出会い
私立大九素高校。
けして「おおくそこうこう」ではない。
俺はそこの2年。東城 陶太郎
みんなからは名字と名前の頭を取ってTOTOと呼ばれている。
今学校では授業中。
しかし俺は教室にはいない。
サボりではない。
見た目ちょっとヤンキー入っているが
至って真面目学生だ。
では、何処にいるか?
厠だ。
…………トイレだ。しかも大。
一般的に、男子は学校でウンコをするには授業中が一番安全だ。
休み時間だとクラスメイトにからかわれるからな。
大概の男子は素早く便を済ませ、ウンコだと悟られないようするだろうが俺は違う。
最短でも20分はかかる。
だから俺の場合、授業中トイレに行くのは休み時間だけでは足らないからであって、
クラスの連中は俺がウンコしてるのに気付いているはずだ。
しかし、見た目が怖そうなのと
友人らしい友人がいないボッチなので絡んでくる奴はいない。
まあ、自己紹介はこんなものか。
ウンコの時間が長いと意味もなくこんな事を考えてしまう。
しかし今日は特に出るな。
ウンコに時間が掛かるのは大体2パターン。
中々出ないのとイッパイ出るの2つ。
俺は後者だ。
そしてようやく出し終えた。
「危ない、危ない。危うく形が崩れる所だった。」
愛着を持ってこう呼んでいる。
「マキポン」
ウンコでソフトクリームみたいな形にする。
俺のウンコでのこだわり。
だから敢えて和便器でウンコをする。
さあ、流すか。
?……なんだ?
上の方から視線を感じる。
気のせいだと思いつつ天井をチラ見した。
いる!!!!
気の弱い奴なんかは、気付かないふりですぐトイレを出るか、大声で叫ぶかではないだろうか?
しかし俺は天井の方をガン見する。
「なん…だと!?」
それは、トイレの仕切りの上でウンコ座りしてこちらを観ている。
頭にさっき俺がしたマキポンと似た形の被り物をしている。
逆三角形の眼らしき物二つと口辺りにサンタクロースみたいな立派な白ヒゲ。
上半身は裸にマント。
下半身は前垂れに「王」と書かれたフンドシ一丁。
身体はボディービルダーみたいにムキムキ。
俺の知る限り、学校にこんなマッチョマンはいない。
つまり、イタズラにしても学校の人間ではない。
そう、只者ではない。
「見事なウンチだ。」
意外と声のトーンが高いその只者ではない者は言った。
俺は言った。
「もう一度言う。なん…だと!?」
「?」
只者ではない者は首を、傾げる。
「お前、人がなん…だとと言っているんだぞ。」
平静を装っていたが多分声は上ずっていただろう。
「?そこでワシはどうリアクション取るべきじゃ?」
立派な髭を触りながら言う。
・・・偉そうだ。しかし、
「そ、そりゃあ、自分の名前名乗るんじゃないのか?」
根が真面目な俺は質問に思わず即答してしまった。
「そこは、質問を質問で返すな!と、言うべきなんじゃないかのう。」
(チクショーーーーー!!!)
何この敗北感!!
「まあ良い。ワシはここから一兆光年離れた星のウンチ星から来たウンチ星の王、ウンチキングじゃ!」
何だその小学校低学年が適当に考えそうな設定!!!
誰がそんな話信じるか!!!
しかし!!
それ故本当の話かも知れない!!!
そう思った俺は、
「そのキングが地球に何の用だ?」
「ワシは地球を救う為の戦士を捜しに来た。
ウンチの戦士、ウンチマンを!!!」
逆三角形の眼は本気の眼に見えた。
そして、自分が未だパンツを履かず、尻も拭いていないことに気が付いたのだった。