葵の登校
朝、目覚ましがなった。
「うぐぅぅ...!」
俺は背伸びをして目覚ましを止めようとしたが目覚まし時計がどこにあるか分からない。重たい瞼を開け、辺りを見回した。いつもの俺の部屋ではなく、やけに女の子っぽい部屋だった。床もプラスチックか?
そこで炉駆は思い出した。昨日葵に教室で縮められて今葵のミニチュアハウスの中にいる事を。
いつの間にか目覚ましが止まった。葵が止めたのだろう。
俺はベッドから出ようとしたが、昨日葵に踏みつけられ、血だらけになった左腕がまだズキズキと痛む。あんなに蹴散らされてよくこの腕も繋がってるもんだなと小さく感心した。そんな腕を持ち上げ、プラスチック製の冷たい床に足をつけた。今日も始まった、、、地獄の時間が...炉駆はそう思った。
そして、2階から1階に降りて、玄関のドアを開けて、外に出た。勿論外に出ても、そこは葵の部屋なのだが、、、
部屋には葵はいなかった。
どうやらさっきの目覚まし時計はスヌーズ機能で止まったらしい。という事はまたあの不快な音がなるのかぁー。遥か高くに掛けてある掛け時計を見た。今の時刻は6時。朝起きるにはかなり早い時間だ。葵も何故かいない事だし、少し部屋を散策する事にした。
ミニチュアハウスは幸い地面に設置されており、何かから飛び降りたりする事はしなくてよかった。広くて大きい絨毯を歩いた。葵の部屋のピンクの絨毯は、小さくされた炉駆からすると、大草原だった。フカフカしていて歩きにくかったが、気にせず進んだ。そして葵のベッドの下にまでたどり着いた。やはり葵はいない。布団が上から垂れ下がっていたので、それを掴み、ベッドの上を目指してよじ登った。
そして、ベッドの上に着いた。布団がぐちゃぐちゃなっていた。そして、毛布からはちょっぴり汗の匂いが漂う。葵の寝汗だ。
炉駆は謎に興奮してしまった。
「葵の枕に行ってみたい。」俺はそう思い、足を進めた。布団の上を歩いていった。
そして、葵の枕が近くにきた。俺は葵の枕の上に上がり、寝転がった。それは、シャンプーの香りが漂い、寝心地がよかった。
そして、何度が寝返りをした。枕とは言っても、俺にとっては教室くらい広かった。
そして気がすみ、俺はベッドから降りることにした。毛布をつたい下に降りた。
すると、大きな部屋のドアが開いた。
葵が部屋に入ってきたのだ。ドスドスと足音を立ててこちらに向かってくる。踏み潰されないように部屋の脇に逃げ込んだ。葵はそのままミニチュアハウスへと向かった。俺を起こそうと思ったのか?
「ろっくん朝だよー!起きてぇー.....って、あれ?」
葵は辺りをミニチュアハウスの中を小さな窓から見渡した。俺がミニチュアハウスの中にいないことに気づいたのかも。俺はそう思いヒヤヒヤしながら部屋の片隅で葵の大きな後ろ姿を見上げていた。
「あっ、あれ?ど、どうしていないの?」
葵はミニチュアハウスを持ち上げて、ミニチュアハウスを逆さまにしながらバンバン叩いた。
「どっ、どうしよう....私のろっくんが逃げちゃたよぉ...」
俺はここにいるのに!!どうしよう、大声で叫んで気づいてもらった方がいいのか?それともこのまま隠れ続けて本当に逃げ出した方がいいのか?俺は迷った。こんなつもりでミニチュアハウスを出たつもりではなかったのに、、
とりあえず、俺はベッド下に駆け込み、隠れた。そして、この後どうするかを考えた。ベッド下から葵の足首までが見える。
「ろっくん〜怖くないから出ておいでぇ、ねぇてばぁぁ、、」
葵は必死に部屋中を探していた。机の下、本棚の後ろ、クローゼットの中と。
ベッド下もいずれ見つかるだろうと思った。俺はどうにかしてこの場を打開しようと思考回路を回した。そして、ベッド横にある葵の通学バックに目がいった。そこの中に入って隠れれば見つかるまい。そう思った。そしてベッド下を全速力でバックに向かって走った!そしてバックにしがみつき、よじ登った。その瞬間、葵がこちらにきてベッド下まで顔を下げて確認するのが見えた。危なかった。あのままもたもたしていたら見つかっていたかもしれない。冷や汗をかきながらようやくバックの中へと潜り込むことに成功した。その後も葵はバックの中を調べることもなく、無事気付かれずにすんだ。そして時間はあっという間に過ぎ、8時ほどになった。
「本当にろっくんどこいっちゃたのかな...」
と言いながら葵は不満そうに登校の準備を進めていた。俺はバックの中の小ポケットへと潜り込んだため、教科書や参考書に潰されることなく身を潜めていた。そして、ようやく葵は家から出た。思ったよりも葵の歩く振動がズシズシと伝わってくる。夏のバックの中は蒸し暑く、耐えられなかった。とりあえず、俺は親友の悟に助けてもらおうと思った。その為にはまず葵のバックに入ったまま学校へ行き、悟の元へと行く方法が手っ取り早いと思った。
そして数分後、葵と炉駆は学校へ到着した。そして葵とバックの中の炉駆は教室へと向かって行った。