侮ってはいけない異世界人
「イヤですよ!」
まあそう言われるだろうな。
そこで作戦第二段階だ。
「じゃあしょうがないな。最後にお前にあげたいものがあるんだがちょっと来てくんないか。」
もちろんそんなものはないんだが。
「何ですか!さっきまで養ってくれって言ってた人が物くれるとか怪しすぎますよ!それにあなた何も持ってないでしょ!」
もっともだ。
「一期一会って感じだ。お前が召喚したときについて来たんだ。しかも俺がもといた世界の物だからこの世界では貴重なんじゃないか?きっと高く売れるぞ?」
我ながらこの一瞬でこんな適当な理由をよく思いついたと感心せざるを得ない。
それにこいつ他の使い魔に働かせて稼いでるらしいし、金の話出せば食いつくだろう。
「…………っ!しょうがないですね!あなたの元主人として使い魔の物は貰っといてあげます!」
はい釣れた。ちょろい。
「ここじゃ人通りが多いから裏路地行こうか。」
「はい!」
こいつ何にも疑わないのな。
裏路地来いとか怪しいイベント発生する匂い漂いまくりだろ。
「着きましたよ!早く金下さいよ!」とラディナ。
金はあげられないんだけどな。
最早こいつの頭のなかでは、俺があげるといった元の世界の物が金に変換されているらしい。
それにしてもここは良い裏路地だ。
人はいないし太い木も立ってるし。
「じゃ始めますか。」
「何をです!?」
俺はポケットの中に結わいて入れられていたPP紐をおもむろに取り出した。
「何する気ですか!?」
まずはこいつの口を縛る必要がありそうだ。
スキル使われたら厄介だけど、見た感じ詠唱しなきゃ効果は発生しないようだしな。
俺は猿ぐつわの要領でラディナの口を縛り、
「むんんんん!んーむんん!」
うまくこいつの発言権を奪えた。
次にこいつを木に縛り付ける。
「むんんむーんんんむんんんんん!?」
何でこんなことをするんですか、だって?
それはじきに分かるさ。
とりあえず作戦第二段階はこれでおしまいだ。
まさかこんなに上手くいくとは思わなかった。
「やっぱラディナ、お前は俺を右も左も分からない異世界人だからといってなめすぎたようだな。」
最後にこいつから“あれ”を奪って、作戦第三段階を始めよう。