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鳩首

 カリムが部屋を去ったあと、部屋に残った三人は、ソファに座ったまま渋面を作っていた。


「サウロに立った塔の事だが――……」


 イエーガーが重たい口を開く。

 デフェルの報告内容と、デフェルが戻って来るまでに調べさせた調査資料とを照らし合わせて考えるに、どうやらここ数年で各地に立っている塔と同じ物だと思われた。数としてはまだそれほど多くはなく、いずれも人里離れた辺鄙(へんぴ)な場所に立っており、その周辺には鬱蒼(うっそう)とした森が短期間で広がりを見せている。


「なんでよりにもよって、こんな所に立つかねぇ」

「辺鄙な場所だからじゃないですか」


 イエーガーが鼻に皺を寄せて言うのに、ジェイダが応える。イエーガーは乾いた笑いを漏らした。


「塔が立ってから、どんくらい経つんだったか?」

「カリムくんの話からすると、一週間と少し前ですかね」


 デフェルが、日にちを指折り数えて言う。


「んで、塔から出てきた連中は、すでに森を作り出していると」

「はい」

「――森ねぇ。完成するまでにどのくらいかかると思う?」


 イエーガーが二人に視線を送ると、デフェルが村の様子を思い出しながら答えた。


「規模にもよりますが、あの調子だと一ヶ月くらいで出来るんじゃないですかね」


 通常、森が出来るまでには何十年とかかるらしいが、それから考えると異様を通り越して異常だ。

 隣で資料をめくっていたジェイダが、他の場所でも似たようなものだと頷いているので、そういうものだと納得するよりほかはない。

 カリムとデフェルの話から、森を作り始めたのはデフェルがサウロに着いた頃――つまり、連中が森作りに着手してからすでに六日が経過していることになる。


「姿を見られたのは失態だったなぁ、デフェル」

「うぐっ……、それは――はい、申し訳ありません」


 デフェルがカリムを見つけた際、連中の一人に見られている。

 それならば、向こうも何かしら準備を進めていてもおかしくはないし、森の完成を急ぐことも考えられた。

 カリムに気を取られていたとはいえ、あの時、注意を怠ったのは事実なので、デフェルは素直に謝っておく。


「ジェイダ、人を集めたとしてどのくらい集まる?」

「すぐ、という事であれば百人くらいです。一週間頂けるのであれば――二百五十くらいは集まるかと」

「それ以上だと?」

「早くて一ヶ月。下手をすれば、もっとかかります」


 すぐ動かせるのは私兵や民兵、もしくは滞在中の傭兵くらいだ。それ以上の数を望むのであれば、まずウィスタリア卿に連絡を取り、そこから国へ繋いでもらって、軍を動かすための申請をし、許可を得なければならない。緊急時ということで、ウィスタリア卿の判断で兵を動かせたとしても、早くて一ヶ月。

 イエーガーは目を閉じた。


「そんなには待てないな」


 待っていたら、軍が到着する前に森が完成してしまう。

 デフェルの報告にあった塔にいる連中の人数を考えると、万全とは言えないが、不足というわけでもない。


「二百五十、五日でいけるか?」

「――馬を何頭か潰してもいいなら……」

「まぁ、仕方ないだろうな」


 ジェイダは「分かりました」と頭を下げると、速やかに動き出す。デフェルもジェイダが動くのに合わせてソファから立ち上がった。


「村、取り返すおつもりですか?」

「出来ればな。まぁ、無理でも森が完成するまでに、どういうもんか一度見ておきたい」


 デフェルはイエーガーに目礼すると、部屋を出て行く。一人残ったイエーガーは、先の事に思いを巡らせて、眉間に深く皺を刻んだ。

次回の更新は、明日1/16㈬の予定です。

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