葵の家
「みてみて、これが今日からろっくんのお家だよ!ちょうどいいでしょ?」
それは、玩具店でよく売ってる小さな人形のお家だった。
俺は葵に、机の横にあるその小さな家のドアの前に下ろされた。
そして俺は片腕でプラスチック製のドアを開けて中へと進んだ。
その家は小さな自分にとって丁度いい大きさで、キッチン、浴室、寝室にはベッドまでついていた。
もちろんキッチンの水道や浴室のシャワーなどは機能しないが、外見は十分でゆったり出来そうな雰囲気であった。
そして俺は混乱した頭と怪我した片腕で疲れきっていたので、寝室のベッドに吸い込まれるように倒れ込み眠りにつこうとしていた。
「どうかな?気に入った??」
葵の声が屋根を通り越して聞こえる。
だが意識が朦朧とし、返事を返す元気もなかった。
もういいや、、寝てしまえ、ほんとに疲れた、
そう思った。
すると、屋根が開き大きな顔で葵がこちらを覗いた。
「ねぇ、返事してよ!もしかして、寝てるの?」
俺は薄目で葵を見たが、疲れで体を起こすことができず、そのまま葵の言葉を聞き流した。
「まだまだ遊び足りないよろっくん、起きてよぉー!ねぇってばぁ!」
葵が駄々をこねはじめた。
だが、もうその時は俺はとっくに夢の中。葵の言葉を聞いてすらいなかった。
すると、俺の腹を大きな指でつついてきた。
「いてっっ、、やめろ、!!」
それでも葵はズンズンと俺の腹をつついてくる。
「痛いからやめろって!!」
葵はクスクスと笑った。
その後も家を揺さぶって地震を起こさせたり、俺が寝てるベッドごと高い所に上げたり、葵は俺に何度もちょっかいを出てきたが、全て我慢して結局やっと眠りにつくことが出来た。
なんだか今日は長かった。なんせいつもの日常がぶっ壊されて新しい生活が始まろうとしてるんだからな…
そして、長い長い1日は幕を閉じた。