癒し処にやってきたお客様
ほとんどのお店が閉まってしまった暗い夜の帰り道。
私は商店街の片隅にほんのりと柔らかな明かりを灯す店を見つけた。
「……何の店だろう」
疲れていた私はその看板に誘われるように商店街の一角にあるお店に入った。
「いらっしゃいませ」
中はテーブルが3つと小さなケーキの並んだショーケース。
ショーケースの奥にはすらっとした女性が立っていた。
「あ、えと……」
「どうぞ、メニューでしたらこちらに。ケーキセットもありますよ」
女性が見せてくれたメニューには、コーヒーや紅茶などの飲み物とケーキの説明が並んでいた。
(夜だからあまりカロリーが高くなさそうなもので……)
ケーキの説明を見ながら、横目でケーキを見て気づいた。
お値段も安くて、小さい。
「小さいですね」
思わず口に出して言ってしまうと、ショーケースの奥の女性が涼やかに微笑んだ。
「はい。当店ではちょっとだけ食べたいというお客様やいろんな種類を食べたいというお客様のために、小さなケーキにしているんです」
そうなんだと納得して、ケーキを選ぼうとした時、店の奥の扉が開いた。
「いらっしゃいませ~」
「いらっしゃいませー! 莉子ちゃん、どちら希望のお客様?」
入ってきたのは柔らかそうな印象の女性と、元気な感じの女の子だった。
「桜子姉さん、陽菜子姉さん」
「どちら……?」
思わず話に入ると、私に視線が集まった。
「莉子ちゃん、お客様に説明はしてないの?」
「あ……。てっきりカフェのお客様かと思って」
話が見えなくて、またつい尋ねてしまう。
「ここはカフェじゃないんですか?」
「あ、ここの部分はカフェです。当店ルラクシオンは、カフェ、リフレクソロジー、イヤーエステ、ヘッドスパを兼ねたお店なのですよ」
桜子さんの説明に私は店の奥が気になった。
「あの、お店の奥がどんな感じか、見せていただいてもいいですか?」
「もちろんです! さ、どうぞどうぞー!」
陽菜子さんが奥のドアを開けて、私を導いてくれる。
「ありがとうございます、失礼します」
私は陽菜子さんと桜子さんに連れられて、カフェの奥の扉に入った。
奥の扉は廊下になっていて、順番にリフレクソロジー、イヤーエステ、ヘッドスパのエリアがあった。
「奥がこんなに広かったんですね」
「そうなんです!」
「ではお客様、どちらがよろしいでしょうか?」
一通り各エリアを見せてもらい、私はどこに行きたいか考え込んだ。
「それじゃ……イヤーエステで」
しばらく悩んだ後、私はイヤーエステをお願いした。
(続く)