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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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嫌っていた相手にいきなりデレてしまうのは学園あるある

前回のあらすじ

ハプニング発生。


「というか起こしてますよね?」

 聖女祭

 それは乙女達の祭典。うら若き乙女達が年に一度年齢や身分などを気にせず楽しむ祭りである。しかし、今年の聖女祭は一味違う。何故なら…


「待てー!」

「ヴィザルー!一緒にデートしよー!」

「助けてー!」


 学園唯一の男子ヴィザルを巡って乙女達が狩人になっているからである。

 ガラスの靴を持って学園内を逃走するヴィザル。ヴィザルからガラスの靴を手に入れた者はヴィザルとデートできるというフェルトリーネのアナウンスに学園中の女子が反応した。

 ヴィザルは目の前にいる女子生徒達を確認すると横に駆けて別の廊下へと逃げる。一本道で女子生徒達が待ち構えていたら壁を蹴って彼女達の上を通り逃走する。


「ヴィザルン!デートしよう!」

「フェルさん!なんでこんなことしたんですか!?脚本全然違いますよ!」

「ヴィザルン、オリヴィエちゃんばっかりだもん。だから、ヴィザルンを一人占めしたい!」

「完全に利己的じゃないですか!」

 

 ヴィザルはフェルトリーネの手を避け廊下を転がりながら距離をとる。


「ヴィザルン〜、そんなに私とデートは嫌?」

「と、いうより他の人とデートしたらオリヴィエさんに何されるか。」


 ヴィザルは女子生徒達から逃げ続ける。自分の教室に逃げ込むとヴィザルはある事を思い付いた。

 しばらくス○ークみたいに隠密行動をしていると蛸みたいな触手が上から垂れてきた。おそるおそる上を向くと下半身が蛸の女性が天井に張り付いていた。


「初めまして。私は西妖族スキュラのキュラミーよ。あなたの裸を見せてちょうだい♥」

「なんかヤバい人来た!」


 ヴィザルはキュラミーの触手を避けながら走る。すると、ラーミャがこっちと手を振っていた。彼女の指示に従い部屋に入る。そこは更衣室だった。もちろん女子更衣室である。


「え?なんでここに呼んだんですか?」

「特別よ。あんたが騒乱の元凶だから熱りが冷めるまでここにいてもらうわよ。」

「いやいや、ここ女子更衣室じゃないですか。大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。私以外にいないし普段は使わないから滅多なことが起きない限りここがバレることは•••」

「ヴィザルー!」


 ラーミャが言い切る前にドドドドという足音と共にレミルが入ってきた。その後ろにはエリルやティアーやシャオン達もいる。


「レミィ、本当にここにヴィザルがいるのか?」

「う〜ん。匂いはしたのになぁ。」

「ヴィザル先輩は無断でこんなところにくる人じゃないと思いますよ。」

「どこだろう?」


 レミル達が更衣室の中を探している。ヴィザルとラーミャはというと…


「なんであなたも隠れてるんですか?」

「成り行きよ。」


 2人一緒に一番奥のロッカーに隠れていた。


「てか、何フラグ立てて即回収しているんですか。」

「知らないわよ。それよりもっと離れなさい。」

「無理です。」


 ロッカーの中で藻掻く2人。しかし、藻掻けば藻掻くほどラーミャの色んなところがヴィザルに当たる。


「これ、オリヴィエさんにバレたらロッカーごと真っ二つにされるか燃やされるか海に沈められるか…」

「ねぇ、それ私も巻き添えくらってない?」


 2人が話しているとエリル達は別のところを探しに行ったしかし、レミルはなかなか諦めずに更衣室内を探すしている。2人はなんとかレミルが諦めるまで耐えるしかなかった。すると、ヴィザルがラーミャに質問した。


「そういえばなんで男性を嫌うんですか?」

「汚らわしいからよ。」

「そんなグッサリとくるような答えがくるとは。」

「私が産まれた時にはもう父親の不倫で離婚した後だった。貴族だった父親と離婚したから母親は地位を失い貧しいながらも私を育ててくれた。でも、母親だけじゃ生活費がままならないから私も小さいながら仕事をした。仕事中、私が会った男は父親のような下劣で下品で野蛮な人ばかり。だから男がいないこの学園に頑張って入ったのに…」


 ラーミャは思い出したくないのか途中で口籠る。すると、レミルが突然、別のロッカーを開けた。


「いるかー!?いないなぁ。」

「あれ?これヤバくないですか?」

「聞かなくても分かるでしょ。かなりヤバイわ。」


 レミルがガタンと音を立てて開けたのにビックリしたラーミャはヴィザルに抱き着く。ヴィザルもラーミャを優しく抱擁する。ガタン、ガタンと次々とロッカーを開けていくレミル。そして、最後に2人がいるロッカーの前に立った。


「フッフッフ〜。ここかなぁ?」


 レミルがロッカーを開けようとする。その時、更衣室にグリムが入ってきた。入ってきた音にビックリしてレミルは開けるのを止め振り向く。


「あら、レミル。どうしたの?」

「グリム先輩!ヴィザル君がここに隠れていると直感しました!」

「ヴィザル君なら体育館で見たってフェル達が騒いでいたわよ。」

「え!?嘘!?」

「早く探しに行かないとデート取られちゃうわよ。」

「はい!」


 レミルは慌てて更衣室から出る。グリムが更衣室の扉を閉めると2人はロッカーから出た。


「た、助かった〜。」


 ヴィザルは安心したのかその場に座り込んだ。ラーミャはヴィザルに引っ付いたまま動かない。彼女も安心して腰が抜けてしまったのだ。ヴィザルが声を掛けようとするとラーミャは両手を伸ばしてヴィザルから離れた。下を向いたままこちらを見ない。


(初めて自分から男に抱き着いた。お、大きい。それに今までの男と違って優しい…)

「え〜と、大丈夫ですか?」

「ね、ねぇ。あんた、デートする相手に困ってるでしょ。」

「いえ、別に。」

「このままガラスの靴を取られたらその人とデートするわけよね?オリヴィエさん以外の人と。」

「あ…」


 すっかり忘れていたヴィザルがどうしようと考えているとラーミャがジト目で顔を赤らめて手を出した。


「だったら私に渡しなさい。そうすればさすがのオリヴィエさんも納得してくれるでしょ?」

「え?なんで?」

「い•い•か•ら!」

「その前にガラスの靴、ある場所に隠したままなんですよね。」

「え…」


 ヴィザルの言葉にラーミャは固まる。すると、ガチャリと扉が開きグリムが入ってきた。2人は固まったままグリムを見ているとグリムがニヤニヤしながらガラスの靴を2人に見せた。


「ヴィザル君、バッグの中に隠すのは悪手よ。」

「嘘…」


 グリムが小悪魔みたいに微笑む。2人は唖然としていたままグリムを見て渇いた笑いをするのであった。

次回予告

楽しい楽しい聖女祭の裏で何かが起こる。


「遊びてぇ〜。」

「仕事しなさい。」

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