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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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タルタロス

前回のあらすじ

帝国の裏の顔を見てしまったヴィザル達のところにウズメという少女が現れる。彼女は帝国の現状をヴィザル達に教えると言ってどこかに連れて行った。


「ヤバい。今までで一番シリアスな展開になりそう。」

 ヴィザル達はウズメの案内で裏路地にある古びた書店に入った。ウズメは書店に入るとカウンターにいる老人に近付いた。


「いらっしゃい。」

「オルトリンクの歴史が知りたいのだけど。」

「それなら奥の赤い本棚の左上にある茶色い本がそうですよ。」

「ありがとう。」


 ウズメはお礼を言って奥に行き言われた通りの本を見つけその本を押した。その瞬間、本棚が扉のように開き地下へと続く階段が現れた。


「来て。」

「俺はサリアとアルティネを待つ。後で合流しよう。」

「そう。分かったわ。」


 ケンと一緒に待つと言ったヴィーナを残しヴィザル達はウズメの後をついて行く。しばらく歩いているとウズメが天井の扉を開けて外に出た。ヴィザル達も一緒に出るとそこは墓場だった。

 無数の墓石が草原にいっぱい立ち並び悍ましい雰囲気を漂わせていた。


「こ、ここは?」

「この国に殺された人達の無念の場よ。」


 ウズメは墓場に驚愕するヴィザル達を引き連れ近くの森に入りまたしばらく歩いた。すると、今度は険しい崖の中腹に明らかに人工で出来たコンクリート製の建物が見えた。


「あれはなんだ?」

「ようこそ。革命軍本部へ。」


 ウズメはそう言ってヴィザル達を本部に連れて行く。しばらく歩いてある部屋の前に着くと扉を開けた。そこには複数の人達とリーダーらしき傷だらけの犬の獣人の男がいた。


「ウズメ、そいつらは誰だ?」

「ボス、彼らはカブジナから来たクランの人達よ。共に帝国と戦ってくれる人達。」


 ボスはヴィザル達を一通り見るとニヤリとし立ち上がりちかてきた。


「ウズメがそう言うのなら間違いないだろう。ようこそ革命軍本部へ。俺は革命軍総司令ガルド•マズル•ガーナジェンダーだ。ここではボスと呼んでくれ。」


 ガルドはヴィザル達に自己紹介をする。ヴィザル達も軽く自己紹介をした。


「なるほど。後はリーダーと副リーダーだな。」

「その人達なら先程ブックじいさんからの連絡で地下道を通ってこちらに来ていると。」

「分かった。フレイダ、迎えに行ってくれ。」

「はい。」


 ガルドの指示でフレイダという少女がサリア達のところに向かった。

 しばらくしてフレイダがサリア達を部屋まで案内した。サリアとアルティネはなんの事か分からずにいるとガルドが自己紹介をした。彼の自己紹介が終わりサリア達も自己紹介を済ませるとガルドは本題へと入った。


「さて、お前達にも言わなくてはならない。ヴォルネスト帝国の今を。」


 ガルドは席に座ると葉巻を吹かし話し始めた。


「この国は十数年前まではオルトリンク•サンズ•オルネスティ王が治めていた。オルトリンク王は素晴らしい王だった。彼が治めていた頃は決して裕福な国ではなかったが治安は最高。平和の体現とも言える幸せな国だった。しかし、オルトリンク王が急死してしまった後に王となったギラージェ•ネスト•オーグバーグとその一派が政権を握ってからは悪夢の始まりだ。」


 ガルドは国の歴史を話しながら近くにいた青年に何かを持ってこさせた。それは膨大な量の資料だ。ガルドはそのうちの1つを取りヴィザル達に見せる。


「こいつはこの国で処刑された罪無き人達の名簿だ。オルトリンク王の急死に疑問を持った者、ギラージェの政策に反対した者、侵略された小国や部族、数えれば切りが無い。奴は大の処刑好きだ。そして•••」


 ガルドは青年から新たに貰った資料をヴィザル達に見せる。そこにはコロシアムで男性を処刑した男の情報が載ってあった。


「通称タルタロス。本名ラダマンティス•プルト•クエスデストラ。39歳。オルトリンク王が治めていた頃は普通の学校教師だったがギラージェが独裁するようになってからその強さを見込まれ奴の護衛兼娯楽のための処刑人をしている最凶最悪の死神だ。」


 一番近くにいたサリアが資料を手に取り内容を見る。タルタロスはギラージェ政権になってから約500人の人間を戦争や処刑で殺している。他にも彼の強さに加え妻と娘は既に死亡していることや非番は人知れずどこかに行っているなどの彼の行動が詳細に書かれていた。


「我々の目的はギラージェを暗殺し帝国をオルトリンク王の時代に戻すことだ。そのための一番の障壁はタルタロスだ。今まで奴に何人もの暗殺者を送ったが全て返り討ちにあっている。」


 ガルドは悔しそうに拳を握っている。


「だが、次はそうはいかない。既に革命軍は約1万を越える規模になった。近いうちに我々はギラージェに対し革命を起こす。その時に2千人以上の人員で奴を仕留める。君達にもそれを手伝ってほしい。」


 ガルドはまっすぐこっちを見て頼みこんでいる。


「どうする?」

「ここまで巻き込まれたんだ。やるしかないだろ。」

「賛成。そもそも私達を呼んだ理由も気になるし。」


 サリア達は少し話し合うと考えを纏めてガルドに伝えた。


「私達も参戦する。まぁ、私達は革命の経験もあるからクイーンメルビレイ号に乗ったつもりでいなさい!」

「その船、レヴィアに沈められましたよね。」

「っていうか経験あるの?」


 胸を張って了承したサリアにヴィザルとアルティネがツッコミを入れる。


「礼を言う。ありがとう。」

「あ、私達今夜そのギラージェ主催のパーティに呼ばれているんだけど。」

「そいつほ丁度いい。向こうにも今の独裁に対し不満を持って我々に味方してくれる者がいる。彼らと連絡を取ってほしい。」


 そう言ってガルドはサリア達にその味方になっている人達の情報を渡す。


「ウズメが連れてきたんだ。信頼しているぜ。」

「分かりました。」


 サリアはグッと親指を立て返事した。それからバレないように隠れ家となっている書店からヴォルネスト帝国へ戻った。

次回予告

ギラージェ主催のパーティに参加したヴィザル達。しかし、そこでハプニングが発生する。そして、ヴィザル達に最凶の処刑人タルタロスの魔の手が襲いかかる。


「最強、最凶の称号を持つ相手にどう立ち向かうのか。」

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