中編
ゼドリア――それは剣と魔法の世界。一年前、魔王と呼ばれる魔族の王に脅かされていた。
魔族は好戦的で残虐性の強い者が多く、欲望に忠実な種族だ。そして、実力主義な性格の者も多い。
そんな魔族を率いる魔王とは、謂わば魔族で最強の存在であると言える。
運の悪いことに、その魔王は魔族主義者だった。
他の種族は魔族に比べて貧弱で死に易い。それが故の思想だろう。
だからこそ魔王は他種族領土の制圧に及んだ。魔王は絶対服従を望み、反抗者は即殺だった。
殺し、犯し、食らい、なぶる。秩序はなく、規律もない。ただただ蹂躙する。欲望のままに、本能のままに、思うがままに。
しかし、服従者には生存権が与えられた。最低限の衣食住を引き換えにして、魔族に、魔王に献上するための食材の栽培、飼育、採取、狩猟を行えば。
だが、奴隷だ。好きに犯されいたぶられる。抵抗は許されない。すれば、自分の大切な誰かが苦しみの果てに、魔族が使役する魔獣に生きたまま食われる。
王族も、貴族も、商人も、職人も、平民も――大人も子供も関係なく、等しく扱われた。
世界中の殆んどが魔族に支配され、他種族が結成した連合国が世界の辺鄙へと追いやられたのは、魔王が侵攻を始めて十年経った頃だった。
荒れ果てた大地に堅牢な要塞を築き、わずか数万の民と数千の兵、そして連合国の代表的立場であったロストリアという国の王族のみが苦難の果てにここまで落ちのびたのだ。
さて、一年前、そう区切ったのは、まさしく一年前にゼドリアは魔王の支配から解放されたからに他ならない。
魔王は滅ぼされ、各地で大きな顔をし、好き勝手していた魔族の殆んどが駆逐された。その残党狩りも半年の期間で終わりを告げた。残された魔族に再起を図る力はなく、気力もない。それほどまでの恐怖と力の差を見せ付けられた。
それを行ったのはハヤト・タケイという顔立ちの整った青年だ。
名前の通り、彼は日本人だ。それは俺が住む天界の長が管理する世界の国特有の名前だから分かる。
彼はロストリアが誇る魔導師に召喚された。勇者召喚の儀だ。
古の魔導書に記された古代魔法で膨大なマナを大地より抽出し、召喚陣に注ぎ込んだ。
そうして召喚された彼は、勇者として大いに歓迎され、もてはやされ、一月の鍛練を経て三人の才能ある若き少女達と旅に出た。
ハヤト・タケイはこの世界の神に事前に合っていて、チートとやらを得ている。それは魔族を凌駕するステータスとやらで、難なく彼は村を、街を、そして国を解放していった。
迫る魔族を打ち倒し、逃げる魔族を追い、潜む魔族を屠った。遂には魔王をも……。
それは凄まじい全能感だっただろう。
何の才もなかった冴えない高校生が、異世界に召喚され、力を与えられ、王さえもひれ伏す。
助けてくれと、救ってくれと請い願う。
高揚するだろう。気分が良いだろう。勘違いするだろう。自分は何をしても許されるのだと。
だから、彼は自分の欲望のままに動いた。
最初の犠牲者はとある村の孤児だった。旅の道中で解放した村の少女を異のままに犯したのだ。
誰との繋がりもなかった少女は、勇者と呼ばれている者に、魔族に受けたのと同じ仕打ちをされた。
一度犯した過ちは二度、三度と繰り返された。行く先々で女を襲い、貪り尽くす性欲の権化と成り果て、ハヤト・タケイの欲望は共に旅をする少女達にも向かい、世界の解放を盾に、恋人がいる彼女達と関係を持った。
旅は四年続いた。魔王を討ち取った頃には、少女達はハヤト・タケイに調教され尽くし、心酔していた。
眼前で涙を流す恋人を蔑み、ハヤト・タケイの身体にぴたりと寄り添うほどに……。