借金は大体自業自得
前回のあらすじ
ヴィザル・オルディダンテはアイアンガイアに入りました。
「まだ、入ってません!」
今、ヴィザルは困惑している。目の前にはサリアさんとエレキナさんを交互に踏みつけるケンさんとそれを見て恍惚な表情をしてスマホで写真を撮るカリスティさん。僕はどう反応したらいいのか分からなかった。
すると、後ろから老婆の声がした。
「ケン、その様子だと今月も未払いかい?」
「あぁ、レザニアさん。はい、この通り家賃をギャンブルに注ぎ込んで全滅しました。」
「あんたも大変だねぇ。ん?おや、新しい子かい?」
「え、えぇっと。」
「あぁ、その様子だと無理矢理連れてこられたようだね。」
「その通りです。ヴァンガス達が無理矢理彼を連れて来ました。」
ケンが老婆と話しているのをヴィザルはじっと見ていた。
「あぁ、忘れてたよ。私はレザニア・エクリプリス。この子達にこの家を貸しているただの老婆だよ。」
「はじめまして、ヴィザル・オルディダンテです。」
「へぇ、あのオルディダンテ家のご子息かい。そりゃ、この子達も必死になるわけだ。」
「は、はい。どうやらそうみたいです。」
「大変だろう。こんなクランじゃ苦労するだけだよ。」
「はい、すでに実感しています。」
「なるほど、なるほど。でも、オルディダンテ家のご子息様が加入するとなるといい宣伝になりますねぇ。いい記事が作れそうだ。」
ヴィザルが話しているといきなりカメラを持った男がヴィザルを撮影し始めた。
「え、誰ですか!?」
「はじめまして、僕はフィルディオ。フィルとお呼びください!」
そう言ってフィルは名刺をヴィザルに渡した。
「彼はフリーの記者でな。何故か俺達の独占取材ばかりしている。」
「それはもちろん、ネタが尽きないからですよ。」
「納得してしまう自分がいるのが恐い。」
「そ、そうなんですね。」
「はい、初めて会った記念として一ついい話を。アイアンガイアはレザニアさんに1年3ヶ月分の家賃滞納をしています。」
「僕に関係ないよね!それと、全然いい話じゃないですよね!」
「もう、そんなに滞納していたのかい。」
「すみません、レザニアさん。こうなったら、こいつらの臓器と人権を売るのでそれでなんとか。」
「なんか酷すぎません!?」
「いいんだよ。いつものことさ。でもさすがに滞納し過ぎだねぇ。」
「なら、今回のエレキナのクエスト報酬を家賃にするしかないな。」
ケンが提案しているとまた誰か入ってきた。
「ちょっと、マスターいる?」
入ってきたのは女性でピンクのショートヘアーに童顔、小柄だけど制服の上からでも分かる大きい胸をしていた。そして、デカイガトリングガンを装備していた。
「ジルか。ちょっと待ってくれ。」
「何、いつものやつ?」
「そうだ。」
「これ、いつもやっているんですか?」
「そうだ。で、どうした?」
「エレキナの盗賊討伐のクエストについてよ。一応盗賊は討伐したけど、依頼の村を半壊させてその請求がきているの。」
「てめぇ!」
「ま、待って。違うの!あれは急に盗賊達が村を襲ったから仕方なく焼き払っただけだから!」
「最後どう考えてもアウトだろうが!」
「だから、今回の報酬はその請求で全部消えるわよ。」
「なんか、悲惨だ。」
「そうだ!ねぇ、ヴィザル!どうか私達の代わりに払ってくれない!?お願い!」
「すごい飛び火がきた!」
ヴィザルが驚いていると女性はヴィザルに気が付いた。
「そういえば、あなた誰?」
「あ、僕はヴィザル・オルディダンテって言います。オルディダンテ公爵家の四男です。」
「じゃあ、ヴィザル君、私からアドバイスするわ。ここは辞めなさい。オルディダンテ家が破滅するわ。」
「そこまで!?」
「あ、自己紹介まだよね。私はジルフレイム・アルベリナ。特殊魔導警察部隊、通称マジックガーディアンのリーダーよ。先に言っておくけど年齢聞いたら撃つからね。」
「わ、分かりました。」
「よろしい。」
ガトリングガンを構えてニッコリ笑うジルフレイムに何も言わなかったヴィザルだった。
「で、どうするの。あんた達、金欠よね?」
「あぁ、クエストするたびに被害だして請求され、やっと入った報酬もギャンブルに注ぎ込んで破産。おかげで借金だらけだ。」
「なんか、可哀想になってきました。」
「同情しちゃダメよ。自業自得だから。」
「あの、同情するつもりはないですけど、入りましょうか?」
「「ありがとうございます!」」
ヴィザルがそう言った途端、サリアとエレキナが即土下座してお礼を言ってきた。
「待ちなさい、ヴィザル。こいつら、調子に乗ってあなたの財産を奪うつもりよ。」
「いや、そこまではしないよ!」
「安心しろ。もし、ヴィザルが入るなら彼の財産は俺が守る。バカ達には1レクスもやらん。」
「そうね。ケンがいるなら安心ね。どうする、ヴィザル。」
「はい、僕も立派な冒険者になるためにアイアンガイアに入ります!よろしくお願いします!」
「歓迎するよ!まず、加入金としてぐはっ!」
「早速、せびってんじゃねぇ!安心しろ、ヴィザル。加入金なんてないからな。」
「は、はい。」
「いいねぇ!これで明日の見出しは決定だな。オルディダンテ公爵家四男、アイアンガイアに加入!これで行こう!あ、そうだ。」
「?」
「ヴィザル君の加入記念としてギルドからクエストを一つ、持ってきました。」
「仕事早いな。」
「えーっと、カブジナの北にある遺跡の調査。何これ?」
「なんでも最近、カブジナの北で遺跡が見つかったんですが安全かどうかわからないようなので本格的な遺跡調査の前に危険かどうか調査して欲しいとのこと。」
「なるほど、いいじゃん!これにするわ!今から行くよ、ヴィザル!」
「わ、分かりました。」
こうして、アイアンガイアに加入したヴィザルは初めてのクエストに挑むのであった。
「あの、他のメンバーは連れて行かないんですか?」
「あ。」
正座したまま忘れてられた四人だった。
用語集
ギルド
国や市が運営するフリーの冒険者用の支援団体
主に、モンスターの討伐や薬草の採取、街の掃除、商隊の護衛といった各種 依頼による仕事の斡旋などを業務としている
クラン
個人で運営するギルドの簡易版
主に、ギルドに頼めない個人的な依頼や国外への依頼などを業務としている