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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「疫病」

バベルがイアンの妻子を解放した事によって

非常に不味い事になっているのだが、バベルは

相変わらず笑っている。

まるで、こーなる事を予想していた事の様に。


イアン「テメェ…何笑ってやがる?イカれたか?」


そうだよな。普通この状況なら正気でいられる訳無い。

目の前には、【紅蓮のイアン】が立っており後ろには

500名程の手下達。その周りは今にも暴徒化しそうな

見物人共が居るんだ。

こんな所、俺1人だったらとっくにおかしくなってるぜ。


バベル「ハッハッ!残念だな。せっかく

    チャンスをやったのに…全く残念だ」


そう言ってバベルは、手に持っていたスイッチを押した。


ララナ「痛っ!?」


ルルナ「痛い!!」


スイッチを押した瞬間、ララナとルルナが腕に痛みを

訴え声を上げる。


イアン「ララナ!?ルルナ!?」


直ぐ様、イアンはララナとルルナに近づくと痛みを

訴えた箇所の袖を捲くる。

そこには、革のベルトで固定された小さく細長い

ガラス製の小瓶と針が装着されており他にも見た事の

無い物が取り付けてある。

初めて見る異様な物にツーっと嫌な汗がイアンの頬を伝う。


バベル「ペスト……って知っているか?」


イアン「ぺ、ペスト?何だよ…それ!?ララナとルルナに

    何しやがった!?」


バベル「ペスト菌…別名【黒死病】

    元々は鼠が感染し、その血を吸ったノミが人や獣の血を

    吸う時に傷口から感染する。

    潜伏期間は 2 - 7日で、全身の倦怠感に始まって寒気がし、

    39 ℃~40 ℃の高熱が出始め、その後、肺ペスト、

    腺ペストなど症状によって分岐するんだ」


あっ……これ…確か、ガストラからバベル達の世界の

話を聞いた時に、ちょっと聞いた事がある。

えっと…大分昔に大流行した感染症って奴で何万人も死んだって

話だったな。

俺達の世界には基本、病気とかウィルス?って概念が

無いから初めて聞いた時は、ゾッとしたな。


因みに、300年程前に、ファルシア大国でも呪いが大流行して

大勢死んだって記録に残っているけど…これって絶対に感染症とか

疫病の類だよな…。


バベル「ペストに罹患すると皮膚が黒くなる。

    他にも肺ペスト、腺ペストによって症状が様々だが、

    頭痛、40 ℃程度の発熱、下痢、気管支炎や肺炎により呼吸困難、

    血痰を伴う肺炎、毒素によって意識が混濁し心臓が衰弱。

    数日で死に至る。

    まぁ、言っている事は理解出来ないよな。

    簡単にまとめると、お前の妻子は終わりって事だ」


イアン「ふっざけんな!!さっきから訳分かんねぇ事ばかり

    言いやがって!!ハッタリかましてんじゃねぇ!」


イアンは虚勢を張るかの様にバベルに怒鳴るが明らかに

顔色が悪い。


ガル 「…イアンさん、多分バベルが言っている事は本当だ。

    300年程前にファルシア大国を襲った【呪いの大厄災】で

    大勢死んだ記録が残っているのは聞いた事あるだろ?

    その元凶をバベルは、あんたの妻子に使ったんだ」


ガルの言葉を聞きイアンの顔から血の気がドンドン引いていく。

野次馬やイアンの手下達も動揺が隠せない。


イアン「う、嘘だ!!人間が、そんな事出来る訳ねぇ!」


ガル 「まだ解んねぇのかよ!此処に居る人間は俺達が

    知っている人間なんかじゃねぇんだ!!

    見た事が無い武器!見た事が無い乗り物!

    獣人の俺達に引けを取らない強さ!そんな人間

    今まで見た事無いだろう!!」


その言葉に一層響めきが増す。

ガルの言う通りなのだ。イアンが今まで生きて来た中で

全く知らない武器を使用し獣人を蹂躙して来た人間など

聞いた事が無い。

この人間達は未知なのだ。だから、尚更バベルが言った事が

真実に聞こえて来る。


バベル「ハッハッハッ!顔色が悪いな?まぁ、ガルの言う事が

    信じられなかったら別に信じなくても良い。

    どうせ、お前等、全員死ぬ事になるからなぁ。

    因みに我々は感染しない様に薬を飲んでいるから

    問題無い」


えっ!?そんな薬知らねぇぞ!!


眼を丸くしながら固まるガルを無視してケラケラとバベルは

不安を煽る。


バベル「俺達が用意した物は特別製でな。

    本来は数日で死に至るが今回の物は半日で発症する。

    そして発症した瞬間、他の奴等に感染するぞ」


周りは静まり返りララナとルルナの近くに居た者達も

徐々に後退りしていく。

そして……。


「ま、まじで…?」

「冗談だろ…【大厄災】って人口の半分が死んだって…」

「人間に、そんな呪い出来る訳ねぇ!!」

「でも、あいつ等の持っている物や乗り物とか見た事ねぇんだぞ!」

「あの人間の言っている事が…もし…本当だったら…」

「い、嫌だ…呪いでなんかで死にたくねぇ!」


野次馬や手下達は口々に声を上げ不安が伝染していく。

それに拍車を掛けるようにララナに異変が起きる。


ララナ「ゴホッ…ケホッ!ケホッ!」


バベル「あ~、咳が出始めたって事は肺がやられて来ている証拠だ。

    身体は怠くないか?熱っぽくなって来ただろ?

    そろそろ目眩や動悸も始まるぞ?クックッ、このままだと

    全員感染していくぞ?」


ララナの近くに居た者達は、ウワァ!と声を上げ距離を取る。


「ち、近づくな!!」

「こっちに来ないでくれ!!」

「逃げろ!」


先程まで歓声を上げていた野次馬達はファルシア大国内に逃げようと

するが大門が徐々に閉まっていくのが見える。

無理やり入ろうとする者達に兵士が剣や槍を構え阻止していく。

国としては当然の措置だろうな。

感染しているかもしれない連中なんか入れてしまったら国が

滅茶苦茶になっちまう。


そして扉は、ズゥンと重い音と共に完全に閉ざされてしまった。


「ふっざけんなよ!扉を開けやがれ!!」

「中に入れてくれぇぇ!死にたくねぇぇよぉ!」


扉の前では怒鳴る者や泣き叫ぶ者と様々だ。

その光景を本当に楽しそうに見ているバベルは魔の眷属か

何かでは無いかと思ってしまう。


バベル「助かる方法も無くは無いぞ?」


まるで天の声を聞いたかの様に皆、バベルに振り向き

「どうすれば助かるのか」と矢継ぎ早に聞いて来る。

本当は悪魔の囁きとも知らず…。


バベル「このウィルスは……あぁ、呪いと言った方が解りやすいか。

    この呪いはな、発現したら呪われる。

    だが発現する前に呪いの宿主が死んだら呪いは無効化するんだ。

    ………意味が解ったか?」


解った…これ、最悪だ。今までで一番最悪な展開だ…。

イアンと妻は、理解したんだろう。顔色が青を通り越して

真っ白になり油汗が尋常じゃない。

妻のララナは、アハ、アハハと薄ら笑いを浮かべて精神が

壊れ始めている。

イアンは、そんな妻と子供を後ろに庇いながら大門の方に

眼を向けた。

そこには、イアンと妻子の再会に喜び感涙していたイアンの

手下達と野次馬達が居た。

全員、武器をイアンに向けた状態で…。


イアン「テメェ等ぁ!何の真似だぁ!!」


「イアンさん、悪いがアンタの妻と子供を渡して貰う」

「そ、そうだ!そいつ等を殺せば全員助かるんだ!!」

「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」


さっきまでバベルに向けていた罵声が今ではイアンと家族に

向いている。

イアン達から見たら悪夢の様な光景だろう。

500人以上の者達がイアンの敵になったのだ。


バベル「お前言ったよな?世界が敵に回っても家族を守ると。

    くっくっくっ、守ってみろよ。なぁ?イアン」


殺し合いの始まりだ。



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