葵の妬み心
登場人物:
清水炉駆
上田悟
如月葵
南夏奈穂
本題:
ジリリリリリ!
「んあー、、、」
今朝も不快な気分で目覚ましを止める。
今日も一日が始まると考えるとなんだか頭が痛い。
昨日、夜までゲームしてたからかな?
お腹がすいたので、朝食を食べに食卓へ向かう。
母は仕事をしていて、いつも朝は俺よりも早く出かけてしまう。
「炉駆、早く食べないとアンタまた遅刻するわよ?」
玄関から、母親の声がした。
「わああってるよ」
「今日は、母さん出張で帰ってこないから夜ご飯ちゃんと作って食べるのよー!」
そう言って母さんは、仕事に向かった。夜ご飯自分で作れだって?冗談じゃない!コンビニで済まそうー。
そう思いつつ、ニュースをつける。
ニュースキャスター)最近、超能力に目覚める人間もいると聞きますが、〇〇先生、これはどういったことなのでしょ...
パンが冷めてかたくなってるな。
不味っ!
パンは半分ほと残し、その後急いでサラダと目玉焼きを食べた。
さてと、朝食も食べたし歯磨きして顔洗って着替えて、学校いくか。
今日は遅刻しなさそうだな。
すぐに朝の支度を整えて、登校した。
夏。よく晴れた蒸し暑い日だった。
体の水分が気温に奪われそうだ。
そんな事を考えていると、
「おっ!炉駆ぅ〜!おはようー」
悟の声が後から聞こえてきた。
「おはよぉー。今日も暑いな」
悟は中学生になってから知り合ったが、今1番仲がいいと言っても過言ではない。
良い奴なんだ。
ゲームの話をしながら登校した。
悟とゲームの話で盛り上がると時間が過ぎるのが速く感じるんだぜ?
そして、あっという間に学校に着いた。
「今日は遅刻じゃなかったな」
「今日はってなんだよ!!」
そう。俺は学校に遅刻することが普通の人よりも多く、先生からも指導を受ける位のレベルだ。
母親が朝に厳しいのも分からんでもない。
教室に入ると、もう殆どの皆が学校に来ていた。
「あっ!ろっくんおはー」
「おお、おはよ」
クラスで一番可愛いと言われている女子がいる。葵だ。
他の男子からもモテていて、よく告白されるらしい。まあ、拒否してるんだろうけど。
「ろっくん今日は遅刻してないねー」
「だから、今日はってなんだよ葵!」
「えー!だっていつもの遅刻してるじゃん!」
「お前は、自分の身長の遅刻を気にした方がいいんじゃないのかなぁ?」
そう。俺が身長175cmに対して、葵が155cmなのだ。俺から見ても葵のつむじが見えるくらいの高低差があるのだ。
「っっっ!!(泣)」
葵が顔を真っ赤にさせて睨んできた。
「清水君ひっどーい!」
葵の親友である夏奈穂が俺の発言を注意した。
「夏奈穂も、俺より低いもんな笑」
「はぁ?成績はあんたより高くて頭の中身もあんたよりずっとありますぅー!葵ちゃん、あんな奴のこと気にしないでいいんだよ?」
「ううん、大丈夫。」
「くくくくwwww」
俺は小学校の頃から葵をずっとからかってきたが、やっぱり反応が面白くて飽きないなぁ!
おっと、朝礼が始まるな。
学校のチャイムがなった。
「起立ー!」
「姿勢!礼!おはようございますー」
週番は俺と葵。
今週は、葵と週番かぁー。面倒くさそうだな、、、
そう思いつつ、号令をかけた。
先生の話が始まる。
これが、まあいつもの流れだ。
そして、今日もダルい授業を受けて、飯食って、掃除して、授業受けて下校するといういつもの流れになる...ハズだったんだ。
窓から微かに吹きかける生温い風。
朝から鼓膜を叩く蝉の声。
今日の朝からちょっといつもとは違う空気を俺は感じていたんだ。
一二三時間目は英語、数学、公民の授業だった。爆睡した。先生の話を聞いているとだんだん眠くなってくるだろう?そして、待ちに待った四時間目の体育!!今日は男女合同レクリエーションらしい。
「今日の体育のレクリエーションって何すんだ?」
俺は悟に聞いた。
「男女対抗ドッジボールらしいよ。先生が今日休みで普通の体育出来ないらしい。男子が勝つに決まってるのにつまんねぇの。」
ドッジボール!?
久々だなぁー。小学校以来か?
そして、体育。やはりドッジボールであった。男女がコートで分かれてゲームが始まった!!
当たり前だが、男子が優勢。
女子は避けてばかりだが、コントロールをきかして俺達がどんどん当てていく。そして、外野からのボールを俺がキャッチ!残りの女子も残り僅か。おっ!葵がいるじゃねぇか!今朝、遅刻してないのをバカにしたお返しだぜ!
そう思い、葵に向けて全力投球した。
すると、バコンッッ!!!といういい音をたてて葵に直撃。
「痛いっ!!」
そのまま、葵は倒れ込んだ。
本当に貧弱な奴だ。
だが、ドッジボールの試合は葵のことなど気にせずに続く。
葵は、よなよなしながら外野へと向かった。結局、男子が圧勝して体育の授業は終わった。
「炉駆ぅー、流石にさっきのは女子にとっては痛かったんじゃねぇの?しかも如月さん。」
「そ、そうか?」
男子が体育服から制服に着替えている時にそういった話題がでた。
「流石にやりすぎたんじゃね?」
「そうかぁ。それならすまなかったなー」
他の連中に指摘されたが、まぁ今後気をつければいいだろ。
そう思った。
そして、無事体育が終わり飯が美味かった!!
そして、掃除も五六時間目も眠くなる授業を受けて、今日も1日が終わった。
そして、放課後。俺と葵は週番で黒板を消さなければならない仕事が残っていた。これは大変で、綺麗に黒板消しで黒板を綺麗にしたあと、雑巾で拭かなければならないという大作業だ。これは、めんどくさいなぁ。
なんて、思いながら黙々と黒板を綺麗にしていた。教室には俺しかいない。
葵は何故か来ない。まったく!明日、散々文句言ってやろう。なんて思っていた。
黒板も綺麗になり雑巾がけも終わりに近づいてきたその時、後から足音がした。そして、
「ろっくん、ごめんー!部活してきちゃった!もしかして、もう終わった?」
葵が遅れてきた。
「おいおい、勘弁してくれよー!
全部1人でしたんだぜ?全く!まぁ、いいよ。終わったことだし。明日は遅れんなよ?」
俺はそう言って、帰ろうとした。
すると、
「ろっくん、ちょっとまってよ…」
葵が俺を止めた。
俺は、早く悟とオンラインゲームがしたかったからサッサっと帰りたかったのになんだよ?と思った。
「んだよ?」
「あ、あ、あのさ。わ、私の事、ど、どう思う?」
「んー。別に何とも思わないけど?」
それは、本心であった。葵を可愛いと思った事はあるが、恋愛対象ではなかった。そもそも、恋愛そのものを考えていなかったのだ。
「そ、そう...」
葵はそう言った。
そして、俺に近づいてきていきなり俺の頭に手を乗せた。
「...........................???」
俺は、ここで記憶が途絶えた。
何も覚えていないんだ。
一体何が起こったのか、葵が俺に何をしたのかも分からなかった。
そんな事を考える余地もなく、俺は目が覚めた。
そこは、教室だった。
さっきまで俺が綺麗にしてきた黒板もある、いつもの教室だった。
でも、、、、、
天井がやけに高い。目眩がする。
椅子や机が普段より大きく見える。
一体なんなんだ?
そう思って俺は立ち上がった。
俺は、驚いた。
いつもイジって遊んでいた葵が、巨大化していたのだ。
葵は、俺を見下ろしていた。
「やっと、気づいた?くふふ。
ろっくんたら、そんなに小さくなっちゃって。可愛い♡」
俺はその時気づいた。
そう。
葵や机や椅子が大きくなったんじゃない。
俺が小さくなったんだ。
葵に小さくされたのか?
俺は混乱した。状況が、掴めなかった。
しばらく考え込んでいると、
「ねぇ!ろっくんってばぁ!!!」
と、葵の大きな声が。
耳に響く。痛い。
俺は、葵を見上げた。
恐ろしかった。
俺は恐らく1センチくらい。
葵が、本当にビルのように大きい。
俺は思わず、倒れ込んだ。
腰を抜かしたのだ。
そして、俺が倒れ込んだ直後、葵は大きな足で倒れ込んでいた俺の腕を踏みつけた。
「ろっくんは、私の事嫌いなんでしょ?しかも、今日の体育の時のボール痛かったんだけど。」
「っっっっっっ!!!
痛い!痛いよぉっっ!!」
徐々に俺の腕を踏みつける力がましていく。体重をかけていっているのだ。
「痛いよっっっ!!腕がちぎれるよぉっっっっっっ!」
それでも葵は足を引かなかった。
「ねぇ、ろっくん。私の事、き、ら、い、なんだよねぇ?」
「嫌いじゃねぇよ!友達じゃねえかよ!!で、でも、、、、、なんでこんなことするんだよっっっ!!!」
葵の足の力は止まらない。
俺の腕は本当にちぎれそうだった。
「やめて欲しいのぉ?ろっくんったら、ワガママねぇ。じゃあ、私の事大好きですって言ったら足をどけてあげるわ。」
「ぐぅぅぅ、、、、なんだとっ!?
お、俺は、葵と付き合おうなんて思ったこともないし、、、、恋人でもねぇっ!な、仲の良かった友達じゃねえのか?」
「はぁ?何それ?」
葵の足の力は最高まで達した。
葵はほぼ全体重を小さな炉駆の腕にかけたのだ。
「っっっっっっっっっっ!!!!!いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!葵ぃ、、、、!!許してくれぇ、、、、」
「だ、か、ら、早くいっててば。」
「ぐぅぅ、、、、あ、葵が、、、、だ、大好きで、す、、、、」
「もうっ。ろっくんたら、最初から本当の事を言わなきゃ駄目でしょ?」
そう言って、葵は俺の腕から足をどけた。
「ぐぅぅぅああああ!!!」
腕は動かなかった。真っ赤で血まみれ。骨は砕けてそうだ。分からない。
そして、葵の事を大好きだと言ってしまった。しかし、そうするしか助かる方法はなかったのだ。
「葵!!俺を小さくしたのはお前だろ?元の体に戻しておくれよ!!」
俺は、早く元の体に戻りたかった。
正直、葵が怖い。
この体格差では、いつ踏み潰されるか分からない。
「そうだよっ!あのね、私超能力に目覚めたの。それで、人間を小さくすることが出来るようになったのよっ!それで、ろっくんは、私が縮めたよっ!
だって、身長高いからつて偉そうにしてたじゃない。今度は私の番よね?今は私の方がろっくんよりもずっと大きいんだからね?」
「もう、いいから戻してくれってば!!」
俺は腕を押さえながら最後の力を振り絞って声を張った。
だが、
「あれ?誰に対して口聞いてるのかしら?虫けらがこの私に命令しないでくれる?あんまり言うこと聞かないと、今度は踏み殺してあげるからね?」
葵は、俺の望みを断った。
元の体に戻りたいが、葵の言うことを聞かなければ踏み殺されてしまう。仕方がないが、葵の言う通りに動くしかないな。でも、絶対スキをついて元の体に戻ってやる。そう思った。
「あれ?返事もできないの?体も頭も虫けらなのね。もう、踏むわよ?」
「葵の言うことは何でも聞くから、殺さないで下さい。お願いします。」
俺は小さな体で土下座した。
葵にとったら小さな背中だろうが、俺にとっては大きな恥じらいだ。
幼馴染の同級生に頭を下げるなんて情けない。恥ずかしかった。
「本当に!?よしよしいいコね♡
じゃあ、言うことちゃんと聞くんだよ?」
命乞いした。とりあえず良かった。
すると、葵はしゃがみこみ俺の背中を摘み上げた。そして、俺を掴んだままどんどん上昇。そして、葵の顔の前まで手で摘み上げられた。
「わぁ!!ろっくん本当に可愛いよ♡小さくて私の言いなり!玩具みたいね♡」
「、、、、」
「それじゃあ、もうそろそろ帰るよ。ろっくんは私の家にお泊まりねっ!」
そう言って、葵は俺をスカートのポケットに詰め込んだ。そして、ドスンドスンと大きな音をたてて歩き始めた。
葵のポケットのなかは、ムワムワしていて蒸し暑かった。そして、微かに女の子の汗の匂いが鼻をつく。そういえば、部活帰りとか言ってたな。だから、蒸し暑いのか。こ、これは葵の太ももかぁ。なんだか複雑な気持ちだな。っっっ!!腕いてぇな…
そんな事を考えていると、いつの間にか葵の家の近くに来ていた。ポケット内からスカート越しに薄く外の風景が見える。小さい時からよく葵の家では遊んでいたから、少しの風景を見ただけで葵の家の近くだと分かったわけだ。
そして、葵は家の鍵をあけ、家の中にはいった。
「ただいま、」
そして、しばらく歩くと葵の部屋らしき所に入り、葵がドアを閉めた。
そして、俺をポケットからつまみ上げて机の上に置いた。
こうして見てみると、本当に何もかもが大きい。そして、何より葵がとてつもなく大きくて怖かった。だから、俺はずっとビクビクしていた...
ここからが、真の地獄であったのだ。
【続く】