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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
81/248

バベルの世界「挑発」

最近、仕事が忙しくて遅くなりましたm(_ _)m

楽しみに読んで待っていてくれている皆様申し訳ありません。

次回も、ちょっと遅れてしまうかと思いますが徐々にペースを

戻して行きますのでご了承下さい。


これからも宜しくお願いしますねヽ(;▽;)ノ

皆さん、良いお年を!!

イザベラとディドは、部屋から出て何やら

慌てた様に話している。

部屋には防音効果の魔法が施されている為、

俺でも良く聞こえない。

ただ、焦っている事だけは解る。


一通り話が終わったのだろう。扉が開く。


「セイント王子が来たらしい…来てくれ」


セイント王子…マジで!?王族がスラムの

冒険者ギルドに来たってのかよ!?

そんな事ありえんのかよ!


不安な気持ちを必死に抑えながら部屋から出て

階段を降りていく。

そこには、煌びやかな装飾が施されたフルプレートの

鎧を纏い腰に王家の紋章が彫られている剣を挿している

金髪の獣人が我が物顔でギルドの中心に座っていた。

そして椅子になっているのは……若い人間の奴隷だった。

セイントは俺達を見付けると口元を釣り上げた。


「ふん!人間風情が、この俺を待たせるとは良い度胸だな!」


待たせるも何も会う約束なんてしてねぇじゃねーか!

勝手に来て、早速これかよ!そんなんだから王族貴族の

評価が最悪なんだよ!


「誰だ?お前」


「貴様!!無礼だぞ!」


セイント王子の護衛であろう兵士が剣に手を掛ける。

そんな兵士達をセイント王子は手で制止した。


「構わん。所詮、低俗な人間の言動だ。お前達も誇り高き

 大国軍人なら矮小な存在相手に一々腹を立てていたら

 身体が持たんぞ」


「はっ!お心遣い有難う御座います!」


セイントの言葉を聞き剣から手を離し後方に下がる。

その動作から多少訓練されている兵士なのだろう。

今まで会ってきた兵士と違い後ろに下がった後でも、

俺達の動向を観察する様な眼で見ている。


「さて、貴様達の様な屑に名を語る義理は無いな。

 手紙の差出人とだけ言っておこう。

 光栄に思え!我が直々に返答を聞きに参ったのだ」


ふん!と口元を釣り上げながら胸を張る。


やべぇな…多分、バベルが一番嫌いなタイプだ。

今までバベルに付き合って来たが、こういうタイプの

奴は、何人か居た。

ゴロツキや商人に冒険者…相手が人間ってだけで

自分が優位だと勘違いしている馬鹿共。

そして、洩れなく全員地獄行きになっている。

だけど、今回の相手は王族だ。貴族相手でもメンドくさい事に

なるかもしれないのに王族に手を出したら

待った無しで反逆罪決定だ。

下手したらアテゴレ地区全域に攻めて来るぞ。


ハラハラしながらバベルを見ると表情一つ変えず

口を開く。


「あぁ~、あの馬鹿な手紙を送った奴か。あんな

 くだらない催しの返答を聞きにわざわざ来たって事は、

 余程暇人なんだな。

 おおっと、返事を聞きに来たんだったな?

 答えは、お断り、だ。さっさと消えろ。

 馬鹿ってのは見ているだけで疲れるんだ」


バベルの返答に、その場に居た全員が凍り付く。

当たり前だ。公衆の前で王族に対し暴言を吐いたんだ。

普通なら、その場で処刑ものだ。

セイントも初めてこの様な物言いをされたのだろう。

さっきまでの馬鹿にした様な笑いが消え顔が真っ赤に

なり怒りの余り身体が小刻みに震えている。


「貴様…今、この場で殺してやろうか?」


血走った眼でバベルを睨みつける。


「はっはっ!何を怒っているんだ?俺の様な矮小な人間に

 一々腹を立てていたら身が持ちませんよ?王子様」


さっき自分が護衛に言った言葉を、そのまま返され

王子の顔が真っ赤を通り越しドス黒くなっている。

流石に王族相手に此処まで暴言を吐いた者は居ないのだろう。

後ろの護衛も今にもキレそうだ。


「くっくっくっ…ますます貴様等を出場させたくなった…。

 ただでは、殺さんぞ?我に対しこれ程までの屈辱を

 与えたのだ!公衆の前で両手両足を切り落とし眼を抉り

 臓物を奴隷の人間共に食わせてやる!」


完全にブチ切れている王子に解りやすく溜息を吐くバベル。


「だから、断ったろ?そんな催しには興味無いんでね。

 話は終いだ。お前達、帰るぞ」


煙草を取り出し火を着けようとした瞬間…。


「ふん!口では大層な事を言うが実際は怖いのだろう!?

 とんだ腰抜けだ!」


その言葉に、火を着けようとしていたバベルの手が

ピタリと止まる。


「この様な掃き溜めで少し名を上げただけのゴミが

 どんな者かと思ったが、ただの臆病者か!全く笑えるぞ!

 所詮、噂が誇張されただけだろう!

 こんな連中を危険視するなど騎士の連中も困ったものだ」


近くに置いてあった冒険者の飲みかけの酒を手にし

そのままバベルの顔に酒をブチ撒ける。

その瞬間、ボス、京香、ガストラが拳銃を構えるが

バベルが制止する。


「気にするな。丁度、酒が飲みたかっただけだ。

 これは王子の奢りって事で良いよな?」


頭からポタリッポタリッと雫を落としながら笑うバベル。


「はっははは!ああ!奢ってやる!」


そう言いながら、護衛に酒を取ってこさせドボドボと

何本もバベルの頭に掛けている。


ブチッ


「全く!主が此処までされていると言うのに貴様の

 取り巻きは静観しているだけか?

 主が腰抜けなら取り巻きも臆病者だな!?」


ブチッ、ブチッ


「この様な者達に敗れ言いなりになっているスラムの

 連中も同様だ!此処にいる獣人共は家畜以下だ!!

 人間に恐れを抱くなぞ恥を知れ!!」


その言葉に周りの冒険者達やアテゴレ地区の者達は

怒りの形相になっている。

しかし相手は王族。手を出せば間違い無く粛清だ。

だから全員、怒りを必死に抑えながら耐えている。

勿論、ボス達もだ。

バベルが制止しなかったら、とっくに王子を殺害しているだろう。

ガストラは怒りに震え、京香は下唇を噛み血を流しながら

我慢している。ボスに至っては顔に血管が浮き出ている。


俺?ははっ(笑)相手は王族だぜ?当然我慢………

なんて、出来る訳ねぇだろうがあぁぁぁぁぁぁ!!!


考える…と言うか考える事を辞めて俺は一気にセイントに

近づくと渾身の力を込めて顔面に拳を叩き込んだ。


「ぶべらっ!?」


セイントは間抜けな声を上げ後方に吹き飛ぶと何が

起こったのか理解出来ない顔をしていた。

俺の行動に全員驚愕しボス達も驚いた顔をしている。


「ガ、ガルちゃん!?何して!?バベルが手を出すなって言って…」


「うるせぇ!!!」


怒鳴り声で京香の言葉を遮る。

多分、今の俺は怒りでどうかしちまってんだと思う。

相手は王族だぜ?王族に手を出せば間違い無く死罪だ。

けど、そんな事がどうでも良くなる程、俺は頭に血が

登っていた。


「俺はなぁ!仲間が此処まで侮辱されて我慢出来る程

 大人じゃねぇんだよ!!

 それに何度も命を助けて貰った恩人を馬鹿にされて

 ブチ切れねぇ訳ねぇだろがぁあ!!」


全身の毛が逆立ち牙を剥き出しにして怒りを顕にする

ガルにボス、京香、ガストラは眼を丸くする。

当然、バベルも今まで見た事が無い程、眼を見開いている。


「き、貴様!?我を…我を殴ったのか!?父上にも殴られた事が

 無い我を!!

 こっ、殺してやる!貴様等全員皆殺しだ!!」


セイントは殴られた頬を抑えながら護衛に指示を出す。

その指示と共に護衛は剣を抜き切り掛ってくるが…。


ズドドン!ドンッ!ドンッ!


ボス達が放った銃弾が護衛の心臓と頭に命中し崩れ落ちる。


「な……なん…?何が……!?」


セイントは今起こった事が理解出来ていないのか上手く言葉を

発する事が出来ず狼狽している。

その光景を見ていた冒険者達やアテゴレの住民が

小さくガッツポーズをしたのは御愛嬌である。


「皆殺し?上等だぜ!この際、ハッキリ白黒つけようじゃねーか!

 テメーの大会に出てボコボコにしてやるよ!!」


言ってやった!もう後戻りなんて出来ねぇ!

セイントの馬鹿王子は「後悔させてやる!」なんて

三下みてぇな文句言って出て行きやがった。

ふん!ばーか!ばーか!ハハハ…ハハ…。


「ガル」


セイントが出て行って静寂の冒険者ギルドにバベルの

声が響き渡る。

声を聞く限り…かなりご立腹な感じだ。

勢いで言っちまったけど後悔なんてしてねぇ。

けど……怖すぎてバベルの顔を見れないぃ…。


「お前…俺は大会には出ねぇって言ったよな?なのに上司の

 言葉を無視して勝手に決めやがって。

 京香とガストラに言った事を忘れたのか?」


うぅ…とガルは俯きケモ耳がペタンと伏せている。

自慢の尻尾も内股で丸まって完全に萎縮しており、そんなガルを

心配そうに周りの連中が見ている。

冒険者ギルドに重苦しい空気が流れ誰も声を発しない。


ポンッ


ガルの頭にバベルが手を乗せる。


「…良くやった」


「えっ!?…えっ?」


バベルの意外な行動に皆驚きを隠せないでいる。

しかし、一番驚いているのはガル本人であり、キョトンと

している。

そんなガルを無視してギルド全体に聞こえる様に

バベルが声を出す。


「こいつの行動は無鉄砲で馬鹿な行為だが…仲間の為、

 に王族に喧嘩を売った事は賞賛に値する。

 それに部下や支配している連中を馬鹿にされるのは

 気に食わん。

 京香、ガストラ、命令だ。

 この支配区域の代表として連中を完膚無きまで叩き潰せ!」


一瞬の静寂…そして…。


「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉ!!!!」」」」


冒険者ギルドで地響きの様に響き渡る咆哮。

スラムの住人、冒険者、ギルドの職員、全員が拳を

天高く突き上げ咆哮している。


「良く言ったぜ!坊主!」

「スッキリしたわ!目に物見せてやって!!」

「あんた等が、俺達の代表だぜ!」

「でも、人間……関係ねーか!人間でも!」

「おうよ!やったれ!応援行くぜ!!」


至る所から送られる激昂の言葉。

全員、今まで我慢していたのだ。スラムに生まれただけで

馬鹿にされ卑下される。

だから人間相手に憂さを晴らしていた者達も少なく

ないのだろう。

しかし、そんなスラムの者が、人間が王族に

喧嘩を売ったのだ。認めざる得ないだろう。


「ガルちゃん!」


「ガルさん!!」


京香もガストラも余程、自分達の為に王族に喧嘩を売った

行為が嬉しかったのだろう。ガルに抱き着き、そのまま

胴上げをしている。


その様子を見ながらバベルとボスが言葉を交わす。


「ボス、すまないな。面倒な仕事を押し付けて」


「別にぃ~。俺も仲間を馬鹿にされてキレそうだったしぃ。

 ……けど、驚いたねぇ~、あのガル君が、あんな事言うなんて」


「勝手な行動だがな」


「けど、なんかぁ嬉しそうじゃ~ん?」


「お前もだろ?」


「ふふっ…まぁね」


この日、朝まで酒盛りが行われたのは言うまでもなかった。

 

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