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鋼絆《メタルバンド》  作者: 高本 龍知
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消えたアテナスター File1

前回のあらすじ

ヴィザルの推理(?)回


「ネタ切れ?」

「そんな・・・ことないぞ。」

「はっきり言ってください。」

ある日、ヴィザル達はとある美術館にいた。ヴィザルと一緒にいたのは以前ケンにオリュンピア大戦争について聞いてきたシャルロットマーニュ学園の同級生だった。

そして、そのヴィザルの隣にはオリヴィエがいた。


「さすがアストライカ財閥。ここって予約に数ヵ月かかるオーバーヘイル美術館じゃん。」


友人の1人である狼の獣人ガルムがオリヴィエに改めて驚いていた。

オーバーヘイル美術館。カブジナの隣にある街オリュンにあるオリュンティア公国最大の美術館で絵画や彫刻、珍しい宝石まで展示している。

ヴィザル達が美術館の入口に向かうと何故かジルフレイムがいた。


「あれ?ジルフレイムさんもアテナスターを見に来たんですか?」


アテナスター。オーバーヘイル美術館で期間限定で展示されている目玉である。


「ヴィザル、とその友達ね。私は違うわよ。ここの警備にきたの。」

「警備?」

「新聞見てないの?」

「これですよ。」


ジルフレイムに言われてヴィザルが首を傾げるとどこからか現れたフィルディオが新聞の切れ端を見せた。

そこには


“6/20 20:00

オーバーヘイル美術館に展示されている秘宝

《アテナスター》をいただきに参上する

怪盗カシオペア”


「怪盗カシオペア?」

「数年前から活動を開始した盗賊よ。世間からは義賊と言われているけどやっていることは犯罪だからこうして警備かつ逮捕に出たってわけ。」


ジルフレイムが簡単に説明する。どうやらこの怪盗カシオペアって泥棒が予告状をこの美術館のオーナーに出したせいで物々しい雰囲気に包まれていた。

ヴィザル達はチケットを受付に見せて入る。すると、ジルフレイムが忠告した。


「ヴィザル、分かってると思うけどここで魔法は使っちゃダメだからね。」

「え?なんでですか?」

「知らないの?こういう人が集まる施設では魔法による犯罪を未然に防ぐために至るところに魔法検知器が設置されていて少しでも魔法を感知すると忽ち警報が鳴るようになってるの。」

「へぇ。」

「絶対使わないこと!いい!?」

「は、はい。」


ジルフレイムに睨まれ返事するヴィザル達。みんなで美術館の中を見て回る。幻想的な絵に見てはいけないような裸婦画、理解できない不思議な絵、綺麗な彫刻に色とりどりの宝石と見学していくうちに一番奥の部屋に辿り着く。そこはさっきまでとは格段に違い多くの人達でごった返している。どうやらここが怪盗カシオペアが盗むと予告したアテナスターという宝石がある部屋のようだ。


「お、あそこが例の宝石がある部屋みたいだな。」

「でも人が多過ぎてなかなかいけないんだけど。」


人混みの中を流れに任せて進んでいくとガルムが誰かにぶつかり前に倒れかけてしまった。その際、台の上にあった花瓶に肘が当たり落ちそうになった。ヴィザル達が慌てて花瓶を掴もうとすると知らない人が花瓶をキャッチした。


「大丈夫かい、君達?」

「は、はい。ありがとうございます。」


男にお礼を言うヴィザル達。男は長身、黒髪で背もヴィザル達より少し高い。結構高そうなスーツを着こなしていた男は手を出して自己紹介した。


「俺は海藤幸介。インテリアデザイナーでこの美術館の内装を担当している、よろしくな。」

「よ、よろしくお願いします。」


ヴィザル達は海藤と握手した。海藤はそのままヴィザル達を安全に案内する。もうすぐでアテナスターがある部屋に着く。すると、近くにある花瓶が気になった。その花瓶だけ他の花瓶と形が違うからだ。


「あの、海藤さん?」

「なんだい?」

「なんでこの花瓶だけ他の花瓶と違うんですか?」

「あー、こいつか。昨日、誤って花瓶を割った客がいてな。急いで取り替えた。」


海藤が説明すると漸く自分達の出番になったのでヴィザル達も部屋に入る。

中は意外と広く中央には頑丈そうなガラスケースに入った宝石がある。星型の飾りの中心に緑色に輝く宝石。これがアテナスターだ。その周りには屈強そうな男達が4人それぞれアテナスターから少し離れたところで目を光らせている。


「綺麗・・・」

「はじめて見る。」


その美しさはヴィザル達も見とれてしまうほどだった。展示ケースだけじゃなくその周りもカメラで写真を撮りまくっているエルフの男、アテナスターをただじっと見ている女性、何故か周りをキョロキョロしている猫耳の女性といろんな客がいる中、人混みを分けてアテナスターに近付く男がいた。


「どうかね?」

「問題ありません。」

「あの人は?」

「あの人がオーバーヘイル美術館の館長ジスト・デュッセンブルグさんだ。」


気品のある服装に身を包み紳士的な雰囲気を出している男性。彼がジスト・デュッセンブルグと海藤は教えてくれた。ジストは一番体格のいい警備員に話しかけている。

一方、アテナスターが展示されている部屋にまた人がやって来ようとしている。先頭にいるのはチェック柄のタキシードをきた髭面の男、隣には眼鏡をかけた女性、男の後ろには白髪のじいさんがいた。


「さすが我が秘宝。人を惹き付ける。素晴らしいと思わないかね、サファイア?」

「オバール様の言う通りです。アテナスターのおかげでオーバーヘイル美術館は繁盛しているといっても過言ではありません。」

「それと怪盗カシオペアのおかげでもあるじゃろうな。」


3人が部屋に向かう。その時、停電なのか照明がいきなり消え辺りが真っ暗になった。それはヴィザル達のいるアテナスター展示部屋も同じだった。


「なんだ!?」

「何も見えない!」

「暗すぎ。」


真っ暗な中、カメラを持っていたエルフの男が光魔法で辺りを灯した瞬間ビー、ビーとけたたましい警報音が鳴り響いた。


「うおっ!」

「お客様!今すぐ魔法を消してください!」


警備員の1人がエルフの男に呼び掛け魔法を止める。他の警備員も騒ぐ客を落ち着かせている。しばらくして照明が点くとみんな安心した。ジストがすぐに展示ケースを見ると体格のいい警備員が覆い被さって守っていた。


「ありがとう、警備主任。」

「いえ。」


ジストがケースの中にアテナスターがあることを確認し胸を撫で下ろしているとさっきの3人とジルフレイムが走ってきた。


「アテナスターは!?」

「ここに。」


ジストが持っている鍵を使ってケースを開ける。白髪のじいさんが近付きアテナスターを調べる。このじいさんは鑑定士みたいだ。


「どうですか、オイアさん。」

「・・・な、なんてことじゃ。これは偽物じゃ!」

「何!?」


オイアが青ざめる。それを聞いていたヴィザル達を含む部屋にいた者達は驚愕する。事件はここから始まった。

次回予告

ついに事件が起きる!


「前よりは推理小説としてやっていけそう。」

「不安しかない。」

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