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ダンジョン年表とプロローグ



1995年

 世界各地にて謎の群発地震が発生


1996年

 3月某日 世界を半壊させる未曽有の地震、ダンジョン大震災発災

世界人口を一夜にして半減させる

その後の地形変動、気候変動により人類は更にその数を減らす事となる


1997年

 アメリカ・マンハッタン、ロシア・サンクトペテルブルク、中国・上海、

日本・神奈川等、世界38か所でダンジョンが発見される


1998年

 ダンジョン内に食料資源となりうるモンスター生物を確認

人々は獲物を求めてダンジョンのモンスターを狩り始める

獰猛なモンスターを前に多くの犠牲を払いながら人類は文字通り死に物狂いで日

々の糧を得る


同年フランス・モンパルナスダンジョンにて負傷や軽度の病を癒すポーション苔

を発見


1999年

 中国・豫園ダンジョンにて迷宮区5層最奥部に到達、ゲートエリアにて守護モンスター「猫鬼」と初遭遇


同年アメリカ・マンハッタンダンジョンにても5層ゲートエリア到達、同じく守

護モンスター「ジャイアント・アリゲーター」に遭遇

いずれもいかなる銃器、爆薬も通じずダンジョン探索に停滞期が到来する


2003年

 マンハッタンダンジョン、ジョン・バーデン氏により5層守護モンスター初討

伐に成功

氏がこの時用いた武器は後にバーデンクリスタルと呼ばれる希少な単結晶金属

で、相討ちと果てた氏の健闘を称え、その名が冠された

この情報を受け、相次いで世界各地のダンジョンで5層守護撃破が成功する


5層ゲートエリアの向こうに広がる超常的な空間、後の呼称でフィールドエリア

が発見される


2004年

5層フィールドエリアにて現住人型知的生命体と接触する彼らは自らをドワーフ

と名乗る


同年、現地ドワーフ達と友好関係を多くの国が築く事に成功(中国・インド・

イギリス・ロシア・スペインは友好関係構築に失敗、現在も関係修復に注力し

ている)

それにより現地情報が飛躍的に得られ、ダンジョン開発に大きく貢献した


現地ドワーフ達の協力によりバーデンクリスタルをBC鋼へと加工する手段を得

同年、モンスターの体内より抽出される魔石の研究が開始される


2008年

 法整備が整わぬままダンジョン開発が本格的に始まり、アメリカ西部開拓時代の

ような無法地帯化するも、現地住民達と皆足並みを揃え、フィールド開発が進め

られる


この年、世界に先駆けて日本・極東ダンジョン5層にて初めて城塞都市が完成す

正式名は「東京第一ダンジョン市」だが、簡潔に「始まりの街」と呼称される

市は景観が考慮され、選考によりイタリアより招いた建築家、「ピエトロ・デロ

ーマ」氏が設計、落ち着いた石造りの街並みはダンジョン建築の芸術と称賛され

、五稜郭を彷彿とする外観は世界的に模倣され、パテント問題となっている


2009年

 法整備が遅れたままなのを憂慮し、「始まりの街」にて現地自治組織「ギルド」

が誕生する

経済、保安、生産系を束ねる「ライフギルド」

採集、博物分布調査、地図作成を担当する「ギャザーギルド」

狩り、戦闘を担当する「ハンターギルド」

深部への未知なる資源を探索するエリート組織「シーカーギルド」等が設立され

現地住民、特にエルフ、ドワーフも多く参加する

この成功を受け、各国も多くこの方法を取り入れる事となる


※【法整備が遅れた理由として、現地住民との文化風俗の違いが有るが、一番大

きい理由として法の強制執行力が無かったのが挙げられる

地上人、現地住民に関わらず、ダンジョンに住んでいる者達は最強武装勢力であると言う事を忘れてはならない

これはダンジョン探索当初に食料確保の為、民間から多くの探索者が入り込んだ

弊害であると言えよう

ルールは守らないが、仲間内の仁義マナーは通すという荒くれ者の習性を逆手に取った措置であった】


    同年、各地のダンジョンフィールドエリアにて都市が建築される


2010年

 地上にて、国際ダンジョン機関(WDO)が発足

各国の情報が共有され、国境を越えた支援が開始される


2011年

 日本企業ダンジョンホールディングスにより、魔石の精製方法が確立される

同時に精製された魔石を再結晶化させたコアをエネルギーに変換する魔石コン

バーターの開発に成功

完全にクリーンな第四世代エネルギー「魔石エネルギー」時代の幕開けである


2020年

 DH社がドワーフと共同開発で魔石コンバーターの小型化、低価格化に成功

更に同時期に魔石コンバーターエンジン(MSCE)が市販され一気にダンジョ

ンに普及する


2033年現在

 人類は極東ダンジョンにおいて30層ゲート区まで到達










 ジュワッと油が弾ける。

途端に胃をえぐるような香味野菜の刺激臭が襲って来る。ジャッジャッとリズミカルな音を立てて半球形の鍋が振られ、魔法のような手際で次々と具材が投じられる。


 香り高いエミール茸で全てを包み込む奥行きを侍らせ、鋭い辛みの虹唐辛子で嫌がおうにも期待感をあおる。ジューシーなライオンコックブルの挽肉は絢爛たる豪奢さを演出し舞台を整える。ここでこの物語のヒロインが登場する。グルネアの木の実を発酵させて作ったとろみのあるダンジョンジャンがステージに立てば、その美貌はもはや安定の、いやさらなる高みへと観客を押し上げる。グベナの樹液を煮詰めて作った甘ーいグベナシロップはほんの少し。入れ過ぎてはいけない、グベナシロップは深みを出すためのあくまでも脇役、だが名脇役だ。

 そしていよいよここからクライマックスが始まる。

 白く高貴な輝きを放つそのかんばせは、ただひたすらに真理を求める求道者の如き潔白。宝石のように美しくカットされたその姿は拝するだけで歓喜に打ち震えるこの胸を圧して止まない。そう、本日の主役、愛と調和の守護神

 ”豆腐”

 何故神は我々に豆腐を与えたもうたか?人生をかけて探求するにふさわしい哲学、そう、これは我々人類の命題。

 だがこれでは終わらない、これが入らなければこの芸術は完成しない、ここ、ダンジョンでは絶対に生み出す事は出来ない香りの結晶、全ての美を天上へと昇華させ痺れさせる、そう、至高のスパイス、神々の寵児、花椒‼

 

「天才だ!この男はマーボー豆腐の何たるかを知り抜いている!悔しいが完敗だ!」


「うるせーよ、いつもいつもよぅ!仕事しろよ‼」

 カウンターのハイチェアにちんまりと腰かけたフィルニー(フィールドロマニー=小人族)の常連が店のマスターらしき無精ひげのエルフに毒づく。

「あれ?俺また入ってた?どっから入ってた?」

左手にクロス、右手に磨きかけのグラスを持った状態でエルフのマスター、ジョーがパチパチと目を瞬かせる。

「最初っからだよ。茸の下りからだ、やりにくいったらねーわ」

ジョーの隣で調理しているのは黒いレースアップシャツを着た若い地上人の男だ。ボソっと呟くと、鍋からマーボーを掬い、木製の深皿に盛り付けると口の悪いハーフリンクの前に置く。

「たく、ただのマーボーじゃねーか、大げさなんだよ うんめぇッ‼」

スプーンで一口食べたフィルニーのマックは目を見開いて仰け反る。瞬く間にガツガツと口に放り込み、途中辛味で出る汗を拭い旨そうに水を飲む。

 惚れ惚れする食いっぷりだ。それを見た周りの客も釣られて、次々と本日のおすすめメニューのダンジョンマーボーを注文する。

 俄かに忙しさを増した店内を、スイスイと泳ぐように猫獣人ウェイトレスのタマコが注文を取っていく。

「オタマちゃーん、こっちにオーガービール2つぅ」

「タミーって呼ぶのにゃ!オタマじゃにゃいにゃっ!!」

そんないつものやり取りの中、黒シャツの青年、ルイは手際よく料理を完成させていく。

「このにおいは卑怯だわ」

「ジョー、マボーに合う酒だ」

「マボーじゃねー、マーボーだ。この作品の名前だけは間違えるな」

「いいから酒ぇ」



 ここは極東ダンジョン15層のフィールド区、ゲート近くの丘陵エリアに偉容を構える第一城塞都市だ。15層の城塞都市はここと、16層の迷宮区に続くエントランス(侵入口)を擁する第二城塞都市の二つしかない。残りの居住区は小規模の村が幾つか有るのと、元から暮らしているエルフのクレセントフォレストとドワーフ領グルガング鉱山地帯しかない。それらを繋ぐ街道以外残りの大地は全てほぼ未踏のエリアと言ってよい。ダンジョンに5層ごとに現れるフィールド区の果てに辿り着いた者は、放浪種族のフィルニーでさえ居ないと言われている。それ程広大な大地なのだ。


 ダンジョン、それは末世に訪れた人類滅亡の使者。

 ダンジョン、それは破滅の危機に瀕した人類最後の砦。

 ダンジョン、それは飽くなき探求に身を捧げる人類を嘲笑い立ち塞ぐ壁。

 ダンジョン、それは新たなる希望を灯す神々の箱舟。

 

「この物語はそんなダンジョンで暮らす若者達の物語である」


「マスターまた入ってるにゃ?さっさと働くにゃ!」

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