悪魔の宿る樹
前回のあらすじ
エリオンズ姉弟と一緒に遊園地デート!
「デートじゃないです!」
ヴィザルが完治した翌日。
いつものようにサリア達はぐーたらしていた。それをウズメほ呆れた顔で見ている。
「このクランって普段はこうなのか?」
「なかなかクエストが来ないからみんな暇してるんだ。」
「最近来たのだって迷子の猫探しに迷子の犬探しに迷子の子供探しに迷子のドラゴン探しにテロリスト撲滅に邪教壊滅ぐらいだからね。」
「途中から凄いクエストが入ってましたけど。」
ウズメはどうすればいいのか分からず立ち尽くしているとジルフレイムがメタルバンドに入ってきた。
「サリアいる?」
「何?」
「あんた達へ依頼よ。」
「内容は?」
「謎の大樹の調査よ。」
その言葉にサリアは飛び起きる。
「?」
「おいそのクエストまさか•••」
「そう。10年前にサリアの父親で前アイアンガイアマスターのゼウラル・へラクロスが最後に受けたクエストだ。しかもそのクエストはゼウラルの死によって中断された上にその大樹すら消息不明になった。」
「そう。その大樹が突然トリネコ地方に出現したから調査して欲しいって依頼がカブジナにきたのよ。」
ジルフレイムが概要を説明する。当時のことはサリアとケン以外誰も知らない。気になったヴィザル達が聞こうにもサリアは今まで見たことないぐらい真剣な表情をしているので聞き難かった。そうこうしているとサリアは依頼書を持ってジルフレイムに突き付けた。
「このクエスト。私も受ける。」
「やっぱり。止めても無駄だと思った。」
ジルフレイムはため息つくと受注したことをギルドに報告するためにメタルバンドを出て行った。ヴィザル達が聞き辛くなっているのを感じたケンがサリアに説明を求める。
「サリア。そろそろクエストについて話した方がいいだろ。」
「そうだな。話そう。」
サリアは元の席に座って話し始めた。
「私の父ゼウラルが最後に受けたクエスト。当時私はそのクエストに参加出来なかった。参加したのは今はグレイアストロンに所属しているケイロン達とケンだけ。」
サリアの口が閉じてしまい話せなくなった。彼女の代わりにケンが話す。
「内容は突如出現した謎の大樹の調査。その時はゼウラルさん含むアイアンガイアのメンバーと魔聖七天王のバルウェイン、フレアガルドだ。」
ケンは昔話を話し始める。サリアにも話してない昔話を…
当時、アイアンガイアのマスターだったゼウラルとバルウェインが先頭となって大樹に向かう。大樹が見えてくると皆息を呑んだ。大樹の大きさは軽く100mを超え至る所に見たことない果実が実っていた。
「こんな木が1日で出来るわけないですよね?」
「ああ。だが何者かが意図的に植えたとしてもとてもじゃないが無理だ。お前もそう思うだろ。」
「そうだな。大きさを変える魔法や成長を促進させる魔法ごあれば不可能とは言い切れないがそもそもそこまでする動機が分からない。」
バルウェインの隣にいる男、彼こそがサリアの父親でアイアンガイアのマスターを務めているゼウラル・へラクロスだ。彼は意見を述べるとケンとケイロンに目配りして大樹に近付いた。すると、突然林檎に似た果実がゼウラル達の前に落ちてきた。
「!」
すぐに警戒態勢に入る。すると、林檎が割れ中から魔人が現れた。魔人はゼウラルを見ると突然襲ってきた。しかし、ゼウラルは焦ることなく剣を抜き一瞬で魔人の首を斬り飛ばした。
「あ、あれは?」
「魔人。まさか、あれ全てが魔人か。」
ゼウラルが見上げる。その時、次々と果実が落ちてきた。林檎の他に葡萄やメロンに似た果実が落下すると中から魔人が現れ襲ってきた。ゼウラル達はすぐに応戦する。
「ケリュネ!国に報告!大樹から魔人が出現!すぐに軍隊を派遣しろ!」
「はい!」
ケリュネはゼウラルの指示でその場から離れる。次々と落ちてくる果実。そこから現れる魔人。本来なら苦戦するところだがゼウラル達はあっさりと魔人を倒していく。そして、最後の魔人を倒すと果実は落ちてこなくなり静かになった。
「この木、魔人を作り出す能力を持っているのか。」
「すぐに焼き払いたいところだがどうやって焼くこれ?」
フレアガルドが大樹を見上げたままバルウェインに話しかける。その時、また果実が落ちてきた。再び下がって警戒する。今まで落ちてきた果実にはなかったドリアンに似た果実。それが割れると今までとはオーラが違う真っ黒い魔人が姿を現した。
「あ〜、なんか分かるわ。あれ、絶対ヤバい奴だ。」
全身からトゲが生えた魔人はこちらを見るといきなり口から光線を吐いた。フレアガルドが前面に氷でバリケードを作るがそれを破壊して吹き飛ばす。
魔人は首をコキコキ鳴らすと両手から鋭い剣を出して突撃してきた。それをゼウラルとバルウェインが受け止めた。
「下がれ!こいつ、さっきまでの魔人とは違う!」
「ケイロン!お前達は負傷者を守りながら撤退しろ!」
「マスターは!?」
「こいつを食い止める!」
ゼウラルが魔人の剣を弾く。そこにケンが接近し魔人に一撃を与える。
「《螺旋閻魔》!」
「《ガラティーンブレイカー》」
「《雷帝の怒り》」
ケンの技に合わせバルウェインとゼウラルも技を放ち魔人を攻撃する。魔人は下がって蹌踉めく。そこに追撃する。が、魔人の尻尾が突如伸びケンとバルウェインを貫いた。
「!」
「まだ残していたか。反省せねば。」
ケンはバルウェインに突き飛ばされたため脇腹で済んだがバルウェインは腹を貫通していた。ケンがとっさに尻尾を斬りバルウェインを魔人から離す。
「すまない。」
「まだ死んではいない。」
「ケン!バルウェインを連れて撤退だ。」
「マスターも撤退しましょう!その魔人相手に1人で…」
「俺がここを離れたら誰がこいつを足止めするんだ。」
ゼウラルは1人で魔人と相手するつもりだ。魔人は全身のトゲを飛ばして攻撃する。ゼウラルは自身の周りに雷を発生させトゲを撃ち落とす。ケンも加勢しようとすると突然目の前に氷の壁が現れた。
「ゼウラルさんの命令だろ。行くぞケン。」
ケンの後ろに頭から血を流しているフレアガルドとケイロンがやってきた。ケンは氷の壁を破壊しようとするもゼウラルの命令を守って撤退した。
「•••ここまでが俺の知っているところだ。あの後、討伐隊を組織して向かったら無残な姿のゼウラルさんだけがいて大樹は跡形もなく消えていた。」
「なぁケン。なんでその話を今までしなかったんだ?」
ケンが話を終えるとサリアがケンに詰め寄る。
「話せるわけないだろ。こんな結末。当時のお前には酷過ぎる。」
「それでも知りたかった。」
「知ってどうする?」
「決まってるだろ。仇討ちだ。」
サリアは自分の部屋に戻る。そして、戻ってけるとその手には剣が握られていた。その剣はケンが話していた中に登場したゼウラルが使っていた彼の形見となった剣だ。
「止めるなよ。私は絶対行く。」
「止めねぇよ。あの時話さなかったのはまだお前が弱かったから。今は違う。」
ケンがサリアに周りを見るように促す。サリアはケンの周りを見る。そこにはやる気満々のヴィザル達がいた。
「サリア、さっきの言葉に1つだけ間違いがある。私じゃない。私達、だろ?」
「•••そうだな!」
サリアは頷く。ヴィザル達も準備を整えいざ大樹調査及び討伐クエストに向かうのだった。
次回予告
悪魔の大樹を討伐するため出発したアイアンガイア。他のクランと共に大樹の調査及び討伐を開始するが目の前に突如何者かが現れる。
「サリアの過去にけりをつける。」




