ヴィザルが蹴る
前回のあらすじ
帝国の闇を知ったヴィザル達。腐敗した国を変えるため革命軍に協力することになる。
「革命の灯火は消えていない。」
時は遡る
ヴィザル達が処刑を見た後
処刑を終わらせたラダマンティス、通称タルタロスが城の廊下を歩いている。すると、前から貴族らしき男が拍手しながら近付いてきた。
「今回の処刑も良かったよタルタロス君。」
「ありがとうございます。」
「でもここ最近火刑ばっかりだねぇ。今度は斬首刑がみたいなぁ。血が飛び散る光景がみたいねぇ。」
「まぁ、こちらとしては死体処理が楽で助かるがね。」
「えぇ。」
貴族の男の後ろに白髪の老人と糸目の男性がやってくる。貴族の男はギラージェの息子の1人シュライヤ、白髪の老人は宰相のダノン、糸目の男は宰相補佐のジーガンだ。
「タルタロス君。今日のパーティには出席するのかな?」
「いえ。そんな気分ではないので。」
「そうかい。折角いい女をカブジナから取り寄せたってのに勿体ない。」
「興味ありません。」
「そうかい。」
シュライヤは手を振って去って行く。ダノンとジーガンも後をついてどこかへと行った。誰もいないことを確認したタルタロスはポケットからロケットを取り出すと開けて中に入っている写真を見ていた。
その夜、ギラージェ主催のパーティに参加することになったヴィザル達。用意されていたタキシードやドレスを着て向かうがドレスは露出が多くサリア達からは不評だった。
「これ絶対やらしい奴が製作しただろ。」
「下心が丸見えね。」
文句を言いながらもパーティ会場に入るサリア達。中に入るとジーガンと会話していた女性がこちらに近付いた。彼女はガルド達革命軍側の協力者だ。彼女はガルドからサリア達のことは聞いているためニッコリと笑って近付き挨拶した。
「初めまして。私はレンシェ。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
サリア達もガルドから協力者の話は聞いていたためすぐに打ち解けた。すると、ヴィザルがモゾモゾし始めた。
「•••マスター、小ですか?大ですか?」
「マキナ、はしたないからここでほ言わないで。」
「トイレなら私か案内しましょうか?」
ヴィザルとマキナの会話を聞いたのかジーガンがやってきてヴィザルをトイレに案内した。マキナも一緒についていく。
「ジーガンさん。」
「なんですか?」
「辛くないですか?」
「いえ。この国を思えばどうってことはありません。」
実はジーガンも革命軍の協力者であり帝国が不当に搾取した金を密かに民に返していたのだ。
「もしバレたら。」
「大丈夫。あなた達のことは一切喋りません。」
ジーガンはこちらを向いて人差し指を口に当てる。すると、気配を感じたヴィザル達が前を向く。そして、顔を強張せた。前にタルタロスがいたのだ。
「どうした?」
「タルタロス様。彼がトイレに行きたいと言うので案内しているところです。」
「そうか。早く戻れよ。衛兵に見つかると面倒だぞ。」
「はい。」
ジーガンが会釈してその場を乗り切る。タルタロスはヴィザルを一瞥すると横を通り過ぎどこかへ行った。
「す、凄いプレッシャー。あれがタルタロス。」
「ええ。革命のために一番倒さないと行けない相手です。」
「でもなんか思ってたのと印象が違うというかなんというか普通の人って感じがした。」
「私もです。タルタロスは何かを隠している。根っからのクズとは何か違うのも確か。だけど、タルタロスが罪無き者達を殺しているのも事実。それだけは忘れてはいけません。」
そう言ってジーガンはヴィザルをトイレに案内させた。
一方、会場ではギラージェが演説している。かなりの巨漢でいかにも高価そうな服や宝石を身に着けていた。
ギラージェの演説を無視して飲み食いしているサリア達。しかし、場所が場所なため楽しめていない。
「緊張する。」
「とにかく私達が革命軍と一緒にいるってのをバレないようにね。」
「止めてください!」
サリア達がヒソヒソ話しているとオリヴィエの叫び声が聞こえた。何事かと振り向くとオリヴィエがシュライヤにナンパされていた。
「なんでだい?俺と付き合えば金も自由に使える。好きなものが買えるんだぜ。俺のものになって損はないだろ?」
「私には婚約者がいますので。」
「その婚約者なんて大した奴じゃないだろ。俺の方が絶対気持ちよくさせてやるからよぉ。」
しつこくナンパしているシュライヤにケンが近付いて行くと近くに居た貴族の男がケンを止めた。
「止めといた方がいいぞ。あの方はギラージェ様のご子息シュライヤ様だ。気分を害したら処刑だよ。」
「だからって見捨てろと?」
「待って。」
ケンが振り払おうとするとレンシェがケンの腕を掴んだ。ケンがレンシェの手を振り払おうとする。それでもギュッと掴んだままレンシェはケンに近付き小さい声で囁いた。
「お願い。今は我慢して。じゃないと革命に支障が出てしまう。彼女は後で絶対助けるから。」
レンシェの手が震えている。彼女もシュライヤの横暴に対して何も出来ないことを悔しがっていた。衛兵達に止められていたアルティネやサリア達も下手すれば今後の革命に支障が出る可能性があるため何も出来なかった。すると、ヴィザル達が会場に戻ってきた。ヴィザルはオリヴィエに無理矢理キスしようとしているシュライヤを見た瞬間、走り出しシュライヤの顔面に飛び蹴りをくらわした。
「!」
シュライヤを蹴り飛ばしたヴィザルはオリヴィエの前に立った。しかし、とっさのことでやったにしても自分がしたことを冷静に考えるとヤバいと知ったヴィザルは汗だくになっていた。
「あ、あのすみません。お、オリヴィエさんは僕の婚約者なので•••」
「ヴィザル君•••」
(((よくやったヴィザル。)))
静まり返る会場、驚愕し戦慄する参加者達、顔を赤らめるオリヴィエ、小さくガッツポーズするサリアやアルティネ達、そして顔を押さえこちらを睨むシュライヤ。
「何のつもりだ貴様。この俺が誰か分かってんのか?」
「あははは、お偉いさんですよね?」
「そのお偉いさんの顔を蹴るとはどういう了見だぁ?」
「あはははは、僕、NTRに興味ないのでごめんなさい!」
ヴィザルはオリヴィエをお姫様抱っこして逃走した。激怒したシュライヤが衛兵にヴィザルを捕まえるように命令する。シュライヤの怒りはサリア達にも向く。
「あれ、てめぇの部下だろ。部下の躾も満足に出来ねぇのかぁ!?」
「あ〜、うち基本自由主義なので。」
サリアがそう言って逃走する。それに合わせてケン達も会場を出た。
「殺せ!特にあのクソガキの首をはねろ!」
シュライヤは蹴られたところを擦りながら命令する。そこにギラージェがニヤニヤしながらやってきた。
「なんだ親父?」
「これは丁度いい。処刑する口実が出来たではないか。」
「ああ。」
シュライヤもニヤリと嗤う。周りにいるギラージェ派の貴族達も処刑を楽しみにしているのか嗤っていた。すると、ギラージェは手を鳴らした。すると、そこにタルタロスが現れた。
「タルタロス。見ていたのだろう。男は皆殺し、女は生け捕りにしなさい。」
「分かりました。」
タルタロスは頭を垂れ消えて行った。
次回予告
追われる身となったヴィザル達。なんとかして逃げようとするもタルタロスがヴィザル達の前に立ちはだかる。
「次回、ヴィザル達vsタルタロス。」




