僕の秘密と嘘……(3)
「ありがとうございます」と言いながら顔を上げた瞬間、悠雨を目の前にしてまるで氷のように固まってしまった。
それから「どうしましたか?……えっ……」と悠雨は続け僕は何やら気がついたのかと思った。
一度だけ悠雨にこの状態の姿は見られているわけで、ただ今回は前回のような髪の毛を長く見せるピン留めの付け髪ではなくウィッグだったので簡単にはバレないと思ったがまじまじと見られるのはマズイと思い
「い、いえありがとうございます」とだけ言い髪留めを受け取って立ち去ろうとしたが、その時
「ごめん、ごめんお待たせ〜!!」と言いながら朱希が帰ってきた。
するとすかさず僕は無意識のうちに背中の陰に隠れるかのように朱希の背中の方へまわっていた。
その行動に朱希は不思議に思い僕を見てその後に僕の目線の先に振り返った。
「あれ?どうしたの……って悠雨?!なんでここにいるの!?」
悠雨を突然前にして朱希も相当驚いていた。
「なんでって、まぁ新しい服だったり文房具を買い足しに来ただけだけどで、そっちはなにをしに?」
驚いた様子の朱希に対して悠雨は冷静に質問に答えそして質問を返してきた。
「へ、へぇーそうだったんだ……私たちは服を着見たりご飯食べたりそんな感じだよ〜……」
と僕の様子をちょこちょこ見ながら歯切れが悪い様子で質問に答えた。
それを聞いたあと悠雨の話の方向は僕の方へむいた。
「ところでその後ろの子は誰 ?」
そう聞かれた時僕は朱希の後に隠れて口を紡いでいた。
その時朱希が咄嗟に「こ、この子は、私の従妹の……雪華ちゃんっていう一個下の女の子だよ!!」
え……なに言ってるの!朱希!従妹ってしかも年下の女の子って!当然こう思った。
「ちょっと、朱希……」後ろから小声で語りかけてみたが
「そ、そうだよね〜……雪華ちゃん!!」
僕にそう言いながら振り返りまるで目を回したかのようになっていて完全に僕の声は聞こえていなかった。
そこまでされて誤魔化しも出来ないのであまり姿が見えないように朱希の後ろから少し声を高めに悠雨に聞こえるぐらいの小声で「こ、こんにちは……」とあいさつをした。
一応、悠雨の目を見上げながらしていてお互いに目があっていたのでよくわかった。
《《悠雨すごい僕のこと見てる》》
なんだかいつも僕と話している時の目付きとはなにか違う、それに少し顔赤いし
それから僕があいさつをしてから全くの無言なので少し近づいて「あ、あの……どうしたんですか?」と声をかけてみた
すると「あ、い、いえなんでもないです」と返しなにか慌てていたような様子だった
その様子に対して少し気になったが悠雨に僕のことがバレてないという安心感の方が強くその後から何も聞く気にはならなかった
それから
「あ、そうだ! さっきの髪留め渡し忘れてたから……」とさっき拾ってもらった髪留めを渡してくれた
「あ、ありがとうございま……」
そう言って受け取ろうとしたとき小石でつまづいてしまい悠雨に飛び込んでいってしまった
「ご、ごめんさない!大丈夫ですか?」
少し慌ててしまい一瞬、作っていた声を忘れそうになった
その時の悠雨の反応もなにかおかしかった
「あ、いえ、大丈夫ですよ……」そう言いながら不自然な方向を向いていた
その後に「だ、大丈夫?二人とも」と朱希が近づいてきてくれた
それから髪留めを渡してもらい悠雨と朱希が少し話をした後別れていった。
別れてからすぐ一気に僕と朱希は気が抜け
「はぁぁぁ〜〜〜……」 と言いながらそこにあるベンチに座った
「なんとかバレなくてよかった~……て、なんで朱希急にあんな偽名を思いついたの?」
「いや、なんとなくね!にしても桜花女の子の声上手かったね。元々中性的だけどあんなにできるとは思わなかったよ〜!!」
少し練習してたしね〜とは言えなかった
まぁ とりあえず悠雨に気づかれなかったからよかったのかな
〜続く〜