遺産相続は後々大変
前回のあらすじ
安全第一
「本当にこういう事故は無くなってほしい。」
ここはオリュンティア公国の郊外にあるオルディダンテ邸
そこの寝室に寝たきりになっているヴィーダの周りにはヴィザル、バルド、ヴァリス、フォルス、ヨルズがいた。
「来てくれて嬉しいよ。私は持病が悪化してこの通りだ。」
どうやらヴィーダは肺を患っているらしくゴホッゴホッと咳をしている。みんな、そんな状態のヴィーダを心配してさらに近付く。
「大丈夫ですよ、お父さん。」
「いや、私の体だ。私が一番知っている。そこで、私の財産や権利を君達に分配したい。」
「え!」
病床に臥せていたヴィーダが上半身を起こしていきなり遺産について話し始めた。
「予め遺書には記してあるが今ここで言おうと思ってな。」
「お父様、それならこいつには1レクスも相続させないで良かったのでは?」
「なんで!?」
ヴィーダが遺産の話をするとバルドはフォルスの肩を叩き発言した。
「この穀潰しは何もしてないのですよ。ヴィザルだってちゃんと学校に通いながらクランで活動しているのにこいつはただのニートだぞ。」
「ひどい!」
フォルスは涙目でヴィーダに懇願する。ヴィーダはそんなフォルスを哀れに思っている。
「安心しろ。ちゃんと分配はする。まず私の家督を継ぐのは長男のヴァリスにする。」
ヴィーダはまずヴァリスを指名して自分の家督を継ぐように言った。ヴァリスはそれを聞くと黙ったまま頭を下げた。次にヴィーダはヨルズを見て発言を始めた。
「ヨルズにはアルテラにある私の土地と所有する建物や武具を相続したい。」
「わ、分かりました。」
「バルド、ヴィザル、フォルスには二人に分け与えた分を除いた残りの私の財産をそれぞれ平等に分配する。」
「分かりました。」
「・・・」
「はい。」
しばらくしてヴィーダの遺産相続の話が終わるとメイドのフギナとムニア、そして数人の男達が入ってきた。
「旦那様、そろそろ・・・」
「わかった。詳しい相続はまたの機会に。」
「はい。」
ヴァリス達が部屋を出ると執事らしき男がヴィーダに近付いた。
「お身体の方は?」
「大丈夫だ。まだまだいける。」
「しかし・・・」
「自分の体は自分が一番知っている。が万が一と言うこともあるからな。頼んだぞ、マーバリウス。」
「はい。」
マーバリウスと呼ばれたスーツ姿の男性は返事すると遺産相続に関する資料をヴィーダに渡した。どうやらこの男はヴィーダの弁護士みたいだ。
「こちらにサインをお願いします。」
「わかっている。・・・後は任せた。」
「はい。」
全員部屋から出るとヴィーダはベッドに寝そべり天井を見上げた。
「みんなの前ではああ言ったが私もそろそろ潮時だ。長年、オルディダンテ公爵家を務めてきたがもう年か・・・フレクリナよ、もうすぐでそっちに行くからな。」
ヴィーダが腕を伸ばして亡き妻のことを思い出し涙を流していた。そんな様子を扉の隙間から覗く人影に気付くことはなく・・・
(・・・さて、そろそろ報復を始めようか。)
その人影はヴィーダを見て密かに笑みを浮かべた。
次回予告
あの事件の概要が明らかに
「次の長編に続く重要回。」




