作品は主人公と設定の良し悪しでだいたい決まる
前回のあらすじ
事件は無事解決しました。
「じっちゃんの名にかけて!」
「真実はいつも一つ!」
「実に面白い。」
「怖いからパクリは止めてくれ~!」
ある朝、ヴィザルが1階に降りるとサリアがパソコンで何かしていた。ヴィザルの後ろからきたマキナと一緒にサリアに声をかける。
「サリアさん、何してるんですか?」
「ん?ああ、ヴィザルか。ちょっとこれを見てくれ。」
そう言ってサリアはチラシを見せた。そこには・・・
「“小説投稿スーパーカブジナ大賞”って・・・」
「これ、私が作った小説を投稿して大賞とって賞金50万レクスゲットってわけよ!」
「それ、この小説がやってることと同じなんだけど。」
「まぁ、とにかく見てくれ!君達の意見も聞かせてくれ。」
サリアはパソコンをヴィザル達に向けて読ませる。すると、ヴィザルの顔がみるみるうちに無になった。
「え!?ヴィザル!?どうした!?」
サリアがヴィザルの肩を掴み前後に揺らす。そのままマキナを見ると全身から火花を出して直立不動で後ろに倒れた。
「マキナ~!?何、ライトン◯30爆弾をくらったキン◯ジョーみたいな倒れ方してんの!?」
やっと我に返ったヴィザルと起き上がったマキナがパソコンを見て同時に口を開いた。
「「・・・これは、酷い。」」
「え!?」
「まず、タイトルが『追放された無能、実は最強のチートマスターだった!~世界中の美少女達とハーレムを作って無双するから戻ってこいと言ってももう遅い~』って長過ぎます。」
「それ、多くのラノベやこのサイトの小説に喧嘩売ってるよね!」
ゴミを見るような目をしたヴィザルの酷評が始まった。ヴィザルに続いてマキナも彼と同じ目で小説に批評を始める。
「・・・そもそも主人公に魅力がありません。追放されたのも無能というより自己中な性格が原因と思われます。これでは追放されるのも無理ないかと。」
「嘘~。」
「しかも、ヒロインが惚れる理由もショボい。命の恩人はまだしも1回決闘に負けただけで惚れるとかヒロインみんなチョロ過ぎる。」
二人の怒涛のダメ出しにサリアの心がズタズタにされている。あまりのダメ出しに涙を流しプルプル震えている。
「これじゃあ大賞どころか入賞すら無理だと思う。」
「・・・これってサリアさんの妄想を小説にしただけでは?」
「そ、そそそそそんなことないよ。」
「・・・図星ですね。」
「酷い妄想ですね。」
ヴィザルの一言がトドメとなってサリアは倒れてしまった。
しばらくして目が覚めるとパソコンに向かって何か話しているヴィザル達がいた。サリアは起き上がり近付くとヴィザルとマキナの隣にデカイカマキリがいた。
「作者!?」
「いや~、サリアが小説を書いてるって聞いたから見てみたけど俺の好きなタイプの小説じゃないな。」
「好みの問題!?」
そう。このカマキリ、この小説の作者である高本龍知だ。彼はサリアを向かいの席に座らせると前代未聞の作者から小説の登場人物へのダメ出し(?)が始まった。
「まずね、主人公がチートを手に入れる過程がダメだ。何か修行とか手に入れる過程で努力すればいいけど、転生する時に神からもらったとか願えばもらえたとか全く努力してない。これじゃあつまらない。」
「え、でもこっちの方が爽快感が・・・」
「次に敵を倒すところだけど、戦いがあるシーンが8回あるけど全部圧勝じゃねぇか。」
「だってそっちの方が面白いじゃん!」
サリアが身を乗り出してパソコンを見る。それを高本が鎌で抑える。
「戦闘が全部同じなんだよ。敵が出てきてヒロインが苦戦して主人公が出てきてあっさり終わって主人公が『俺、何かしました?』と言ってヒロインが惚れる。全部このワンパターンじゃねぇか!」
「だって主人公が強い方が見ていて楽しいじゃん!」
「勝つにしろ3~5回に1回は苦戦した方がいい。何なら負けて修行して再戦して勝つの方が読者は引き込まれる。」
「それ、なんてジャ◯プ?」
ツッコミしたサリアを黒くした鎌で殴って黙らせると器用にパソコンを操作しながらワードで何か制作している。
「・・・作者、パソコン出来たんですね。」
「こう見えてワードとエクセルのMOS試験は合格しているから。」
「その前にさっき武◯色使ってなかった!?」
ヴィザルのツッコミを無視して高本はパソコンの画面をサリアに見せた。
「まず、主人公は努力した方がいい。それと無自覚系は止めておいた方がいい。最初の戦闘も周りを巻き添えにして『俺、何かやっちゃいました?』は酷すぎる。一つ間違えれば仲間が死んでるからな。ある程度は自覚を持った方がいい。それとハッキリ言ってざまぁ展開は嫌いだ。」
「本当にハッキリ言った。」
高本がワードで作った表や図を見せながら説明を始めた。
「それとヒロインが多すぎる。こんなにいるとキャラクターが上手く回らないから5人ぐらいがベスト。それと敵の方が正論なのに主人公だから正しいとか正義だはただヘイトを集めるだけだ。ハッキリ言って主人公に魅力がないどころか殺意がわく。」
「あ、マキナや僕と同じ意見だ。」
「と、いうことで俺達がこの小説を改良してやろう。」
「待って。もしかしてそれってただ単にあんたの好みじゃ?」
サリアが核心をつく質問をすると高本は黙ってパソコンを操作した。
「・・・おい、カマキリ野郎。」
「・・・・・みんなでやるぞ!頑張るぞー!」
「図星じゃねぇか!」
こうして、作者も加わり小説を書いていくが結局大賞どころか入賞すらなかった。
次回予告
超久しぶりにあのクランが登場。
「ホントに100話ぶりじゃね?」
「100話余裕で超えてる。」




