守る者
前回のあらすじ
立ち寄った教会でヴィザルはタルタロスと出会ってしまう。
「まさかここで会うことになるとはな。」
「な、なんで•••」
ヴィザルは驚きのあまり声を失った。目の前にタルタロスがいるのだ。タルタロスもヴィザルに気が付くとフッと笑いドーナツが入った箱をエリュシオンに渡した。
「少年、ちょっと二人で話さないか?」
タルタロスは気軽に声をかけてくる。そのまま教会を出て行く。ヴィザルは警戒しながらもタルタロスの後をついて行く。すると、誰かのお墓の前でしゃがみ黙祷した。お墓には”ミノス•シオン•メルクリウス“と刻まれている。
「その人は?」
「ミノスばあさん。数年前に亡くなったここのシスターだ。」
「もしかして、その人もあなたが••」
「いや、老衰だ。もう96歳だったからな。」
「あ、そうですか。」
お参りを済ませたタルタロスはヴィザルと一緒に教会の中を見る。エリュシオンや子供達が楽しそうに会話しながらドーナツを食べている。
「娘さんいたんですね。」
「ああ。」
「なんで死んだことにしているんですか?」
「守るためだ。もし、俺に娘がいることを知られたら憎悪の矛先がシオンに向く。それだけはどうしても防ぎたかった。」
タルタロスはこちらを向いて笑顔で手を振るエリュシオンに反応して手を振り返した。
「殺されるべきは俺だ。シオンに罪は無い。」
「じゃあなんで処刑人なんて馬鹿げたことを?」
「最初はただの用心棒として雇われた。しかし、あの処刑好きの皇帝が俺を気に入って処刑人に任命した。」
タルタロスは話がエリュシオン達に聞かれないように移動する。ヴィザルも剣に手をかけ警戒したまま後をついて行く。
「今この孤児院にいる子達の中には親を俺に殺された子もいる。俺は自分が死ぬべき人間だと自覚している。が、俺は死ぬつもりはない。シオンを守るために死ぬわけにはいかない。」
「お母さんはいないんですよね?」
「そうだ。セルピネは数年前に病気で亡くなった。だから、俺にはシオンしかいない。」
「1つ質問いいですか?」
「なんだ?」
ヴィザルも周りを確認してタルタロスに聞く。
「何故オルトリンク王は急死したんですか?」
「ギラージェ王が暗殺したからだ。」
「!」
タルタロスのカミングアウトにヴィザルは予想ほしていたが驚愕した。
「オルトリンク王が飲んだ紅茶に毒が入っていたらしい。それを長い間摂取した結果衰弱死してしまった。」
「知っていたんですか?」
「それを知ったのが俺が処刑人とそて活動している時だった。偶然聞いた。国を乗っ取るためにやったとな。」
ヴィザルの質問に答えたタルタロスは教会に入りエリュシオンと会話を交わす。しばらくして会話を済ませたタルタロスが教会を出てヴィザルの前にきた。
「俺はギラージェ王を恨んでいる。けど俺は帝国が勝つように動くつもりだ。」
「今から革命軍につくことは出来ないんですか?」
「革命が成功した世界に俺の居場所はない。」
そう言ってタルタロスはヴィザルに向けて氷の刃を飛ばした。ヴィザルはとっさに避けタルタロスから距離をとって剣を構える。
「油断したつもりはないがバレてしまったからには仕方がない。俺とシオンの関係を知られた以上口封じするしかない。」
「僕も負けられない理由があります。」
最凶最悪の処刑人と呼ばれたタルタロス相手にヴィザルは1人で挑むことになってしまった。
次回予告
たった1人でタルタロスと戦うことになったヴィザル。タルタロスの圧倒的な力の前に為す術もなく蹂躙される。
「次回、ヴィザルVSタルタロス。」




