魔人を実らせる樹
前回のあらすじ
今までにない大規模なクエスト調査が始まった。
「この時が遂にきた。」
とうとう大樹が姿を現す。軽く100mは超えてそうな大きさに枝が全方向に伸び青々しい葉が生い茂っている。
「これが悪魔が宿る樹…」
「•••マスター、この樹から強大な生命反応を感知。何かいます。」
馬車から降りたヴィザル達は早速調査の準備を始める。バルウェイン達が報道陣を安全なところに移動させ学者達を護衛しながら大樹に近付く。
「忌々しいが懐かしくも感じる。本当に嫌な樹だ。」
先頭にいるバルウェインが苦虫を噛み潰したような顔で喋る。当時のことをよく知らないインドライガも彼の表情を見て察する。準備が出来たようで魔聖七天王、レジェンドドラゴン、オールドマギア、シルバーホークのメンバーが学者達と共に大樹に近付く。
その時だった。バルウェインが異変に気付く。何かの気配を感じたのか見上げた。インドライガ達も警戒して見上げるとさっきまでなかったはずの果実が大量になっていた。その果実は突如、一斉にバルウェイン達の周りに落ちる。
「戦闘態勢!」
バルウェインが構えると同時に学者達を遠ざけ戦闘態勢に入る。一瞬の静けさの後、果実から魔人が現れた。バルウェインは思い出す。あの時と同じ状況だということに。魔人が襲いかかってくる。しかし、バルウェイン達は一瞬で斬り倒していった。
「これが例の悪魔の樹。」
「そうだ。魔人を実らせる樹だ。」
他の魔人を一瞬で倒したインドライガが隣に並ぶ。その後ろをトールバスター達が守る。魔人はこちらを囲むように移動するとジリジリと追い詰めようとする。が、バルウェインの相手にすらならず一瞬で倒された。
「トールバスターは学者を安全な場所まで退避させろ。」
「了解。」
空けたところからトールバスター達が学者に逃がす。次々と落ちては生まれ襲ってくる魔人。しかし、10年前とは違い戦力も数を充実している今の状況なら普通の魔人レベルなら簡単に倒せる。
一通り魔人を倒すと果実が落ちてこなくなった。その隙に学者達を避難させる。すると、今までと違うドリアンみたいな果実がバルウェイン達の前に落ちてきた。
「来たか。」
バルウェインは一歩前進して剣を構える。そして、果実からあの時の全身からトゲが生えた真っ黒い魔人が姿を現した。
戦いが始まる少し前、アイアンガイアを含む他のクランは報道陣の護衛のために待機していた。サリアが早く行きたいという意思表示を示している。ヴィザルがサリアを落ち着かせていると聞き慣れた声が聞こえた。
「やっぱりヴィザルじゃん!」
「あれ?ガルム!?なんでここに?」
「俺もウルフチェインというクランに入ってるんだよ。そのクランにもクエストが来たんだ。」
「へぇ、ガルムってクランに入ってたんだ。」
「そこからかよ!?」
ガルムがガーンとしているとヴィザルのところにオリヴィエが来た。その後ろにはアルティネもいる。
「サリア、緊張してる?」
「まさか。早く前線に行きたいだけだ。」
サリアが答えた瞬間、大樹の方で戦闘音が鳴り始めた。バルウェイン達が魔人と交戦を開始したのだ。
「始まった。」
「サリア、落ち着けよ。」
「分かってる!」
サリアは剣を持ってソワソワしている。独断専行で行かないかケンが見張る。すると、戦闘音が徐々になくなっていった。
「音が…止んだ。」
「どうやら第一陣はなんとかなったみたいだな。」
ケンはバルウェイン達の勝利を信じているようだ。念のためと報道陣を下がらせるように指示しようとした。その時だった。ケン達の前に突如、ドリアンみたいな果実が落ちてきた。
「下がれ!」
ケンが刀を構えて報道陣を下がらせる。ケンはその果実を知っていた。いや、忘れるわけがなかった。その果実から全身からトゲが生えた真っ黒い魔人が姿を現した。
「あいつか…」
「•••そうだ。」
魔人は両手から剣を出す。ゆっくり、ゆっくりと近付いてくる。こちらを確認する。そして、いきなり口から光線を吐いた。ケンが光線を弾こうとすると目の前にバリアが張られ光線を防いだ。
「安心してください。後ろは私達が守ります。」
ケンが振り向くとハリアーがニコッと笑っていた。
「そうだな。落ち着かないといけないのは俺の方だったな。」
「はい。みんなでいきましょう。」
ケンの隣にヴィザル達が並ぶ。報道陣はアルティネ達が避難させている。今、サリア達アイアンガイア全員で魔人に挑んだ。
次回予告
とうとう目の前に現れる魔人。ヴィザル達は全力で魔人を倒す。もうサリアを悲しませないためにも。
「私は大丈夫だ。」




