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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「殲滅」【第3ブロック・京香】

隣から歓声が聞こえてくる。

どうやら、他のブロックも試合が開始されたらしい。

第1ブロックはボスが居る場所だよな。

酷い事になりそうな予感しかしない。

俺は、そんな気がしたので第3ブロックの京香が

居る試合を観戦する事にしたんだ。


会場は超満員で座る事は疎か立って見るのも辛い。

俺達は参加者スペースがあるから、それ程辛く無いが、

奴隷の人間達は辛そうだ。主に精神面で。

そりゃあ、そうだろうな。人間達からすれば

この大会は死罪と同等なんだから。

俺が人間の立場なら卒倒しているだろう。

頑張れとしか言えないな。


さてさて、京香のブロックも始まったみたいだし

試合に集中しよう。


初老のオーガ族の男性が開始の合図をすると

獣人達は嫌な笑みを浮かべながらジリジリと

近づいて来た。


「すぐに、殺ったら勿体無ねぇぜ。じっくりと

 甚振ってやらねぇとな」


「そうそう!だから簡単には死ねねぇぜ~」


両手剣や槍を武器にし体には上質な革鎧や

フルプレートの鎧を装着している者達が本当に

楽しそうに声を出す。

対して人間側は、既に戦意喪失状態。

皆、ガタガタと震え、とても戦闘が出来る状態では無い。

そんな、者達を見て京香は軽く溜息を出す。


(はぁ~…戦いもしないで戦意喪失かぁ。でも、仕方ないよね。

彼等は奴隷であって兵士じゃないし、こんな殺し合いに出されたら

震えるのも無理ないかぁ~。

けど、女の私が前に出てて男が出ないってのも考え物よねぇ。

少しぐらい私を守る気概がある奴居ないのかな~)


と思っていると一人の人間が京香の前に出て来る。


「お前等!ビビるな!女が前に出てんだぞ!」


おお~、勇敢な男性が出て来たわ!素敵!

服装から見て、冒険者か傭兵かしら?他の人間より

装備が良いし、そりなりに優秀なのかもしれないなぁ。


「俺が先陣を切る!お前等は俺に続け!うおおおお!!」


ザシュ!ドシュ!!


勇敢に突っ込んで行った男性の心臓に獣人の槍が

突き刺さり両手剣を持っている獣人が首を跳ねる。

ドシャっと崩れ落ちる肉塊と化した男からは血が

吹き出て闘技場を赤く染め上げる。


「やっべ!勢いで殺しちまった!」


「おいおい!何してんだよ。お前達よ~」


ケラケラと何事も無かった様に笑っている獣人達。

人が殺され沸き立つ会場の観客。

勇ましい人間が殺された事によって完全に心が

折れた人間チーム。

その光景が、余程気に入ったのだろう。

一人の獣人が面白い事を良い始めた。


「お前達にチャンスをやろう!もし、一撃でも誰かに

 攻撃が当たれば命は保証してやる。どうだ?

 少しは希望が持てるだろう。良いよな?審判!」


その提案を聞いた初老のオーガ族の男性は、

少し考えた後に静かに頷いた。


「よーし!人間共どっからでも掛かって来な!

 更に人間の女は一撃だけ好きな所を攻撃していいぜ。

 勿論、抵抗しないから全力で構わねぇ!」


その言葉に初老のオーガの眉がピクリと動く。

それに気付いている者は居ない…京香以外は。


「あらっ?優しいのね?一撃入れさせてくれるなんて」


「ガハハ!女には優しい主義なんでな!どうする?

 お前から来るか?」


そうねぇ…とチラリと同じチームの人間に眼を

向けると先程よりかはマシになっており、ボロボロの

剣や槍を構えていた。


「私は最後で良いわ。そっちの方が楽しめるでしょ?

 色々と…ね?」


唇をゆっくりと舌舐りする京香は妖艶な雰囲気を出し、

その雰囲気に当てられた獣人達はゴクリッと喉を鳴らす。


「クックッ…ハハハハ!!良い女だぜ!人間にしとくのは、

 もったいねぇ!待ってな!すぐに良い目に合わせてやる!」


そして始まる試合と言う名の、獣人達の遊び。

1人…また1人と攻撃を躱されボロ雑巾の様に

朽ち果てていく人間達。

そして、京香以外で立っている人間は居なくなった。


「待たせたな!お前が最後だぜ。覚悟は出来たか?」


「いつでも覚悟は出来てるわよ」


「言うじゃねぇか!ますます良い女だぜ!ゴミ共が

 死んでいく中で顔色一つ変えないなんてなぁ。

 …さぁ!何処でも好きな所を攻撃しな!

 それが終わったら会場の連中に見せつけてやるぜ!

 色々とな」


後ろに控えている獣人達も眼をギラつかせながら

京香の身体を舐める様に見ている。

会場も興奮と熱気で大盛り上がりだ。


京香は不意に持っていた分銅を地面に落とす。


ドゴオォオォン!バギッバキッビシッ…。


分銅を落とした瞬間、鳴り響く轟音。

強固に作られている闘技場の床は分銅を中心に

小さなクレーターが出来ており闘技場の端まで

亀裂が入っている。


その光景を見て先程まで熱気に包まれていた会場は

沈黙し、敵の獣人達も唖然とした表情で立ち尽くす。


「一撃……良いのよね?」


京香の腹の底に響く様なドスの効いた声に我に帰る獣人。


(ば…馬鹿な!!何だ、あれは!?女の癖に一体どんだけ重い鉄の塊

 持ってやがる!!いや、そもそも有り得ないだろ!!

 あんなもん喰らったら俺でも不味い!!

 一撃を入れさせてやる約束なんて知った事か!)


直様、剣を抜き京香に襲い掛かる獣人だが、既に遅い。


「嘘吐きね」


分銅が猛スピードで獣人の顔面に飛んで行く。


パッキュ…。


音と共に砕け散る肉片が闘技場の床に散らばる。

獣人の男は、ヨタヨタと数歩歩きながら持っていた剣を

落とす。


『きゃああああああああああああ!!』


会場の至る所から悲鳴が聞こえる。しかし、無理も無い。

さっきまで威勢が良かった獣人の下顎から上が綺麗に

砕け散っており原型が無いのだ。

当然、敵の獣人も顔が引き攣っている。


「楽しみましょ」


邪悪な笑みを浮かべながら鎖鎌を操る。

ブォォォォォォンっと砂煙が巻き起こりそうな程の速さで

操る分銅は既に獣人の動体視力でも追えない。

何処から攻撃が来るか予想も出来ず盾で防ごうと

するが盾ごと破壊し相手を完全に破壊する。

既に、2人が肉の塊になった。


今、京香が持っている分銅の重さは約10tの

重さになっている。

摩訶分銅と言う京香が持つ魔道具は持ち主の意のままに

重量を変化させる事が可能だ。

そして持ち主には重量を感じさせない。

片手で覆える程の鉄の塊が10tの重さ。

想像を超える破壊力だろう。

それが目に見えぬ速度で振り回され自分に

向けられる恐怖。恐ろしい事この上無い。


ブォン!!と鎖分銅を闘技場の床を抉る様に振ると

抉られた破片が、まるで弾丸の様に獣人達に襲い掛かる。


「ぎゃあああ!!」

「いでぇぇ!!腕がぁ!!」

「ゴフゥオ!!」


叫び声を上げながら武器を手放すと、直様、京香が

操る分銅が、頭や身体を正確に…まるで意思が

有るかの様に砕いていく。

その余りにも高い破壊力で砕かれる死体は

凄惨そのもの。

会場の至る所から嗚咽が聞こえて来る。


「アハハハハ!アハハハハ!!次は、鎌行くよ~!」


狂気じみた京香の笑い声と明らかに異常な破壊力を

持つ攻撃に心が折れかけていたが違う武器の攻撃を

すると言う京香の言葉に内心、安堵する。


別の攻撃なら何とか耐えられるかもしれない…と。

そう思った矢先、5人の獣人達の上半身だけが

空中に飛んでいた。


何故?どうして俺は飛んでいる?あ…あぁ…。

あははははははははははは!

飛んでるのは俺の上半身だけだ~!あはは!

小さい鎌がデッカくなって!アハハ!!


最後に5人の獣人が目にした光景は自分の身体の断面図と

先程まで対して大きく無かった鎌が、まるで死神の大鎌の

様に変わっていた光景だった。


第3プロックの闘技場は、まさに死屍累々であった。

砕け散った肉片、ばら蒔かれた内蔵、床を赤く

染める夥しい量の血と噎せ返る様な匂い。

そこに立つのは1人の人間。


「勝者、キョウカ・ケンザキ!」


初老のオーガは声を大にして宣言する。

しかし、会場からの戦いを称える歓声や黄色い声援は皆無。

皆、顔から汗が吹き出し青くなっている。

だが、京香にとっては、それこそが甘美!

相手が恐怖に飲まれていく様子が堪らなく快感なのだ。

恐怖の大きさこそ自身の強さ!

京香は、そう思っているのだ。


「お強いですな」


初老のオーガが話しかけて来る。


「私なんて、まだまだよ~。上には上が居るわ」


「ご謙遜を」


「…そーゆう、ナイスミドルな貴方も相当強いじゃない?」


京香は戦いの最中ずっと、この審判の目線が

気になっていた。

下心を持った下卑た視線では無く、鋭く研ぎ澄まされた

視線。

この男からは、人間だからと言う油断など一切感じなかった。


「ふふっ…私も、まだまだです。上には上が居ります」


「アハッ!謙遜しちゃって」


「いえいえ…はっはっはっ」


「アハハ~…」


「………」


「………」


二人の間に異様な間が生まれる。

と同時に二人は、お互いの間合いを一気に縮めた。


ドゴッ!ドシュ!!


初老のオーガの男性は左腕で京香が振り下ろした

鎌を受け止め京香の顔目掛け貫手を打つ。

その貫手を寸での所で躱す京香。


余りの早業に会場で見ていた者達も一体何が起こったのか

目を白黒させている。


「やっぱり、強いじゃん」


京香の頬からツーッと血が流れ落ちる。


「貴方もですよ」


そう言うオーガの足は闘技場に少しメリ込んでいる。

京香の力が常軌を逸している証拠だ。


「しかし…審判への攻撃行為は戴けせんね」


「御免なさいね。興奮しちゃったみたい。許してくれると

 助かるわ」


「…女性の頼みなら仕方ないですね」


ふぅ~と溜息をつき戦闘体勢を解除する。


「貴方、素敵ね~。名前聞いても良い?」


「……ダガールと申します」


「有難う!覚えておくね~」


タタッと後ろを振り向き闘技場を後にする京香。

そして自分の義眼を指でグルグルと回しながら興奮していた。

強者と出会った時の京香の癖である。


「良い人材、見~~~~~っけ!!」

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