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癒し処の四姉妹  作者: 井上みなと
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癒し処にやってきたお客様5

 カリ、カリ、カリ……。


 優しくゆっくりと耳の入り口がかかれる。


 カリ、カリカリ、カリ。


「かく強さはこれくらいでよろしいでしょうか?」

「あ、はい。大丈夫です」


 私が答えると、桜子さんは軽くうなずいて、耳かきを少し横に動かした。


 カリカリカリ。


 少しずつ動かしていって、耳穴の上側をカリカリ。


 その耳かきがさらに耳穴の横側に動いて、カリカリカリ。


 耳かきで耳垢を取っているというより、耳のマッサージをされているようで気持ちがいい。


「どこかかゆいところはありますか?」

「あっ……。その下のほうがかゆいです」

「このあたりでしょうか」


 耳かきがその部分に触れて、サクッと音がする。


「ひゃっ……」


 思わず声が出た。


 ちょっとかゆいくらいの気持ちで言ったのだけど、耳かきが触れるとかゆさが一気に増して、サクッという音と共に体が動きそうになるほどのかゆさが走った。


「耳垢、ついてますか。どれくらいついてますか?」


 早口になってしまいながら尋ねると、桜子さんが少し体を寄せて耳の中を覗き込んだ。


「そうですね。ついているのが意外と深そうで……」


 様子を伺いながら、桜子さんが少し奥に耳かきを入れる。


 コリッ。


「あっ……」


 甘く痺れるようなかゆさが背中に走る。


「もう少しありそうですね……」


 耳かきが横に動き、ゴソゴソゴソッと大きな音がした。


「わっ!」

「痛いですか?」

「い、いえ。すごい音で……」


 音と共にまた違うかゆさが耳の中から伝わって来る。


「どれくらいついているか確認してみますね」


 桜子さんが耳の中で耳かきを動かす。


 ゴソ、ゴソゴソッ……。


 音と共に耳垢が耳の中で動くのがわかる。


 ものすごくかゆい。


「耳垢が動くので、固まっているわけではないようですが、貼りついているのが少し奥のようです。耳かきを細めのにしてもいいですか?」

「あ、はい」


 そういえば大きめの耳かきでかいていたのだと気づく。


「最初から細い耳かきではやらないのですね」

「はい。太い耳かきのほうが厚くてかくポイントが広くなって痛みが少ないので、太いのから始めるんです


 桜子さんはこちらの反応を気遣って、細い耳かきに変えた後、また、入り口のほうから始めてくれた。


 でも、でも……早く奥に入れて欲しい。


 入り口をいじられるたびに奥の耳垢が動いて、ウズウズする。


 少しずつ耳かきを入れてくれるのだろうけれど、一気にずぼっと入れて欲しい気持ちに駆られる。


「細い耳かき、痛くはないですか?」

「はい!」


 思わず大きな声で答えてしまって恥ずかしくなる。


 奥に入れて欲しいという気持ちが強くて、声に表れてしまった。


 でも、桜子さんは笑ったりせず、優しい声で応えてくれた。


「痛くないようでしたら、少しずつ入れていきますね」



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