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もふもふ

猫『ここはオレに任せて先に行け』

作者: 山目 広介

 ある日の寒い朝。俺たちは籠城していた。強敵どもに対抗していたのだ。

 だが、騒音がそれを妨げる。

 飼い猫のK(仮)に目線をやると目で訴えていた。


『ここはオレに任せて先に行け』


と。

【作者注】

 ここ:布団の中

 オレ:飼い猫のK(仮)


 『それは死亡フラグだろうが』と思いながら、「K(仮)だけずるい」と愚痴を零し、K(仮)の肩に回していた腕を引き抜き、俺は外へと向かう。

 ぶるり。朝の寒さが体に染み渡る。


 ◇ ◆ ◇


 すぐに戻って布団を捲る。

 そこには手足を力なく伸ばし、その眼は固く閉ざされた瞼によって塞がれていた飼い猫K(仮)が横たわる。


「ケ、ケェェエエエエエエエエエイッ!!」


 俺は手を伸ばし、少し触れる。


「つ、冷たくない」


 それは暖かかった。ぬっくぬくでほっかほかだった。

 すーすーと寝息が漏れる。

 まるで死んだように眠る(・・・・・・・・)飼い猫K(仮)の姿だった。

 迫りくる冬将軍の先遣隊である秋の朝の寒さに屈せずに死闘を繰り広げ、布団の中を外気の冷たさから守り切ったのだ。

 だがそれでももう一つの方の敵である、二度寝の誘惑をする睡魔に完全に敗北した結果なのだろう。

 死亡フラグの通りに死亡(睡眠)したようだ。熟睡である。布団の捲っても動く気配すらなかった。

 俺はそっと布団を掛け直し、元通り埋めた。

 墓標(目印)にタオルをその上に載せておく。来ないだろうけど家族とか、誰かに踏まれると危険だから。俺が抜けた布団のふくらみの方が大きく猫の位置が不鮮明なのだ。布団を直すと猫が起きてしまうのでそのままなので間違って踏まれたら骨折などしてしまうと思う。実際に炬燵布団とかの中に隠れ潜んでいたときは家族が踏みつけていた。

 もう一度布団の中の飼い猫K(仮)の姿を思い浮かべる。


『ウチのバカ(可愛い猫) ここ(布団の中)に(マジで)眠る』


 そう心の中で刻んだ。




 後ろ髪が引かれる思いについつい最後にもう一度布団の中に手を差し入れてぬくぬくを堪能してからそこを離れるのだった。




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