表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
82/248

バベルの世界「出場」

皆さん、明けましておめでとう御座います(。´∇`)っ★

遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。

今年も読者の皆さん宜しくお願い致します。

それと、新しくブックマーク&評価して下さった方、誠に有難う御座いますヽ(;▽;)ノ

皆さんのお陰でモチベーションがあがりまっせー!!

武闘大会当日。この日、ファルシア大国はお祭り騒ぎだ。

あらゆる種族が道を埋め尽くし、皆、闘技場を

目指している。

各国の腕自慢や賞金稼ぎに冒険者達。

皆、様々な武器や装備を装着している出場者達だ。

当然、その勇姿を見ようと平民に貴族、各国の重鎮達も

来訪するので、とんでもない人数だ。


娯楽が少ない世界なら当然この様な祭りを

皆、見逃す筈がない。

それに、この武闘大会は祭りだけで無く国力を他の

国に見せ付ける意味もある。

その為、開催される闘技場は職人により、

細かな彫刻が成され豪華絢爛だ。

そして驚かされるのが闘技場の大きさだ。


闘技場が建設された場所は平民街と貴族街の

境目に位置し20万人以上が収容出来る程、

巨大な円筒建築物だ。

そして、魔法による術式で強化されており簡単に

壊す事は不可能と言われている。


俺達は様々な種族達に混じって闘技場の前まで

行くと余りの巨大さに溜息を漏らした。


「やっぱ…でけぇな。久しぶりに来たぜ」


「おー!ガルちゃん初めてじゃないんだ!?」


俺の言葉に反応しテンション高めの京香が食いついて来る。


「まぁな、今回で3回目だけど…出場は初めてだよ…はぁ」


今から自分が、この闘技場で戦うとなると気が滅入る。

セイント王子に啖呵切った時は頭に血が登りすぎて

良く考えて無かったけど冷静に考えたら、とんでもない事を

してしまったものだ。溜息が止まらねぇよ。


「なーに、溜息付いてんのよーー!何とかなるってー」


「そっすよ…。それに、あの時のガルさん…格好良かったっすよ」


「だねぇ、ガル君にしては格好良かったよぉ」


……そ、そうかな…。へへっ、ボス達に褒められると

悪い気はしないな。

昔の俺なら、人間に褒められたって全然嬉しく無かったけど

大分丸くなったもんだ。

それに、俺より凹んでいる奴もいるしな。


「何故…俺の様な非戦闘員まで……」


肩を落とし項垂れているバベル。

今回の出場メンバーは最初、ボス、京香、ガストラの3人と

リー、ガルの計5人の予定であったのだが、

バベルが出場しなければ参加資格無しと小さな文字で

記載されており急遽、バベルも参加する事になったのだ。


因みに、閻魔、山王、ツヴァイも参加したいとゴネたが、

アジトの守りに専念する様にと言われ泣く泣く辞退した。

まぁ、ぶっちゃけ参加しても良かったのだ。

アジトには、訓練されたゴブリンにバブーンも居るし、

プーもノルウェも居る。

だが、念には念をと言う事で今回のメンバーだ。


「な、なぁ、ボス?マジでバベル出すのか?

 一応、護衛対象なんだろ」


「ん~?あぁ~…ガル君は知らなかったねぇ。

 まぁ、大丈夫だよぉ~」


ボスの言葉が若干疑問に感じる。

知らない?何が?

いや、まぁ…バベルの事は知らない事だらけだが…。

それと大会が大丈夫って、どーゆう事?

なんて考えている内に闘技場の受付にやって来た。


バベル達の代わりに羊皮紙に名前を書いていると、

周りの参加者が好奇な目で俺達を見ている。

中には、明らかに小馬鹿にしたように笑っている者や

指を指している者達まで居る。

はっきり言ってメッチャ気分悪い。

多分、バベル達を知らない連中だろう。まぁ、仕方ないか。

俺達の悪名はアテゴレ地区には響き渡っているが、

平民街や貴族連中で知っている者は少ないだろう。

冒険者達も噂程度なら知っている者も中には居るようだが、

所詮、噂が誇張された物だと鷹を括っている連中ばかりだ。


ただ、たまに明らかに俺達を見て顔を真っ青にしている者も

居たけどな。


名前を書き終えて受付に指示された場所に向かおうと

したら、やっぱりと言うか当然と言うか絡まれた。


「へへっ、おうおう!随分、クセェと思ったら人間

 じゃねぇか?何で、こんな場所に人間が居るんだぁ?」


上等な革鎧を着込み背中には巨大な大剣を背負った

筋肉隆々の如何にも脳筋な獣人がニヤニヤしながら

近づいて来た。


「ああ~、わかったぜ!俺達に甚振られに来たんだな?

 弱いってのは罪なもんだ。

 お前達人間は俺達に甚振られるだけに存在してんだもんな!

 おおーい、お前等、この不幸な人間達に感謝しようぜ。

 俺達の玩具になってくれんだからよ!ぎゃはは!!」


周りに居る参加者にも聞こえる様に中傷すると、

皆、同調する様に笑い始めた。


「うふふ、可哀想ねぇ」

「ギャハハハ!一瞬で殺してやるぜ~」

「見てよ。あの子、メンバーが居ないからって人間となんて

 参加する気よ」

「ふん!大会の質も落ちたものだ!」


その言葉に、俺達以外の人間の参加者達も苦虫を

噛んでいる様な顔をし俯いている。

その小馬鹿にした態度に段々と頭に血が登って来るが、

次の光景を見た瞬間、冷静になった。


ゴキンッ!!


と音がしたと思ったら先程の脳筋の足が有り得ない

方向に曲がっていた。

ガストラが脳筋の足を折ったのだ。

一瞬、何が起こったのか理解出来なかった脳筋だが、

すぐに激痛が襲い、のたうち回っている。


「ぐおああああ!!て、てめぇぇ!いきなり何し…グフッ!?」


床に倒れ怒鳴り声を上げる脳筋の首を踏み言葉を

遮るガストラ。


「……結構、簡単に折れるっすね」


「グッエ!は、離し…やが、れ…ググッ、息が…」


「…首も簡単に折れるかもっすね?」


そう言いながら徐々に力を込めていく。


あ、あれ?ガストラって、こんなに好戦的だったっけ?

何か今のガストラ凄い怖いんですけど。


「この様な下衆、殺した方が宜しいのでは?」


冷酷な事を涼しい顔で言ってのけるリー。


「だねぇ。後々、面倒になるのも嫌だしねぇ」


リーに賛同するボス。

リーは、ボスに賛同されたのが嬉しいのか「ボス様…」と

恋する乙女の顔でボスを見ている。


「じゃ…、殺すっすね」


ガストラも一切躊躇せず足に力を入れ始める。


「辞めなさい!これ以上の暴力行為は失格とみなしますよ!」


声を上げたのは先程、俺達を担当していた受付嬢だ。

彼女は毅然とした態度でガストラに歩み寄ると

腰に下げていたレイピアを抜く構えをした。


「私は、これでも元騎士団隊員です!これ以上、

 問題を起こすような力ずくで止めさせてもらいます」


おお!この受付嬢、元騎士かよ。

まぁ、こんな事を想定して、それなりの手練を置いておくのは、

当たり前か。

しかし……、この女、本当に何も解ってねぇんだな。


「殺せ」


べキンッ!!


バベルが言った言葉を忠実に再現し脳筋の首をヘシ折る。

一瞬、ビクンッと身体が跳ね、すぐに動かなくなった。

その光景を信じられない様な顔で見ている参加者達。

勿論、受付嬢の顔色も非常に悪い。


「な…なんて事を……」


「これで俺達は失格か?ただな~、俺達を招待した

奴が黙ってないと思うが?」


ツカツカと受付嬢の所まで歩いていき招待状を手渡す。

その招待状に目をやると驚愕する。


「これは…お、王族の紋章……差出人がセイント様…」


差出人の名前と王族の印が押されている羊皮紙を

見てドンドンと顔色が悪くなる。

当然だ。

王族に招待された者を一介の受付嬢が出場停止になんてしたら、

それこそ大問題だ。


「わ…解りました…今、見た事は不問に…します」


「賢明な判断で助かるよ」


そう言って何事も無かった様に、その場からバベル達は

歩いて行った。



◇◇◇◇


バベル達が待合室に去っていった後が、大変だった。

10数人の参加者が急に棄権を申し出たのだ。

多分、バベル達の事を知っている者達だろう。

全員、真っ青な顔をして棄権の手続きを行っていた。


勿論、バベル達の事を良く知らない参加者から見たら

異様な光景でしかない。

中には、人間にビビった臆病者なんて言う奴も居たが、

あまりにも全員が鬼気迫る顔をしていたので只事では

無いと思った参加者達が手続きをしている連中に話しかけた。


「やぁ、君達、随分慌てて居るみたいだね?

 あの人間達を知っている様だったけど?」


一番最初に声を掛けたのは、緑色で民族的な衣装を

身に纏っている長身で細身な男性だ。

髪は金髪で後ろに緩く纏め切れ長の目に整っている顔立ち。

そして、特徴的な尖った耳。

エルフだ。


「そうじゃな。何を慌てておるんじゃ?」


エルフの横で話しかけて来たのは、身の丈ほど有る

棍棒を肩に背負っている。

身長は低く、ずんぐりむっくりとした体型だが

はち切れんばかりの筋肉の鎧に覆われ

顔の半分が髭によって隠されている。

姿を見れば一発で解るドワーフだ。


他にも興味有りげに棄権する参加者に質問する

参加者達。その中には先程の受付嬢も居た。

余りにも、しつこい参加者達に折れたのか

溜息を付きながらバベル達の事を語り始める。


アテゴレ地区で起こった凄惨な事件の数々。

その余りにも度を超えた残虐性と冷酷無比な

人間達の話を聞いていく内に全員誰も声を発せず

険しい顔になっていく。


「これが俺が知っているバベル達がしでかした事件だ。

 懸賞金が全員で金貨2万ってのも頷けるだろ?」


棄権する参加者の内容に絶句する者達。

因みに懸賞金の件は、アテゴレ地区全域と平民街の

一部にしか配布されていない。


「…信じられません…あの騎士団隊長クラスから

 逃げるだけでも奇跡的なのに…しかも…

 ウィンザー隊長に勝つなんて……人間が…」


その内容が信じられなかったのだろう。

彼女は3年間騎士に所属し隊長クラスの強さを嫌と言う程

知っていた。

その隊長が、僅差では無く圧倒的の差で負けるなんて

認めたく無かった。


「…ハハッ、だよな。皆、最初は信じられねぇんだ。

 アテゴレの連中もそうだった。

 たかが人間風情が!ってな。

 で、舐めて掛かって行った奴等は全員死んだよ」


乾いた笑いを出しながら水をグイッと飲み干す。


「ふむ…大体の話は解ったよ。けど、強いと言っても、その…

 火を吹く魔道具だっけ?それさえ見切れば倒せるんじゃない?

 ほら、僕みたいに剣技に優れているエルフとかさ」


美形のエルフの言葉に半数近くの者達が頷く。

しかし、棄権する参加者達全員が警告する。


「あんた…エルフだよな。そんな考えを持っている時点で

 無理だ。確実に殺される。

 あんた程じゃないが知り合いでB級の戦士タイプの

 冒険者が居たんだ。剣もそれなれに腕が立つ奴だったよ」


「居た?」


過去形で喋る言葉に引っかかった。


「死んだよ。バベルの近くに居た短髪の胸がデカイ女が

 居たろ?そいつと戦って……いや、戦いなんて呼べねぇな。

 一瞬で喉笛掻っ切られて瞬殺だ」


その言葉にエルフの男性は、うぅん、と唸り声を上げ

押し黙る。

B級の冒険者となれば一流言っても過言だは無い。

そんな奴が瞬殺なんて明らかに異常だ。


「そもそもよ、バベル達と俺達では強さの根底が違うんだ。

 あ~、別に、あんた等が弱いとは思ってねぇ。

 エルフの剣技は相当なもんだし、ドワーフの怪力も大したもんだ。

 けどな……あいつ等は…バベル達は違う。

 勝つ為、じゃないんだ。殺す為なのさ。

 相手を殺す為なら何だってする!女、子供も平気で

 人質に取って敵対する奴を殺すんだ!

 一切躊躇しない!殺す事に全く迷いが無いんだよ!

 解るか!?それが、どーゆう事か!?」


棄権する者達は身体が小刻みに震え始め

だんだんと語気が荒くなり始める。


「俺達は、人間があんなに恐ろしい生き物だったなんて

 知らなかった!!今じゃあ、アアル区域とシボラ区域に

 居る連中なんて誰も逆らわない!

 当然だ!逆らったり敵対したら間違い無く殺される!

 敵対した奴だけじゃねぇ!家族も知人も皆殺しだ!

 あの化物達の戦いを見て参加するなんて大馬鹿野郎さ!!

 俺は死にたくねぇ!」


フーッ、フーッと息を荒げる。

それ程、恐ろしい相手なのだろう。

だが、同時に疑問が浮かんだ受付嬢が話しかける。


「では、何故、逃げないのです?それ程、恐ろしい

 人間なら逃げ出す者も多いでしょう?」


当たり前の疑問だ。それだけ恐ろしい思いをしたなら

逃げる事だって考える。


「……へ、へへっ、何でかな…バベル…いや、あの方の

 言葉を聞くと従わないといけなくなるんだ…。

 言葉が…声が頭にずっと残って……どんな事でも

 しちまいそうなのさ。

 俺は…ダチを売った…。あの方を襲撃するなんて

 言うから…情報を売ったのさ。そしたら…

 金貨10枚も渡してくれてよ…。けど、ダチ達は

 全員殺されちまったよ。

 その家族も全員……。金貨10枚の代償が20人以上の

 死人だ…。もう後戻り出来ねぇ」


ゴクリッ


全員が恐ろしい実態に喉を鳴らす。

度の超えた恐怖と甘い蜜を匠に使用した完全な恐怖統治。

しかも洗脳や暗示の様な事も施されている様な感じだ。

間違い無く只事では無い。

棄権する者達は最後に「精々、死なねぇようにな」と

言って去っていった。


だが、此処に居る者達は幸運だろう。

戦う事になるかも知れない恐ろしい人間の事が少しでも

解ったのだから。


残った者達は全員、あの人間達に対し油断しないように

気を引き締めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ