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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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革命の日

前回のあらすじ

ヴィザルの心に決めた。例えそれが間違った選択だったとしても彼はタルタロスを救いたいと願う。


「それでも僕は•••」

 革命前日

 ヴォルネスト城地下から何かを殴る鈍い音がした。その音を辿ってみると拷問部屋でジーガンが拷問を受けていた。両手両足を折られ全身痣だらけになっていた。殴っているのは屈強な身体をした大男だった。その後ろにはニヤニヤしているシュライヤと目を反らしている青年がいた。  

 殴っているのはシュライヤの弟で次男のエンジン•ネスト•オーグバーグ。目を反らしているのは三男のウェイル•ネスト•オーグバーグだ。


「さっさと吐けよ。革命とかほざいてる馬鹿共に情報流してんだろ?」

「•••」


 エンジンが執拗に殴るがジーガンは笑っているだけで情報を一切吐かない。実はジーガンだけではなくウェイルも革命軍に情報を流していた。そのことがバレれば彼にも危害が及ぶ。そのためジーガンはあからさまな態度をとって疑いを自分だけに向けていた。


「吐かねえなら仕方ない。」


 すると、シュライヤは拳銃を取り出してジーガンに向けた。


「じゃあ死ね。」

「フッ。残念です。あなた達が処刑されるのを生で見れなくて。」

「!」


 銃口を向けられた瞬間、ジーガンは細目を開け笑った。シュライヤはイラッときて引き金を引いた。バァンという音と共にジーガンの頭を弾丸が貫通しジーガンは息絶えた。

 その瞬間を見ることが出来ずウェイルは目を反らして瞑る。そこにギラージェがやってきた。


「結局何も話さず死んだか。」

「親父。」

「それで他のドブネズミはどうなった?」

「どいつもこいつも何も吐かずに死んだぜ。」


 エンジンがムシャクシャしながら喋る。シュライヤもイライラしながらギラージェにヴィザルの行方を聞く。


「俺の顔を蹴りやがったクソ野郎はどうなってる!」

「その少年はおそらく革命軍にいるでしょう。丁度いいじゃないですか。」

「何が!」

「シュライヤの顔を蹴り飛ばしたのを大義名分として奴ら捕らえ処刑すればいい。カブジナには革命軍に殺されたと言えばいい。」

「なるほど。さすが親父。」


 シュライヤもエンジンもギラージェの提案にのり不敵な笑みをこぼしていた。


 そして革命当日ガテレンの城壁の周りに1万を超える革命軍が囲んでいた。内部では既に潜入していた革命軍や協力者達によって住民の避難が行われていた。


「避難完了しました。」

「よし。」 


 兵士がガルドに報告する。城壁の前にはギラージェ軍の戦車が並べられて大量の兵隊もいる。それに対しこちらはライフルなどの銃火器はあるものの戦車などない。


「あんなに戦車を買い込んでいたのは情報通りだな。」

「圧巻ですね。」

「あれとまともに交戦する必要はない。目的はギラージェとその一派の暗殺。生かして捕らえる必要はない。」


 ガルドが仲間達を鼓舞する。


「我々は今までギラージェによって圧政を強いられてきた!その支配に今日俺達が終止符を打つぞ!」


 革命軍の志気は充分。みんなやる気満々だ。しかし、ヴィザルだけ浮かない顔をしている。タルタロスを殺したくない。けど、自分はタルタロス討伐に参加出来ない。

 そんな時にケンの一言を思い出す。それを何度も復唱して遂に決心する。

 そして、静かな時が過ぎ緊張が高まった瞬間、ガルドの号令と共に革命軍が動き出した。帝国側も戦車や魔法で応戦する。


「突撃しろぉ!」


 ガルドが先頭を突っ走る。戦車部隊もガルドを狙っている。そこに潜入していた革命軍が後ろから爆弾や魔法で攻撃し戦車を次々と破壊する。その結果戦車部隊は大混乱していた。


「よし。このまま進むぞ。」

「おいおい。相手全然統率とれてねぇじゃねぇか。」

「元々ギラージェ政権に反発している者達だ。元からこちらと志気が段違いだ。」


 統率がとれなくなり散り散りになった帝国軍を蹴散らしガテレンに突入する。長年裏工作を進めてきたのかスムーズにギラージェ達がいるヴォルネスト城に向かうことが出来ている。


「ここから隊を分ける。俺達とケンはタルタロスを殺す。ヴァンガス達は仲間の救出。あとは邪魔者を排除しろ。」


 ガルドが命令すると皆散って与えられた仕事に向かう。ヴィザルはフレイダ達と一緒に邪魔者の排除する隊にいた。ヴィザルの隣にオリヴィエとフェルトリーネもいる。すると、スキンヘッドで狙撃銃を構えている男がこっちにきた。


「ボスから聞いてるぜ。あのシュライヤを蹴り飛ばしたって?なかなかやるじゃねぇか!」

「えっと•••」

「おっと悪ぃ。俺はケイン。お前達と同じ部隊だ。よろしく!」

「は、はい。」


 ケインはヴィザル達に自己紹介と挨拶を済ませると狙撃場所を探してどこかへ行った。ヴィザル達は静かになった町中を走りながら帝国兵を倒していく。


「本当に避難完了してる。」

「この町は元々ある魔神に空襲されたことがあるからどの建物にも地下室があるの。みんなそこで待っていてもらってるわ。」


 フレイダが説明してくれた。ヴィザルは帝国兵を倒しながらタルタロスを探した。


 一方、タルタロス討伐隊のガルド達はヴォルネスト城に向かっている。すると、他の帝国兵とは違う雰囲気を纏った男が現れた。


「俺はエボルハントが1人ダイビット!貴様らなどこの全てを燃やす神の炎で•••」

「邪魔。《螺旋閻魔》」


 ダイビットが炎を出そうとした瞬間、ケンが一瞬で倒した。そのまま前にいる帝国兵も薙ぎ倒しながら進む。その時、空から無数の氷柱が襲ってきた。ケン達はとっさに防御や破壊で対応する。すると、ケン達の前にタルタロスが降りてきた。背中に生えている翼を消すとタルタロスはこちらを見て少し笑った。


「やっぱりこうなったか。」

「タルタロス。貴様を殺さねばこの革命は終わらない。今日、ここで死んでもらう。」

「分かっている。俺がそういう奴ってことは。そうだろ?元帝国軍第2騎兵隊隊長ガルド。」


 ガルドとタルタロスが会話している。その隙にケンやウズメ達がタルタロスを取り囲む。帝国軍はタルタロスの勝利を信じているのか。将又ただタルタロスの強さに心酔しているのかは定かではないが一切戦闘に参加しようとしていない。


「始めよう。」


 いや、参加出来ないからかもしれない。何故ならタルタロスの攻撃に巻き込まれてしまうからだ。タルタロスは巨大な炎で辺り一面を焼き始めた。

 逃げる帝国軍。竜巻を作り上昇気流で炎を巻き上げ被害を最小限にしたガルド。それに合わせて両サイドから先制攻撃を仕掛けるケンとウズメ。

 二人の攻撃が戦闘開始のゴングとなった。タルタロスが二人の攻撃を受け止めると次々と革命軍が魔法で攻撃した。タルタロスはケンを突風で吹き飛ばしウズメをアドラメレクで攻撃する。ウズメが避けると他の革命軍が剣を持って接近戦を仕掛ける。しかし、タルタロスはギロチンレッグで次々と斬り殺していった。

 すると、今度はタルタロスの頭部に数発の弾丸が命中した。狙撃だ。しかし、弾丸はタルタロスが瞬時に出したシールドで全て防がれてしまった。


「そこか。」


 タルタロスは狙撃位置を特定すると左手の人差し指と中指を立てて銃のような形にするとそこから魔法の弾丸を発射した。


「《パンプキン》」

「クソっ。やはり安易に攻撃出来ねぇ。」


 弾丸はケイン以外の狙撃手の頭に命中し一瞬で絶命させた。ケインは陰に隠れ逃走する。タルタロスは狙撃した後すぐにケンの刀を自身の身体を硬化させて防いだ。そこに甲冑をきた大男が大斧を振り下ろしてきた。タルタロスはすぐに身体を回転させて避けると大男の腹に手を当てた。すると、大男は苦しみ出し倒れた。そして、腹から大量の蟲が皮膚を喰い破ってワラワラと出てきた。


「何した?」

「体内に蟲を召喚させただけだ。」

「中々エグい方法を使うんだな。」

「うちの帝王のお気に入りの処刑方法なんでね。」


 ケンとタルタロスが切り合う。そこにガルドが地面から土で生成した拳を使ってタルタロスを殴った。タルタロスもすぐに防御するがその一瞬の隙を付きウズメがタルタロスを切った。タルタロスも避けたため腕に少し切り傷を付けただけだった。すると、ウズメ達はタルタロスから距離をとった。


「•••毒か?」

「そうだ。呪毒と呼ばれる猛毒だ。」


 ウズメは刀に毒を塗っていた。それを切った時に体内に流した。しかし、タルタロスの身体に異変が起きない。


「毒もだめか。」

「そういうこと。俺は常に自身にあらゆる状態異常を防ぐ魔法をかけてる。」


 タルタロスは両手から鞭を生成し振り回す。鞭は剣や魔法、人体を斬り裂いて一瞬で地獄を作り上げた。ケン達も避けるが攻撃を受けてしまい流血する。

 タルタロスは鞭を仕舞い追撃しようと腕を伸ばした。その瞬間、タルタロスの前にヴィザルが現れた。

次回予告

ヴィザルVSタルタロス再び


「もう迷いません。」

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