働いてはいけない異世界生活
「さあこれであなたは私の使い魔卒業ですよ!さっさとどこかに行って、勝手に警察に監視されていてください!」とラディナ。
よし、これで俺はラディナからの支配から逃れられるはずだ。
俺の作戦第一段階は完了っと。
「つまりこれからは俺の意志で何でもできるというわけだ。」
「そうですよ!だからあなたの意志で私のもとを離れてください!」
良かった。俺の不安要素は一つ消えた。
『あなたの意志で』ということは、この〈契約解除〉とか言う技は強制的に使い魔を辞めさせられるスキルじゃなくて、あくまで俺に自由が与えられるスキルらしい。
ならば、俺はラディナにこう言える。
「じゃあ俺は、俺の意志でお前の使い魔を続ける。」
「なぜ!?」
くっくっく、その理由はな、
「お前に養ってもらうためさ!」
「なぜ!?」
それでは、俺がこの結論に至った理由を説明しよう。
もともと俺は、使い魔には物と同じくらいの権利しか与えられないのではと思っていたのだが、その考えは違ったのだと気がついた。
まずスキル診断したときの医者の発言だ。
診断を受けている最中俺に指示するとき、医者はきちんと敬語を使って話しかけてきた。
最初は俺が使い魔だってことを知らないからなのかと思ったが、診断が終わったあと俺のことを『使い魔さん』と呼んでいたことから医者は俺のことを使い魔だとわかっていたようだし、さんづけで呼ぶことにも違和感を覚えた。
その時は、この医者がただ単に誰に対しても優しいだけとも考えられたが、診断が終わったあとのラディナの言葉でその仮説は覆された。
そう、ラディナは使い魔に人体実験を施すことを、警察に目をつけられてはならないこと、すなわち違法なことだと言ったのだ。
使い魔への人体実験が法律で禁止されているということは、あの医者がただ単に優しかっただけではなく、社会的に使い魔への扱いは悪いものではないといえる。
このことから、この世界における使い魔は、俺がもといた世界における奴隷とは違い、一定の人権が与えられているということだ。
そうだな、例えるなら、ペットみたいなものか。
奴隷としてご主人様に一生身を尽くさなくてはいけないみたいなのは嫌だが、ペットとして養われ、時々主人の役に立てばそれでいいみたいな生活なら俺は甘んじる。
そもそも自立しようにも、来たばっかりのこの異世界で生き抜く自信は俺にはなく、スキルで何とか乗り切ろうにも〈自爆〉なんてスキルでは何の役にも立たん。
仮に役に立ったとしても、使ったら死んでまうなら本末転倒だ。
俺は人の役に立つために死ねるほど、尊敬される性格はしてない。
と、まあ長くなったが、要は自立はできそうにないし使い魔としての生活も悪くなさそうだからラディナのお世話になろう、そういうことだ。
さんざん悪事を働いてきたラディナでも、警察の前でオイタはできないだろう。
「だから俺を養ってくれ!」