは女性差別じゃないか。」
さすがに苛ついたカーリーンが文句を言う。
「事実だ。それとダフォン王制主義国では女に権利は無い。男の命令は絶対だ。帰れ。」
そう言い残しゴルドウィンは見張りと一緒に屋敷に戻って行った。
「女に権利はない…か…」
「会長…」
「…興奮するじゃあないか!」
「あの、人選合ってます?」
「戦力面ではこれ以上ない人選なんですが…」
赤面させ身体をクネクネさせているアイリスにヴィザル達は若干引いていた。気を取り直したアイリスがこちらに振り向く。
「こういうことだ。簡単にグリムに会えるとは思ってない。だからこそ作戦がある。」
「いきなりまともになった。」
アイリスは周りに聞かれないようにコソコソ作戦を伝える。
その夜、庭にアイリスとライラが侵入した。誰にもバレないようにコソコソ移動する。
「グリムに会って直接話を聞くってそもそもどこにいるか分からないグリムをどうやって捜す?」
「大丈夫だ。ちゃんと考えてある。」
「じゃあさっきからレーダーに引っかかってるのも考えがあるのか?」
ライラが呆れて言う。そう、アイリスはさっきからレーダーに引っかかりまくっていた。その結果、見張りの兵士があっという間に2人を囲んだ。ライラが戦闘態勢に入ろうとするもアイリスはあっさりと手をあげ降参していた。ライラが唖然としている間に兵士達にあっさり捕まってしまった。
2人は下着姿で天井から吊るされている鎖に両手を繋がれてしまっていた。ライラがアイリスに文句を言う。
「会長、まさかこうなりたいから態と捕まったとかじゃないですよね?」
「半分ある。」
「会長!?」
「それと…来た。」
アイリスがニヤリと笑って正面を見ている。ライラも正面を見るとグリムが部屋に入ってきた。悲しそうな表情の彼女は2人の前まで近付く。
「会長、何故来たの?」
「会長…そう呼んでくれたってことはまだ学園に未練があるんだろ。」
アイリスの言葉にグリムは黙って回答する。そんなグリムを心配してライラが話しかける。
「なぁグリム。戻って来れないのか?」
「無理よ。昔から父の命令…いや男の命令は絶対だと育てられてきた。そのせいね。父や兄弟の命令に逆らえない。逆らったら罰のいう名の拷問が繰り返される。そう体に刻み込まれてるの。」
グリムが腕を抑えて震えていた。それを見たライラは黙って怒りを露にする。
「結婚式は明日、ゴードル教会で行われる。会長、出来たら一緒に来ているみんなにこう伝えてください。私のことは諦めて…と。」
「ヴィザルも来てるぞ。」
帰ろうとしたグリムの足が止まる。彼女の目には涙が溜まっていた。そこにゴルドウィンが現れる。
「何をしている。早く来い。明日の準備だ。」
「はい…」
グリムはチラッとこちらを見てゴルドウィンの後についていき部屋を出た。アイリスは扉が閉まるのを確認するとリラックスして体をほぐした。
「会長。」
「分かってる。第一段階は完璧。このまま見張りが陵辱すると思っていたが…」
「会長。それは止めてくれ。」
そう言っているライラも緊張が解けたのか壁に凭れかかり休んだ。
「さて後は明日か…頼んだぞヴィザル、みんな。」
アイリスはそう言ってあくびした。
次回予告
とうとう結婚式。
「結婚式と言えば…」
「あの有名な奴ですね。」
「え、何?」




