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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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激戦の果て

前回のあらすじ

魔神ヴァルボロとの戦いが始まった。


「展開が急ですね。」

「そ、そう?」

 今、ヴィザルとバルドの前にヴァルボロがいる。以前、ニルガーナで出会った時は圧倒的なオーラに呑まれ動くことすら出来なかった。しかし、今は違う。二人は剣を失っても拳と蹴りでヴァルボロに対抗する。


「認めよう。お前達は強くなった。」


 ヴァルボロは両手の爪を伸ばし二人を攻撃する。それをバルドが受け止めヴィザルがジャンプしてヴァルボロの上をとり踵落としを決めた。


《ガイアグングニル•メテオ》


 ヴィザルの一撃を頭に受けたヴァルボロ。しかし、怯むどころか声をあげることなくヴィザルを弾き目を光らせた。その瞬間、ヴィザルが爆発し落下した。


「ヴィザル!」

「自分のことを心配したらどうだ?」


 ヴァルボロはそう言ってニヤリと笑うと再び目を光らせた。その瞬間、ヴィザルと同様にバルドも爆発し倒れてしまう。ヴァルボロはチラリと後ろを向く。そこでは地面に潜ろうとしているヴリドラシルをサリア達が妨害していた。


(やはり今のヴリドラシルにはキツいか。)


 ヴァルボロは囲んでいる蔦の一部を翼で斬り落とすとヴリドラシルの援護に向かおうとした。が、出る直前で足を止める。ヴァルボロが後ろを向くとボロボロになりながらも立っているヴィザルとバルドがいた。


「お前の相手は俺とヴィザルだ。」

「まだまだ僕達は倒れませんよ。」

「そうみたいだな勇敢な戦士よ。」


 ヴァルボロは二人の方を向くと再び目を光らせた。しかし、今度は二人同時に左右に飛び出し何もないところが爆発した。


「もう見切った。目から爆発させる何かを出しているだけだろ!」


 バルドがヴァルボロの顔にパンチしようと拳を突き出す。ヴァルボロはバルドの手を弾く。それでもバルドは前に進み何回でもパンチをする。ヴァルボロも対抗し取っ組み合いになった。


「ヴィザル!」


 バルドが叫ぶ。ヴィザルはヴァルボロに後ろに回り再びヴァルボロを蹴ろうとした。ヴァルボロは掌から鋭い針を出しバルドの手を貫いた。


「!」

「バルド兄さん!」

「いけぇ!」


 ヴィザルが心配するがバルドは手を離さずヴァルボロ

をその場に留めた。ヴィザルはバルドの言う通り躊躇うことなくヴァルボロの背中に風を纏った蹴りをくらわせた。


《ガイアグングニル》


 ヴィザルの必殺技をくらったヴァルボロはバルドから手を離す。バルドはすぐに距離をとって服を千切り止血を始める。

 一方、地面に潜って逃げるヴリドラシルは大量の魔人を出して時間稼ぎを狙う。バルウェイン達が魔人を蹴散らしヴリドラシルを攻撃するがヴリドラシルは構わずに地面に潜る。そして、大樹だけになった途端、その大樹が突然枯れ始めたのだ。


「!?」


 バルウェイン達が驚いていると大樹は枯れ塵となって消えて行った。


「逃したか。」

「••••」

「サリア?」


 アルティネがサリアに呼びかける。サリアは枯れて消えた大樹を見て憑き物が落ちたような爽やかな表情をしていた。


「父上•••」


 サリアを1人にしようとアルティネ達は離れる。その様子を見ていたヴァルボロは戦闘を止め蔦を破壊して空に飛んだ。


「逃げるのか!」

「目的は達成した。もうここにいる理由はない。いずれまた会えるだろう。その時に改めて勝負しよう。」


 ヴァルボロはそう言い残して空へと消えて行った。


「あの野郎。」

「バルド兄さん!血!血!」

「大丈夫だ。この程度じゃ死なねぇよ。」


 バルドの手を擦るヴィザルにバルドはくすぐったいのか手を引っ込め降りる。ヴィザルも後をついて行き降りるとケン達が迎えてくれた。


「よくやった。」

「逃げられましたけどね。」


 ケンに褒められ照れているヴィザル。

 ヴリドラシルが逃げたことを知ったジルフレイム達はホッと胸を撫で下ろした。


「良かった…ってあの怪盗いつの間にかいなくなってる!」


 ホッとしたジルフレイムが周りを見回して探すがカシオペアはどこにもいない。そのカシオペアは街の時計塔の屋根に立って様子を見ていた。


「ヴィザル君…また会いましょう。」


 そう言ってカシオペアは消えた。

 サリア達はなんとか魔神ヴリドラシルを撃退し平和が訪れた。しかし、まだ誰も知らない。この激戦の一部始終を魔王と呼ばれた存在が見ていることを•••

次回予告

日常回。


「大変!ケン様が〜!」

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